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バスを利用して縦走した十勝岳

十勝岳へは吹上温泉登山口と南側の十勝岳温泉登山口と二ヶ所ある
火口からはいつも蒸気を上げているので温泉の豊富なところだ
それぞれの間はバス路線で結ばれている
麓の町で一番近いのは上富良野町
私は前泊地として日の出山公園オートキャンプ場を利用した

設備が整っていて快適な芝地のキャンプ場だった
上富良野町内の一角にある立地なので買い物にも便利で夕方と早朝は食料品の買い出しに出かけた
ここから登山口へは目の前の道路からまっすぐ走れば30分もかからなかった
もし前日が雨だったら白銀荘に宿泊する予定だったが幸い薄曇りの天気で夜も寒くはなく快適に眠ることができた
ただし隣のキャンパーのイビキが凄かった
こういう時のために耳栓は必携なのだ

翌日は十勝岳温泉登山口の駐車場に午前五時半に到着
既に登山者が何人も歩き出していたので私もそそくさと支度して後を追った

しばらく林道を歩いた
前後には誰もいなかったので熊が出てこないかとヒヤヒヤしながら大きく鈴を鳴らしながら歩いた
日頃自宅の玄関前の道を悠然と熊が通る土地に住んでいるのにやっぱり熊には遭遇したくない
沢を渡って対岸から急な登りが始まった
もうこの辺りから高山植物を見ることができるのは緯度の高い北海道ならではだ

左側にだんだん荒々しい色の山肌が迫ってくる
右手遠方には優美な上富良野岳への稜線が続く

いつも写真を撮りながら歩くので脚はそんなに早くはない
写真で立ち止まる時が短い休憩だ
近年は単焦点レンズのコンパクトカメラとスマホを使っている
自分の眼の延長のような感覚で撮れるのが気に入っている
しかも軽いし

茶色と緑の対比が凄い

大部分の登山者は上ホロ分岐から富良野岳方面に登ったようだ
私は上富良野岳から十勝岳を経由して白銀荘に下山する予定だ
13時21分発のバスに乗れば元の駐車場に戻ることができる
次のバスは17時3分なのでそれは出来たら避けたかった

大正火口の煙が間近に見えてくる

上ホロ避難小屋の向こうに十勝岳

ここから見るとまだまだ道程は遠く感じた
朝早く出発したからこうした見通しの良い景色がみられたのだろう
この日にタイミングよく登ることができてよかった

残雪の向こうはニペソツ山だろうか

少しガスがかかってきた
最後の急登をジグザグに登って山頂に着いた
既に大勢の登山者がいた
どうやらほとんどの人達は白銀荘から登って来たようだ
美瑛岳への縦走路が美しい曲線を描いていた
危うくそちらに歩みを進めるところだった
いつかは歩いてみたい道だ
私は標柱に手を触れてサッサと下山路に向かった

今度は一転して黒っぽい砂礫の道が続く
ガスったりすると迷いやすい地形だが黄色の印がついた石が等間隔で配置されているので安心だ
山頂直下以外は緩やかな長い登山道なので初心者にも人気のルートなのだろう
十勝岳避難小屋を過ぎるとお花畑が広がってのどかな雰囲気

白銀荘分岐を折れて小さな沢を渡って進むと林の中に歌人九条武子の歌碑がひっそりと立っていた

大正十五年の十勝岳大爆発のあと彼女が旭川を訪れた際に詠んだ鎮魂の歌が刻まれている

たまゆらの 煙おさめて しづかなる
      山にかえれば 見るにしたしも

まもなくキャンプ場の緑の芝地が林間から見えた
そこが白銀荘登山口だった

時刻はちょうど正午
バス停の時刻を確認してからフロントで前泊した日の出山公園オートキャンプ場でもらった割引券を差し出して温泉に入った
どちらも同じ経営のようだ
広々とした外湯もありゆっくり登山の疲れを癒すことができた
キャンパー達も次々と入りに来ていたので滞在にはとても便利なところだ
この駐車場には500円で車中泊もできるのが今風だ
キャンプ場のトイレ、水道施設が利用できるようだ
温泉から出てしばらくしてやってきたバスに乗り込んだ
車窓から山の緑を眺めながら15分程で今朝車を置いた場所に戻って一日の山行が終わった

今回は往復ピストンではなく変化に富んだ縦走を楽しむことができた
近年は百名山ブームで登山者が急増している
中には登山道が荒れるのを防ぐために階段と木道が山頂まで続いている山もある
どこでバランスを取るかは難しい問題だが
土、沢、雪そして岩の大地を歩くことにこそ登山の魅力があるのではないか
北海道の十勝岳はその名山に相応しい山だった
しかも温泉付きが良かった

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