ただただ恐怖、恐怖の日々~「強父論」(阿川佐和子著/文藝春秋社刊)/

既に文庫版が出ている。
初版の時、実は書店でパラパラめくった。ざっとであったが、立ち読みをした。ビートたけしの写真が、推薦文と共に帯にあったが、文庫版にもあるのだろうか?図書館で再会。(おおっ!)心で叫んで即、借りた。

表紙写真には、少し照れたような若き父親・故・阿川弘之さんと、甘える仕草を見せる佐和子嬢。4歳ぐらいですかね?のツーショット写真。微笑ましい姿が使われえている。
細長い楕円形に象られた「多忙な中での、父のひととき」。「癒し」とか「安らぎ」、「活力」、「団欒」、「父と娘」といった言葉が似合いそうな風景である。「子煩悩な父親」的雰囲気だ。

が、騙されてはなりませぬ。全く以って違うのだ。「瞬間湯沸かし器」。気が短く、直ぐに感情的になる阿川さんの性格は、社会的にだけでなく私生活にまで及んでいた。「絶対服従」。妻子に対しての四文字だ。

軍隊みたいな家庭である。「親に養われている内は、絶対服従。口答えなど許さん!」家で仕事をしていたので、「家庭であると同時に、ココは会社だ。弁(わきま)えろッ!」怒鳴り散らしては、手を挙げる。「強父(きょうふ)」以上に「恐怖」である。怖くて近づけないと、友達の間でも有名だった。機嫌がいいのは、美味しい物を食べる時だけ。

本著に書かれている内容は、佐和子嬢が今、アチコチで喋っているのと大体、同じであるが、文字にすると改め凄い。良くマトモに育ったわねと、感心してしまう。恐怖に恐怖が重なるからか、ひとつ、恐怖を思い出すと後から後から甦る。恐怖の連鎖、育ちの過程、思い出の巻きとも言えよう。

恐怖なんだけど、ホラーではない感覚がどこかに匂う。何故だろうか?
「お前は俺にそっくりだ」4人の子の内、唯一、女の子、意識もあるだろうけど、血筋。(コイツは俺似。完全に俺に似てやがる)ずっと見てての思いが強父(きょうふ)。パパ・弘之氏にあったのではなかろうか?佐和子嬢も、薄々思った、感づいた。

という事は。佐和子嬢がもし、男の子だったら「超強父」。この時代にねぇと噂され、様々な媒体で取り上げられていたのではないだろうか?

欲を言えば、兄と2人の弟と、阿川さんの関係。弘之氏との関係。誰が一番血を引いているか、似ているかを書いて欲しかった。お母様に、男の子たちは似ていたりして、ね。                  <了>



#読書の秋2022

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