萌芽する夏
青い玉をつまんで、もいちど光にかざす。きっと沖縄の海の、透きとおったあおだ。目に入る夏の日差しが色づく。
さっきの圭太の耳、赤かったな。毎年恒例の紅芋タルトを持ってきたと思ったら、「こっちは早希に」だって。シーサーのイラストの袋。
「オレのと色違いだけど」
鍵についたストラップをかざしながら、圭太の口からさらりと出た言葉を脳内でリピートする。
いつものことだけど、日焼け、してたな。
あと、また背、伸びたみたいだった、な。
おばあちゃんちに行っている間、ほとんどLINEもよこさなかったくせに。あたしがどんだけ携帯見つめてたと思ってんの。ほんとうに、ずるい。
いつも一緒になった帰り道の、はじめて手をつないだあの日が、夢じゃなかったって思っちゃうじゃん。
「じゃ、また土曜日な!」
二人で映画。走り去った圭太の背中を思い出すだけで、胸のなかが忙しい。
手にした青い玉から、キラキラと光があたしに降って踊った。
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