【日本株】ライフドリンクカンパニー(2585)のPERを考える。
ライフドリンクカンパニーの株価が絶好調です。
株価は年初から好調だったのですが、11/13(水)の中間決算の発表を経てさらに勢いがついています。
株価は、11/21の終値で2,413円。PERは、32.7倍です。
今日は、同社の中間決算を簡単に振り返った上で、「妥当なPERって、何倍?」という点について少し考えてみたいと思います。
では、早速。
1.サマリー
① ライフドリンクカンパニーの中間決算は「良い内容」でした。特に、「経営陣の計画する力と、それを着実に実行する力」がとても高い印象を受けました。引き続き、好調な業績が続くように思います。
② 同社の株価はかなり上がっており、PER的には「割高」圏にいます(11/21終値で32.7倍)。「業績は良いし、株価にも勢いがある。しかし、PERは高い」という悩ましい状態なのですが、ここで参考になるのが「目安になるPERを試算してみる」という方法。簡単な割り算ですので、それを(本文で)ご紹介しています。
③ 但し、それはあくまでも「理論値」や「目安のPER」であり、絶対的なものではありません。ただ、目安を知ることで投資判断のサポートになるので、便利なのではないかと思っています。
2.中間決算は良い内容でした。
11/13に発表のあった中間決算は、「良い内容」でした。
今期は、御殿場に建設した新工場の立ち上げがあるため、その経費が乗っかってきます - まだ生産が軌道に乗らない中での固定費増、工場で働く新しい従業員の方々の採用費用、減価償却費などです。
しかし、そうした追加費用をカバーし、”営業増益”になった点が「良い内容」だと思います。
決算数字は(1-2Q累計で)、売上げ240.9億円(前年同期比+17.7%)、営業利益30.6億円(同+5.2%)、当期利益20.8億円(同+5.6%)でした。
一方、通期の会社予想は据え置きとなっています。
通期の売上げ予想は440億円(前年比+15.1%)、営業利益57.5億円(同+22.0%)、当期利益38.5億円(同+22.0%)、EPS73.67円です。
「中間期/通期予想」の進捗は、売上げ54.7%、営業利益53.2%、当期利益54.0%です。
売上げの進捗は前年並みです。営業利益と当期利益は前年が約62%ですので、やや遅いといった感じですが、(前述の通り)新工場の立ち上げ費用などがありますので、「ほぼ計画通り」といった感じだと思います。
と、こんな感じで中間決算は「良い内容」でした。
新工場の建設と立ち上げや、M&Aによる生産力の増強などを見ていると、「同社の経営陣の計画する力や、それを実行する力がとても高いのでは!」と感じる決算だったように思います。
この決算と、そこで発表された生産工場の新規M&Aを受けて、翌日の株価はストップ高。それ以降もジリジリと上昇し、11/21の終値は2,413円。PERは、32.7倍となっています!
2024年11月21日の終値ベースで、株価パフォーマンスをグラフ化しています。
そして、もうひとつのテーマである、「妥当なPERって、何倍?」という点を考えてみたいと思います。
と、言うのも、同社の業績は堅調です(少なくとも1~2年は堅調に推移しそうです)。しかし、現在のPERは32.7倍とかなり「割高」です。
そこで、「妥当なPERって、どれくらいなの?」ということを探ってみたいという意図です。
3.妥当なPERを試算する。
以下では、まず個人的に参考にしている「シンプルな割引モデル」をご紹介した上で、「ライフドリンクカンパニーのPER」について考えてみたいと思います。
一般的に、「妥当なPER」を考える場合、その企業の「過去の平均的なPER」や、「同じ業界や同業他社のPER」を参考にしたりします。
加えて、「シンプルな割引モデル」を使ったPERの試算値を個人的には活用しています。
以下が、その参考例です - エクセルで作っています。
考え方は、「将来の当期利益(or EPS)を、資本コスト(割引率)を使って現在価値に割り戻したもの」が理論的な株価になり、それを「来期(1年後)の当期利益」で割れば理論的なPERになる、といった発想です。
上の「表」には数字がたくさん並んでいますので、まずその中の「単語」を簡単にご説明します。
そして、表の見方は左から右に向かって現在、1年目、2年目・・・という時間軸になっており、成長率に従って当期利益が毎年、増えていく。それを、設定した資本コストで現在価値に割戻しているという作業です - シンプルな割り算です。
すると、このケースでは「PER=16.9倍」になります - 今後5年間、当期利益が年率10%で成長する。その後は年率5%で成長を続けるとした場合、理論的なPERは16.9倍ということになります。
