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【ボクの細道】#23「アナザースカイ」

行っていない美術館のミュージアムショップでお土産を買おう。そして呟け、「ここが私のアナザースカイ」

ワルシャワ

もう何枚も同じようなデザインのものを持っているのに、グレーのトレーナーをまた買って、少し気分よく家路に着く。ファストファッションのブランドで買っていないということ以外に、現時点で家にあるやつとはさして違うところはないのだけれど、いい選択をしたようなそんな気がしてくる。

ババ抜きでJOKERを引かずに上がったとき、ボクたちは自分の選択が間違ってなかったことに、なぜか少し自信をもってあまつさえ賢くなった気さえしてくる。本当は、2枚の選択肢の中から選ぶ必要性自体がなかった可能性もあるかもしれないのに、いい決断をした。そう感じるのだ。

いつからだろうか。観光客向けのお土産屋がバカバカしくなってきてしまったのは。地名が書いてあるペナントも、地図がデカデカと乗っているTシャツも、名画の中の人物がふさげているお菓子のパッケージも、どこか軽薄な気がしてしまう。隣の店と同じようなものを売っている露店のその隣の店もやはり同じようなものを売っていて、ここいらの市場をExcelに入力したら、循環参照のエラーが出そうなぐらいだ。

ボクの個人的な海外旅行虎の巻は、お土産はミュージアムショップを見ろ、だ。何回か洗濯すればプリントが剝がれそうなTシャツだったり、粗製乱造された地名と有名建造物が彫られたマグネットや置物を買うぐらいなら、ミュージアムショップで多少値が張ってもクオリティの保証されたものの方がいい。

特にあんまり有名じゃない博物館の方がなおいい。大きい博物館は資本主義に侵食されて、お前たちはこういうのが欲しいんだろと生産者の顔が見える形式で売ってある。なんなら「守銭奴が作りました」とか「違法賃金労働で作っています」とかPOPが出てる。

有名じゃない博物館は、独自路線を貫いてる。それは独自路線を貫くことで、王立博物館みたいな強力な競合相手と差別化を図っているということもなくて、多分国や自治体からの補助金で生き延びているから、あんまり客におもねる必要もないのだろう。

もっと言うなら、中を見ていない博物館や美術館だとさらによい。中まで見学すると、お土産になっているもののオリジナルが見れるので、それを矮小化しただけのお土産に価値なんて感じなくなってしまうので、別に購買意欲が起きないのだ。気になるのに気になるけど、時間とお金の都合上、今回は残念ながらパスせざるを得ない。そんな美術館や博物館のミュージアムショップにこそ出会いが転がっている。

大量生産されて薄利多売に晒されるようなものを買うようなヤツは、感性が軽薄だ。という、自分だけは少し他人とは違う感性を持っていて、自分は海外旅行にも慣れていてセンスがあるみたいに思いあがるぼく自身の軽薄さを眺める。軽薄な人間とは思われたくなくて、人とは違うことをする自分に酔っている軽薄さ。それを内省的に見る瞬間。それがボクのアナザースカイ。


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