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Museum Brandhorst に近寄ってみた

ミュンヘン市の中心部にあり、アルテ・ピナコテーク、ノイエ・ピナコテーク、ピナコテーク・デア・モデァーネと共にクンスト・アレアール(美術館やギャラリーが集中しているアートエリア)を構成するMuseum Brandhorst(ムゼウム ブランドホースト)。

ブランドホースト夫妻の個人コレクションを収めるために建設された現代美術美術館で、ベルリンに拠点を置くザウアーブルッフ・ハットン建築事務所が設計し、2009年にオープンしました。

こちらが正面・エントランス側

玄関ホールを抜けると 奥行約100メートル 幅18メートルの細長方形の展示室が続きます。3階層にわたる展示室は、それぞれ大きさや天井の高さが変えられており、様々な展示仕様に対応できます。
そのうち最上階は、コレクションの中心をなすアメリカ人アーティスト、
サイ・トゥオンブリー(1928 - 2011)の大作『レパント』シリーズ(2001年作)を常設展示するために設計されました。12枚の大型抽象絵画がパノラマ状にぐるりと囲むように展示されています。

展示室側から

カラフルな外観がこの美術館のアイコンです。

ファサード、近寄って見てみました。

4 x 4 cmの四角い断面図を持つセラミック製の棒材(110 cm)が、びっしり並べられています。水平には等間隔に、垂直にはほぼ隙間なく並べられているので、その結果タテ線が強調されています。

23の色が使われており、色調によって3つの色クループに分けられ、外壁はこの色グループごとに装飾されています。
美術館の一階部分には濃いしっかりした色が並べられ、上階はヴィヴィッドな色の組み合わせになっています。展示棟よりも高く幅も広いエントランスホールはパステルカラーで軽めの装いという風に。
合計で36000本使われているそうです。
 

釉薬がかかっているのでツヤがあり、建物の影になった部分は暗く、陽が当たるところでは、明るい表情を見せます。

このカラフルな棒材の後ろにはもう一層、外観を印象付けるものがあります。水平に細長い金属パネルが2色交互に並べられているのですが、じつは山折り・谷折りになるよう角度を付けて組み合わされているのです。

この2層構造によって、面白い視覚的効果が表れます。
見る者の位置や角度によってファサードが、様々な色で覆われた平面風にも、または金属パネルの折りと棒材の影が合わさって立体的にも見えるのです。

右側はまるで畳の目のよう。そして左側は・・・

自宅で編集していて気が付いたのですが、この左側の色調と混ざり具合、まるで展示室にある
『レパント』シリーズの色使いにそっくりですね。

Museum Brandhorst はエネルギーの効率化を考えた設計工法となっているそうですが、計画通りの節減になっているかは微妙なところなようです。
外壁の仕様は、“車量の多い通りからの騒音を遮断する“こと意図されたようですが、コンクリート壁に断熱材、その上に金属パネルを山折り・谷折りに設置すること、そのパネル同士間の僅かな隙間、さらにセラミック棒材で外壁を覆いつくすように等間隔に並べて幾層にも仕上げることで、解決しようとしたのかもしれませんね。

それでも夏の陽がさんさんと降り注ぐ今日、美術館の周りをあちらこちら歩いてファサードが織りなす多彩な表情にうっとりした体験は、何物にも代えがたい貴重な時間でした。