見出し画像

手仕事に心惹かれて

ラオスではあちこちの村で機織り機を見かけた
女性の手仕事によって織られる布地は田舎では貴重な現金収入の一つだろう
旅のあいだ気にはなっていたが荷物になると考えて買い求めるのは躊躇していた
滞在していた村からの帰り道
川のそばに小さな店がある
向かいにはTham kang 洞窟があるから
観光客が時々ジュースなど買い求めるので
商売になるのだろう
とは言っても本当にたまにしか人は通らない
ガイドと歩くトレッキングか近くのムアンゴイの村から暇な滞在者が訪れるだけだ
まことに暇な商売だと思う
村に行くには途中までは一本道なので帰るその日も素通りするつもりで一度通り越した
その時、ふと思い立って引き返した
洞窟の入り口から流れ出ている水が
道を水浸しにしている
ジャブジャブと渡って店の中に入って行った
屋根しかない素通しの店だ
明日にはラオスともお別れ
4、5日後には帰国だ
買って帰ろう
『ちょっと見せてくれる?』
おばさんが立ち上がって
さっそく説明してくれる

ファイサーイ村にて(これは別の場所)

おばさんと言ってもこちらは爺さんなので
ずいぶん歳下に違いない
下が500円、短めのスカーフ
真ん中が1000円のストール
手織りのシルク
上がコットンで2000円のストール
どれも薄手だ
『一枚織りあげるのにはとっても時間がかかるのよ』と手を広げて説明してくれるがこちらはどちらかと言うと織物の事は全然わからない
ネコに小判である
結局真ん中のちょっと地味な色のものを
言い値通り1000円で買い求めた
値切れば半額位になったかもしれない
私は普段、仕事が職人なので手仕事で作った物に対しては値切ることができない
これがバスターミナル辺りにたむろしている
ボッタクリドライバーとならば敢然とした態度で交渉するがこちらの方はアッサリ納得して支払う
受け取った彼女は飛び上がらんばかりに大喜び
その率直さがとても好ましく感じた
素朴と言うか気持ちに正直と言うか
自分で織った商品が付けた値段で売れる
なんて幸せなことではないか
こんな時
私は愚か者でも構わない

#絹織物 #手仕事 #ラオス #旅行記 #エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?