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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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#埼玉県立さきたま史跡の博物館

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

農と武【埴輪紹介所その173】

ちょっと斜めな立ち姿 それを補うためなのか すこーし首をかしげている その頭には菅笠らしき被り物 鍬を肩に担ぐ と同時に大刀を帯びている 農と武。 顔というか頭部は赤く塗ってあるように見えた。 化粧は日常なのか、マツリのための色なのか。 出土地不明の男子埴輪。 所蔵は埼玉県。もとは長瀞綜合博物館(旧名称は長瀞汲古館)が所蔵し展示していました。 収蔵は埼玉県立さきたま史跡の博物館。 撮影は2016年『新収蔵品展 ~旧長瀞綜合博物館からの寄贈資料~』(於・埼玉県立さ

慰めたい切なさ【埴輪紹介所その172】

胸に手をあてる それは埴輪ではめずらしくないが 切ない顔だ。 何かを強く訴えているように思えてならない。 何を訴えているのか、それを聞かせてほしい。それがわかれば慰めたい。 彼はただ祈っているのかもしれない。 指は深く刻まれている。 腰に下げているのは大刀にしては小さめ。刀子か鎌か。 腰の後ろにも何か下げている。 こっちが鎌かな。わからん。 左右から棒を突っ込んだようなミズラと、二本のツノが折れたような頭の突起、それぞれモデルが気になる。 作りは全体に粗いのに

コンビネーション【埴輪紹介所その171】

彼は 対で出土した、といわれている女子埴輪と、どこか似ている。 対で出土した、と聞いたからそう感じるだけか? 左右対称となるポーズのせいか? 胸に当てたミトンのような手は確かに似ている。 女子は挙げた左手に棒状のものを持つ。 その正体は、いまだ不明。 彼も挙げた右手に何か持っていたかもしれない。 ほんとうに対だったのなら、互いの持ち物からそれぞれの正体がわかるかもしれないのだが。 埴輪は1体のみを立てることはない。 人物埴輪2体だけを立てる墳墓もまずないだろう。 こ

盾の後ろのハンプティ・ダンプティ【埴輪紹介所その150】

穏やかな顔。 盾には何にも描かれていない。 静かな埴輪。 笑っているのか。何かを言おうとしているのか。何を? 最大のヒントは顔であろう。同じ古墳出土の女子埴輪と似ている。 彼は盾のおまけではなく、人なのだ。 しかし、他の形象埴輪群とは離れた位置に立てられていたらしい。 きれいな卵形の頭。3次元モデルを回すとよくわかる。 ハンプティ・ダンプティ。塀の上じゃなくて、盾の後ろだけど。 埼玉県行田市の埼玉古墳群の瓦塚古墳出土の盾持ち人埴輪。高さ85.4cm。 所蔵は埼玉

受け取る方法【埴輪紹介所その149】

何かを捧げている。 静かに 微笑みながら。 埴輪は素焼きだからそんなに頑丈じゃない。たいがい割れて出土する。 腕を前に出したら折れやすいことは、作った人もわかっていただろう。でも腕を前に出した。 そうまでして差し出された何かを、受け取りたいが、どうしたらいいのか? 後ろ頭の丸みなど、立体的な頭部。立体的にするには手間がかかる。 耳環と耳玉をつけているが、くび飾りはない。とれちゃった? くび飾りまで手が回らなかった? 埼玉県行田市の埼玉古墳群の瓦塚古墳出土の女子埴輪。

裸足で戦う【埴輪紹介所その148】

冑をかぶりよろいをつける。 その足は 裸足に見える。 ヒビが入っているところが出土品で後は直しだとすると、裸足かな。 ヒビ部分も直したにせよ、意味なく裸足にしないよなあ。 しかしここまで武装していて、裸足ということがあるのか? あるかもしれない。昔の人はたいてい裸足だったそうな。 ちなみに、クツを履いた女子埴輪はめったにいない。 埼玉県行田市の埼玉古墳群の瓦塚古墳出土の男子埴輪。 所蔵は埼玉県立さきたま史跡の博物館。 撮影は2016,2020年、埼玉県立さきたま史跡

石の八重歯【埴輪紹介所その138】

お腹を抱えて笑う。 手は胴に溶けてゆく。 左に石の八重歯を見せる。 どうやら右にも石を入れていたらしい。 右脇の下の二重丸は何を意味するのか? 腰の後ろに何か差している。 この角度、鎌であろうか? いろいろ気になるが なにより、固まりかけた粘土にぐいっとあけた目と口。 粗い曲線ならではの表情。 つながった左右の眉。 ミズラは短く突き出す棒状。 かぶりものは頭巾か。 まだまだ気になるところいっぱい。 人物埴輪。出土地失念。 所蔵は埼玉県。もとは長瀞綜合博物

間違いなく踊っている埴輪【埴輪紹介所その77】

いわゆる「踊る埴輪」には、踊っているのではなく馬をひいていると言う説がある。 しかし こちらの埴輪は 明らかに踊っている。 無心に。 踊れ 踊れ 踊りこそ我が人生 没頭セヨ。 首をかしげる埴輪はめずらしい。 鋸歯紋の刻まれた長い帽子をかぶる。 手首には袖らしき表現。 上げた太い腕は中空であろう。 口は口唇裂らしい。今なら治せるが、当時は無理だったのだろう。 ほかにも口唇裂の埴輪がある。 群馬県出土の人物埴輪。 所蔵は埼玉県。もとは長瀞綜合博物館(旧名称は長

泣いてるの? 怒ってるの?【埴輪紹介所その48】

わあわあ言ってるらしいことはわかる。 大きな目と大きな口で、何かを訴える。 現代人には聞き取れない? いや聞こえそう。埴輪はそれぐらい現代日本人にも近しい。 冑と盾が連携するように横に広がる。 盾には線刻と彩色。鋸歯紋×赤は埴輪スタンダード。 群馬県高崎市の保渡田八幡塚(ほどたはちまんづか)古墳出土の盾持ち人埴輪。高さ102cm。 所蔵は「かみつけの里博物館」。 同じ古墳から、まったく違う頭の盾持ち人埴輪が出土しています。 保渡田八幡塚古墳の二重の周壕の内堤には人

カツオギは大事【埴輪紹介所その41】

戸口はどこ? 窓しかないみたい。 作り忘れたのかな。 秘密の出入り口があるのか。実は地下道が堀られているのか。 たてよこの突帯で区切られた壁。その一区画に窓だけあけた。 短いスカートのような裾廻突帯は安定感があってよい。 家本体と寄棟部分に対し、切妻部分はきっちりしたつくり。 屋根の上の6本のカツオギは、2本の棒にがっちりくっつけられている。重要性がうかがえる。 棟木も太い。破風もピンとのびている。 埼玉県行田市の埼玉古墳群の稲荷山古墳出土の家形埴輪。入母屋造り。 所蔵