てきばっかり.net

※注意※
これから書く文章は、創作ネタの一つとして頭の中にある思考を整理するために手探りで書いたものです。小説の体をなそうとはしてません。表記ゆれとか誤字脱字があったり、前後の文脈がおかしかったりしてますが、あくまで、後々出る作品を作る過程で生まれたメモ書き程度にとらえていただけますと幸いです。


  • スケール:Bm or Em

  • テンポ:167?あるいはもっとアップテンポで焦燥感出るほうがよし?


この世界に足を踏み入れたその瞬間に、あなたの運命は決しました。それは、好きなあの子と付き合うことが確定したり、宝くじ10億円が当たったり、あるいは死亡する時期が決まったりとかではありません。あなたはこの世界から抜け出さない限り、無数にいる「てき」と戦わなければなりません。

あなたには、「てき」たちに立ち向かう覚悟があるでしょうか。もしかしたら軽率にこの世界に足を踏み入れてしまったのかもしれません。その気持は十分に理解できます。あなたは幼い頃から画面の向こうの絢爛に魅せられ、自分もああいうものに成れたらと憧れ、いつか画面の向こう側に仲間入りするという夢を持ったことでしょう。夢を持つことはとても素敵なことです。

しかし、夢を持っているのはあなただけではありません。地球はとても広いです。人間はとても多いです。そして、大半の人間はこの世界に繋がっています。もっている夢は人によって違えど、それでもあなたと同じ夢を抱く人たちは大変多いです。時が経つごとに増えている一方です。きっと、夢を持ったきっかけもあなたと同様に画面の向こうに憧れたからでしょう。

あなたはこれから、多数の「あなた」に立ち向かわなければなりません。そうしなければ、あなたが抱く輝かしい夢は実現しないでしょう。では、健闘を祈ります。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

一体、どのくらいの時間が経ったのだろう。いや、「食ったのだろう」のほうがしっくりくるな。この世界に飛び込んで意気揚々と最初に鳴らした音は、今どこを彷徨っているのだろうか。少なくとも、わたしはもう覚えていない。自然と消え失せてしまったのか、それとも自分自身で音を掻き消したのか、それすらも覚えていない。

ふと後ろを振り返って、自分の足跡を見てみる。山道のように曲がりくねっている。明確に決まった道が存在するわけではないので、まさに迷っているといえるようなさまだ。わたしなりに頑張ってみたけど、満足の行く結果は今の今まで得られなかった。悔しいはもちろんない訳では無いが、それ以上に今は虚しい。心のうちの7割を占めているだろうか。雲をつかむような話とはまさにこのことだ。わたしは、全身の筋肉がちぎれる寸前まで精一杯背伸びをしているのに、見える景色は一切変わらない。

この世界には私以外存在しないのかと疑ってしまう。買い出しのために外出して近くのスーパーに向かうだけで、十数人の人間とすれ違う。あれらは全て幻だったのだろうか。画面の向こう側にだって、文字列を介してたくさんの人間がいることを理解していたけど、全てボットが吐き出していただけなのだろうか。わたし以外誰もいない世界で、わたしは声を上げて訴えていたのだろうか。

こんな下らない考えは、一度周りを見渡すことで不毛なことだと自覚してゴミ箱に投げ捨てた。わたしと同じ夢を持った人間たちがたくさんいる。わたしと同じように曲がりくねった足跡を刻むやつ、一直線に無我夢中で走るやつ、いろいろだ。中には、他の人間の後ろをついていったり、危害を加えたりやつもいる。楽をしたいのだろうか。他にもいろいろいるんだろうが、みんな同じ方向を向いて進んでいるという点で共通している。遠く遠くの夢の果てに向かって、誰よりも先に進もうとしている。

「夢を掴めるのはほんの一握り。」
この世界に飛び込む前に、この言葉がよく耳を劈いたもんだ。何をするにしたって、まずは一歩前に進まなきゃとこの言葉を振り切ったのだが、今再びこの言葉が頭の中で存在を大きくし始めている。人間が多いことは、今日に至るまで目覚ましい発展を遂げてきたことからも分かるように、良いことだと理解している。では果たして、全ての人間が各々の夢を実現できているだろうか。残念ながら、そうとは言い切れない。だって、夢を実現できていない人間がいまここにいるんだから。

多すぎるんだ。夢に向かおうとする奴らが。敵ばっかりだ。皆、血眼になって走っている。笑っているところなんて見たこと無い。わたしも、心の底から笑ったことが無い。楽しくなければ元も子もないと、無理やり笑ってみようとした。僅かな成功を見出しては、自分は幸せ者になったのだと自分を騙ってみた。確かに束の間の幸せものであったかもしれない。しかしそれ以上に、惨めな気持ちが膨れ上がり、余計な気疲れを起こした。こんな人間がたくさんだ。地獄絵図。ブームというのは多数の敗者によって成り立っているって、どこかで聞いたことがある。わたしは、もう、既に、敗者、ですか。

数字を見るのが苦痛だ。数字は大変素直だ。だからこそ、わたしの心身に深刻なダメージを与えている。憧れていた画面の向こう側も、今となっては憧れと妬みの混ざった複雑な感情しか湧いていない。多分、泥のように粘りがあり吐瀉物みたいな色をしていて口にしたら病院送り確定だろう。画面の向こう側とわたしが同じ基準でもって数値化され、差が生まれるのだ。ベテランも中堅も新人も同じ土俵の上。特別扱いなんて存在しない。いや、不正に数字を操作しているのなら話は別だが。ともかく、この世界にいる以上は否応なしに数字という残酷な現実がわたしの心身を脅かしているのだ。

ときどき、非常口に目をやることがある。そして、この苦痛から逃れて楽に生きるわたしを想像する。この世界でもがき続けるよりも早くそして確実に、幸せになることができるのではと。何度も思いを巡らせた。その結果、今もこの世界に残り続けている。おめおめと。だって、諦めきれない。だって、わたしは魅せられたから。生きるのに精一杯で疲弊しきった、パッサパサのわたしを潤してくれたのは、いつだって画面の向こう側の世界。その感動が忘れられない。忘れるなんて出来ない。それこそ辛い。

この思考のロータリー、もう何周回っているだろうか。多分これからも回り続けるんだろうなぁ。そしていつか抜け出せるのだろうか。この敵ばっかりな世界で、心の底から笑える日はやってくるのだろうか。

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