念のため、「このように計算したPERが絶対だ!」と言いたいのではなく、当期利益の成長率と資本コストに一定の前提を置いた場合、「PERの目安はどれくらいになるのだろうか?」という「目安」を計算するための作業です。
PERは、当期利益の成長率、資本コスト、利益の安定性が大きな変数ですので、この方法なら「目安」としては機能するのかなと思っています。
よって、これで計算した数字よりもPERが極端に高い場合、「割高の可能性があるので要注意!」であり、反対に極端に低い場合、「割安かもしれないので、その会社を深掘りする価値があるのではないか?」といった指針にしています。
では、この計算式を使って、ライフドリンクカンパニーのPERをチェックしてみます。
以下は、「PER=33倍」になるように、成長率を入力してみました。
「PER=33倍」を正当化するには、「今後1~5年間の当期利益の成長率が年率30%。6年目以降は年率16%の成長」が必要になります。
果たして、同社の成長率はこの前提を満たすことができるのか? が判断のポイントになります。
個人的には「ちょっとハードルが高い」ように思います(が、いかがでしょうか?)。
よって、「同社は素晴らしい会社だが、現在の株価は割高だ!」と個人的には感じています。
ちなみに、「今後5年間、年率25%の成長、6年目以降は年率8%の成長」だと、PERは27.1倍になります - 個人的には、このあたりが同社に対するMaxのバリュエーションになるのかなと考えています。
もちろん、株式市場はこうした「理論」とは別の動きをしますし、勢いのついた株はとても高いPERまで買われることは普通にあります - 現状の同社の株価はそうした状態だと思います。
そうした「株価の動き」、「株価の勢い」をリターンの源泉にするなら、(PERが高くても)上昇トレンドに乗っかる投資戦略は「あり」だと思います。
ただ、私の場合、そうしたトレードが至って下手くそなので、2~3年の時間軸で、業績をベースにしたファンダメンタルズのアプローチをしています。
すると、良い会社であっても、32.7倍という割高に思えるPERで参戦するよりも、もっと割安で、値上り期待が大きい別の株式を探した方が良い、という考えになります - あくまでも、私のケースです。
最後に、この計算式の「注意点」と、「成長率とPERの一覧表」を記しておきます。
注意点は「資本コスト」が変化すればPERの試算値は大きく変化するという点です。
例えば、上記のライフドリンクカンパニーの事例(PER=33倍の例)ですが、「資本コスト=7%」になると、PERの試算値は38.7倍まで上昇します。
また、(資本コスト=7%で)1~5年目=25%成長、6年目以降=8%成長だと、PERの理論値は31.6倍となります(資本コスト=8%だと、27.1倍) - すると、現状の「32.7倍」はそれほど割高ではない水準になります。
要は、計算そのものよりも、「どのような前提を置くのか?」の方が遥かに重要だということになります - 資本コストと、当期利益の成長率。
一般的に「日本の資本コスト=8%」と言われているので、私は8%をデフォルトで使っています。その上で、トヨタ自動車などの収益に安定感のある大企業の場合にはもう少し低い資本コストを。小型株の場合には、少し高い資本コストを使って計算することもあります。
「目安となるPERを計算する」ことが目的ですので、このあたりはケース・バイ・ケースで臨機応変にするのがいいのかなと思っています。
そして、以下は「当期利益の成長率とPERの一覧表」です - 資本コストは「8%」で計算しています。
こちらも「たくさんの数字が並んでいる」状態なので、少し説明を加えます。
左側に縦に並んでいる「%」は、1~5年目の当期利益の成長率です。
一方、上方に横に並んでいる「%」は、6年目以降の当期利益の成長率です。
そして、中に書いてあるたくさんの数字は、それぞれの成長率をベースに計算した時のPERの試算値です(単位:○○倍)。
例えば、赤丸で囲んだ「16.7」は、1~5年目の当期利益の成長率が年率10%で、6年目以降が年率3%だった場合、PERの試算値は16.7倍になるという見方になります。
現在、日経平均のPERは15.5倍ですが、この表をベースにすると「1~5年目の当期利益の成長率は7%、6年目以降は5%」といった前提がほぼ同じ倍数になります。
いかがでしょうか?
納得感がある目安になっているでしょうか?
と、今日のところはこんな感じです。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。