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他人の心にちょっと土足で入る力

 高校時代に一度も話したことのなかった友達と一緒に麻雀を打った。最近パパになった友達が、私が麻雀を打てると知り、メンツをセッティングしてくれたのだ。大学院生にもなって続いている高校の交友関係なんぞ、片手で事足りるため、新しい出会いは素直に楽しみだった。パパになった友達も、前日に風呂場で牌を洗って天日干ししていたと、ママが言っていた。

 私と違って彼らはもっと前から卓を囲んでいたようで、経験値の差は歴然だった。私が何度も振り込むのに対して、自分の待ち牌はバレバレだった。立直七対子一盃口ドラ4をロンしたのと、一通をツモれたのには満足している。私の唯一の麻雀友達たちは今まで手加減してくれていたのか、井の中の蛙だったのか。それでも、同年代の有名カップル、ダンス部の体操服、物理の先生、実は好きだった人、全員記憶は薄いものの「そうだっけ?」と言いながら共通の話題に花を咲かせる時間はそう悪くはなかった。

 「人見知りをしない人」と「コミュ力が高い人」は少し違う気がしていて、私は初対面でも割と話せるものの、テンプレみたいな会話しかできないタイプだ。実家か一人暮らしか、住んでいる場所、仕事、当たり障りの無い会話。対してコミュ力が高い人は、相手の心にちょっとだけ土足で入るのが上手い。大学の友達アミちゃんは就活でリクルーターに「社内恋愛はありますか?」と聞いていたが、この日初めて話した彼も距離を詰めるのが上手だった。上司に好かれそうだなとなんとなく思った。こういう予定外の出会いは面白いので、最近はなるべく誘いを断らないようにしている。

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