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煙草それから

1325 文字

 煙草の文字や煙を見ると、どうしたのかしら ? ・・・もう他界して年数もかなり経っている父を、どうしても思い出してしまって困っちゃう、山本リンダ。
 ヘビースモーカーだった父は煙草を咥えて仕事をしていた。
 
「おい○○ 煙草に火を付けてよこせ」

 父の胸ポケットから煙草とライター ? マッチだったと記憶は言っている、を取り出して煙草を咥えてマッチを擦って一回吸って、父の口にくわえさせていた。
 風の強い日などは中々煙草に火がつかない、風に背を向け丸くなって火をつけて渡していた。
 未だ小学校に上がる前の話しである、ある日猛吹雪で一週間位かな ?? 当時は雪が鬼の様に降った、一階建ての屋根が下に見える大雪と吹雪、子供だった私は家族が一部屋にいる事が、加えて仕事のお手伝いをしなくても良いから、吹雪や台風は大好きだった。
 父は煙草を買いに行く事が出来なかったのだろう、気が付いて父を見ると顔面蒼白、目はトロ~リよだれを流している。
 子供だった私は父のそんな姿に驚き、世界が終わる様な、その時は世界がある事は知らなかったっけど、何かにすがる様な目をしていた事だろう。
 4~5日煙草が吸えなくて禁断症状が出ていた、という事を後々知る事になっる。
 そんな父の為に母は、父が吸って捨てた長い煙草を袋に入れて大事そうにしていた。
 不思議に思い母に聞いた。

「なんで拾っているの ? 」

「又 吹雪で煙草買いに行けなくなった時のお父ちゃんの煙草だよ」

「ふ~ん」

 その後の記憶はない、吹雪があったのかさえ覚えていない。

 おぎゃあ~~と泣いた頃から、ヘビースモーカーの父のあぐらの中で育った私は、煙草の煙と機械油の香りの中、う~ん(笑)良い香り。

 それから成長した私は東京に帰る日、父に送ってもらい飛行場、搭乗間際に父から渡された物に唖然として受け取った。
 その時私は有難うの言葉をなくしてしまった、目は泳いで困惑していた、父の心遣いをもろ手を上げて喜べなかった。
 私は成人をして煙草を吸う様になっていた、そして、禁煙をしていたのである、後一本、一日の最後の時間に一本だけ吸うだけになっていて、これさえ克服したならば、禁煙成功と喜んでいたのである。
 搭乗間際、無造作に差し出された父の手には、セブンスターワンカートンが光っていた。
 私はニッコリ笑っただろうか ? 有難うと言っただろうか ? 
 座席に落ち着いた私は思った、どうしょう~!! 吸わないでこのまま宝物に・・・せっかく父が私の為に・・・無口で不器用な父が差し出した手を思い出していた。

 そんなエピソードが、信じられない三度もあった、事もあろうに3回も、普通はないでしょう、私の禁煙の失敗は父のせいである。
 そうして私の中からは禁煙という文字も、考えもなくなった。
 高齢になった父は、アルコールも好きだった事もあり肝臓が弱り、煙草も一ミリの物を吸って本数も苦労して減らしていた事に寂しさを感じた。
 ヘビースモーカーだった父のお墓には、何時も高い税金を払って電子タバコが乗っかる様になった。
 父はお墓に座り、煙がないぞ、それでは吸えない~と嘆いているかしらね。

  おとうちゃん あのワンカートンは辛かったわ     
       (笑)
 
 


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