繭の中で液化
絶望という言葉は軽い。
スナック菓子の響き。
カロリーだらけで栄養素なし。
まだジャンクフードのほうに噛み応えがあるだろう。痛がりながら悲しみのカタルシス。
でも干からびて伸びきった絶望ときたら、最悪だ。出口はないし、美しくない。
自由はある種の尊厳だ。いや、自由は尊厳の大部分を占めると言ってもいい。本物の自由はないが、尊厳が根づいた場所に自由は確かにある。
見苦しく他人の見よう見まねでしがみついた、おんぼろ橋のかろうじてかかっている縄が、目の前でナイフを入れられていた。
もう止まれなくなった嘘やごまかしが降り積もって、橋がどんどん脆くなる。
橋が壊れるのにまだ少し先だろう。飛び降りたら濁流急流。橋にのしかかる魔物が膨らんでいくが、それもしかたのないことと、理解することもできた。橋そのものが苦しみ悶える魔物そのものだったんだ。
言葉を持たないまま飛び降りることにした。
水しぶきは小さいほうが競技の結果として美しいことをぼんやり考えながら。たとえ廃棄物が落ちたとしても、抗えずに飲み込まれる様に敬虔な存在を感じさせる。
暗く冷たい谷の水底を漂っている。
魔物の躯体の上でいっとき宿借りをして
せっせと稼いだまやかしの正当性も
今は剥がれ落ち、ふやけた醜い姿を晒す。
力を振り絞って岸に戻ろうとするものなら
小石を投げられ、棒で叩かれ、唾を吐かれた。
暗い場所に戻ってじっとしていよう。
外来種のオオサンショウウオは
シーラカンスの姿を思い浮かべ惨めさを舐めつつも、なりたいわけではなかった。
意志の剥奪と欠如。
流れ流れて、傷がかさぶたとなり殻と変じていく。硬い胡桃。暗く無音の胡桃の繭に閉じこもり、とろとろ溶けて液体になっていく。死や再生とは変幻。形は死んで、別の形に変わる。蝶々はその度に生まれて、散りゆくように舞い狂う。
春はいつだって葬送。
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