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はつこいの人に会おう、と南三陸町の漁師は言った。 #エッセイ #いい夫婦の日

「いい夫婦の日」ですね。関連することを書こうと思ったら、ふと、東日本大震災のボランティアをしているとき、漁師さんから聞いたことばを思い出しました。

2012年5月、わたしはボランティアとして、宮城県・南三陸町の漁港で、「メカブとわかめの芯抜き作業」のお手伝いをしていました。
この漁港は、津波によって全ての家屋が流出し、ほとんどの船や養殖施設が失われた場所です。地区の漁師さんたちも、多くが仮設住宅で暮らしているとのこと。すぐ近くに瓦礫の山もあって、震災の爪痕を強く感じる場所ではあったけれども、それ以上に、陽気で明るい漁師さんの、前向きなエネルギーが強く印象に残っています。

この日行った「メカブとわかめの芯抜き作業」とは、食用部分と茎とを分ける作業のことです。収穫し、ゆでた後のメカブとわかめの芯を外して、表面のキズを取り除く。このひと手間を加えた上で出荷すると、出荷価格が大きく上がるそうです。海藻のぬめりで、するするっときれいに茎が外れるときもあって、そういうときは、なんだか気持がいい。漁師さんたちとたくさん話をしながら手を動かすのは、楽しいことでもありました。

その中で、夫婦とも生き残った、という漁師さんが、こんなことを言っていたのです。
「夫婦ともに今年が60歳。それぞれ、『はつこいの人に会おう』と話をした。せっかく残った命だから、たがいに悔いのないように生きようと、話している」と。
目の前に広がる、瓦礫の山と、広大な更地、透明度が高く、穏やかに見える海。そんな景色の中で話していた漁師さんが印象的で、ずっと記憶に残っています。

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わたしは、夫が大好きです。
結婚前に同棲もしていたので、その期間も含めると5年弱、いっしょに暮しているのですが、それでも毎日伝えたいくらいに、大好きだし、尊敬している。
社会的地位、収入、容姿、知性などなど——それぞれ、彼より優れている人はたくさんいるし、必ずしも完璧に、夫婦間で理解し合えることばかりではないかもしれないけれど、それでも、わたしにとって、彼以上の人は、いない。
一緒にいると、いっぱい笑えるし、穏やかな気持ちでいられるし、ワクワクできる。
いつも、ありがとう。

なんのオチもなくて、惚気のようになっちゃって、ごめんなさい。
でも、こういう記念日的な日は、そんなことを言ってもいいのかな、と思います。悔いがないよう、伝えておきたいし。
今日が、夫婦以外にも、大切なひとに感謝できる一日でありますように。

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表紙画像は、大切な友人が結婚祝いにくれた絵の一部を描いたものです。ミジンコみたいな私の画力ですが、元の絵の温かい雰囲気を少しでも伝えられたらうれしいです。

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