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特別なレモンスコーンサンド

眠りたくない夜だ。この時期の夜の涼しさが好きで、つい夜更かしをしてしまう。のりしおチップスを食べながらSNSをスクロールし、たまたま目についた悲しい言葉を目にして、はっと氷水をかぶったような気持ちになる。

このままじゃだめだ。そう思い、油分たっぷりのジャンクなお菓子をゴムで縛って、SNSからログアウトした。
辟易したくなるような毒々しいものに、最近の私は触れすぎていた。だから、祈ろうと思った。明日も穏やかに生きられますようにと。

祈ることはたいてい、私にとってはお菓子を食べることとイコールである。ただのお菓子じゃだめなのだ。私が毎日を爽快にさせるために特別に選んだお菓子たち。それらが私の生活を守っている。油でぎとぎとになっているでもなく、過剰に砂糖が入っているわけでもない。それらはとても清廉で、作り主の心がこもっていて、いやな気持ちを忘れさせてくれる。いつかちゃんと、私が日々を良くするために食べているお菓子の話をしたいと思っているのだけど、今は置いておいて。

0時12分。風のない、けれど暑苦しくない、5月半ばの真夜中。
ひたすらに、ただ真剣に、大好きなお菓子屋さんのレモンスコーンサンドのことを想う。レモンバターと、白あんと、クリームチーズを挟んだ焼き立てのスコーン。その想像は私を「大丈夫」にさせる。身体の毒素を抜かなければならない。たよりない木の舟で海を渡り、明日という浅瀬へと辿り着くために。

どんな人にも「大丈夫」になるためのものはある。でないと、本当に「だめ」になってしまうから。

檸檬の色って素敵だ。ぱっとしていて、月明かりみたいで。
小さな「大丈夫」の連続を、握りしめて生きていきたい。

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