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【日本株】霞ヶ関キャピタル 24/8期 1Q決算

霞ヶ関キャピタル(3498)が、今期(24/8期)1Qの決算発表を出しましたので、その内容をアップデートしたいと思います。

ちなみに、以前に書いた同社の会社説明的な記事はこちらです。


1Qの決算は、売上げ+61.8%増の好決算!

1Qの決算は、対前年同期比で大きな売上げ増となりました。この決算を受けて、1/15の株式市場では同社の株が急騰しました。

具体的な1Q決算の数字と、通期の会社予想は下記です。

<1Qの決算>
売上げ   121億円 前年同期比+61.8%
営業利益  6.5億円 同+96.0%
当期利益  2.2億円 同+44.3%

同社の決算短信から数字を抜粋

<通期の会社予想>
売上げ   600億円 前年比+60.9%
営業利益  85億円 同+91.3%
当期利益  50億円 同+143.8%

同社の決算短信から数字を抜粋

<通期予想に対する1Qの進捗率>
売上げ   20.2%
営業利益  7.7%
当期利益  4.5%

同社の決算短信から数字を抜粋

上記のように、1Qは売上げが順調に拡大しており、その意味では好決算だろうと推測します。また、営業利益も91.3%の拡大であり、こちらも通期予想と同レベルの拡大で、計画通りの業況といった感じです。

但し、当期利益の伸びが44.3%であり、売上げや営業利益の伸びに対して低くなっています(あわせて、通期予想よりも低い伸び率です)。この原因は、営業外費用が(前年同期に比べて)増加したことです。前年同期の営業外費用は1億円でしたが、この1Qは2.7億円です。増加要因は、支払い利息1.3億円、為替差損0.6億円、支払い手数料0.6億円となっています。

また、通期の会社予想に対する1Qの進捗率で見ると、売上げの進捗が20.2%、営業利益7.7%、当期利益4.5%と、やや不安が残る進捗率となっています。ただ、昨年度の1Qも進捗率は売上げ20.0%、営業利益で7.5%、当期利益で7.6%でしたので、これ自体はそれほど心配する数字ではないのかもしれません。

実は、1Q決算の評価は結構難しいのでは? ポイントは粗利率!

1Q決算の中で、粗利率が低下している点が非常に気になりました。昨年度(通期)の粗利率が27.1%なのに対して、この1Qの粗利率は21.6%でした。

そのため、1Q決算の評価は「なぜ、粗利率が低下したのか?」に大きく依存するように思います。

と、言うのも、通期の会社予想から推測するに、同社は今期の粗利率を(昨年並みの)27.0%近辺としているように思います。27.0%レベルの粗利率と1Q並みのコスト構造であれば、(会社予想の通り)売上げ600億円を達成すれば、営業利益85億円、当期利益50億円は大凡実現しそうです。

しかし、1Qの粗利率の水準(21.6%)だと、営業利益は46億円、当期利益は21億円くらいに着地しそうです。

あるいは、粗利率21.6%を前提にするなら、会社予想(の営業利益と当期利益)を達成するには、売上げが800億円程度必要になります。

売上げ800億円は、通期の会社予想よりも200億円も大きな売上げ規模になります。その達成には、現在B/Sにある棚卸資産(販売用不動産&開発事業支出金)298億円の売却に加え、新たに234億円の不動産を仕入れて、かつそれを今期中に売却する必要があります。同社の過去の売上げ推移からすると「絶対に不可能」という水準ではないと思いますが、それでもかなりチャレンジングな数字になります。

なぜ、粗利率は大きく低下したのか?

ひとつの可能性は「一過性の低下」というものです。事実、同社の粗利率が20.0%近くまで低下したことは、過去に何度かありました。

以下は、同社の粗利率の推移です(四半期毎の粗利率です)。

同社の決算短信より数字を抜粋

今回も、そうした「一過性の落ち込み」かもしれません。

一方で、何かしらの継続的な原因による粗利率の低下という可能性もあります。例えば、「金利上昇」を予期した市況の変化などです。

具体的には、近い将来の金利上昇が予想されることから、”出口”となる「次の投資家」への売却価格が低下してきた。あるいは、(同じことですが)投資家の資金調達環境が厳しくなり、売却価格が当初の想定を下回るようになってきたといったことが懸念されます。

また、開発分野(物流倉庫、ホテル、ホスピス)の物件需要が一巡し始めたのかも・・・といったことも気になります。

このあたりは(現時点では)あくまでも「個人的な推測」ですので、確かな根拠があるわけではありません。ただ、金利上昇局面が近づいているだけに、頭に入れておいた方がいい「注意点」であることは間違いないと思います。

俊敏な経営をしている印象!

上記したように期待と不安の双方が混在する同社の決算ですが、同時に非常に俊敏な印象を受ける同社の経営陣には大きな期待を抱くのも事実です。

利上げや競争の激化などいろいろな困難やリスクがある中、より大きな事業機会にチャレンジし、それらの事業を成功させ、収益性の高いビジネスを拡大してくれるのではないか、という期待です。

同社は最近、いくつもの重要な”動き”をしてきた印象です。

例えば、ドバイでの不動産ビジネスの本格化、ヘルスケア施設を運営する企業の買収、公募増資、REIT事業の本格始動などです。

ドバイへの進出は、多くの日本企業が海外不動産への投資を活発化させている動きに対応し、そうした日本企業向けに現地不動産を開発しているようです。昨年11月には、ドバイの高級コンドミニアム2棟の再生・売却を完了していましたので、着実に事業が前進しているようです。

ヘルスケア施設を運営する企業の買収は、ホスピス事業を拡大する上で、単に建物の開発事業者というだけでなく、施設運営もあわせてできる事業者へと進化するためのようです。その方が、より需要に応えられ、かつより価値あるサービスを提供できるとの判断からのようです。

公募増資は、さらなる不動産の開発を継続する上で自己資本の充実は不可欠です。そして、同社の直近のROE 20.25%を考えれば、公募増資は前向きに評価できると思います。

REIT事業の本格始動は、金利が上昇した場合、開発中の不動産の”出口”となる最終投資家の買い控えや買い余力の減退が予想されるため、それに備えた「新たな出口」の確保かなと推測します。

いずれも、俊敏な経営陣の意思決定と、会社としての動きであり、このあたりが同社の強みのように感じます。

と、言うことで、霞ヶ関キャピタルは引き続き期待が持てる企業ではないかと(個人的には)思っています。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。


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