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【#30】冬を数えて

冬の星座はあまり好きじゃない。

オリオン座しか知らない自分が惨めになるから。空には星が所狭しと詰め込んである。世界で2番目にキレイなそばかす。そばかすを結んで図形を作って名前を付ける人はいないから、星座なんて知らなくても良いのかも知れない。知っていれば、誕生日占いで役に立つし、まぁ知らなければシーズンごとの大三角形を適当に結ぶことになるだけだ。高校数学のサインとコサインぐらいに人類にとって役に立ち、ボクの人生には寄与しない図形がボクの頭上で中点を連結したりしなかったりしている。

冬を計算しないでくれ、そう思ったりする。
が、冬を計算しているヤツは多い。

別れから逆算すればぼくたちにいくつの冬が必要だろうか

木下龍也,2016,『君をきみを嫌いな奴はクズだよ』書肆侃侃房  p.74

去年のブログにも同じ詩を引用し、その詩集の帯を書いていた尾崎世界観が、尾崎豊の息子でないことしか知らないとだけ書いた。今は尾崎紀世彦の孫でないことと、性に正直な恋愛の歌を歌っているというところまで解像度が上がった。

逆算思考。という言葉が嫌いで、どうしても単一の解があると仮定できるのだろうと、文系丸出しの思考で食わず嫌いをしていたけど、論理推論を少し学んだ結果、やはり波長が合わないことがわかった。

今年一年の目標を立てる。逆算の極みだ。目標を立てて、そこに向けてしなくてはいけないことを設定していく。最悪だ。そこにKPIみたいな用語をブチ込めば、ビジネス用語たっぷりの意識高い系闇鍋の完成だ。

なのにせっかくだからと、年始だから意気込んで大それた目標を立てる。時が過ぎる。一年が終わって何も進歩していない。義務教育から離れた月を重ねるごとに、努力した分だけ褒めてもらえる正比例はすっかり終わってしまった。

目標は達成しないといけない圧がすごいから、達成しなかったとき自分がダメな人間だったとか、努力不足だったんじゃないかと思ってしまう。目標なんぞは立てたところで、達成できなくて自己嫌悪が増すだけだから、立てない方がいい気さえしてくる。目標を達成するために人生を逆算するぐらいなら、連立方程式ぐらい放置した方がいい人生になるに決まっている。ふたつの解を一度に出そうなんて無理な話なのだ。

だから、社会学徒を気取って、目標とは呼ばないで、仮説と呼び変えてみる。ドイツ語読みすれば、ヒポテーゼである。みんなヒポ、ヒポしようぜ。耳にタコができるまで授業で聞いたヒポテーゼ、実生活にも役立てようという浅ましさ。本年度もお世話になります。

例えば、年明け前に立てた目標を取り出してみる。

「人を見下したような態度・発言をしない」

中学生だった時代は遥か彼方に過ぎ去ったのに、人を見下した態度を取っていることが病状の重さを物語っている。そんなことはさておき、この目標を仮説に置き換えてみよう。

仮に、今年の年末もなっても、やはり人を見下していたとしたら、と考えてみる。はい、人はそんなに簡単には変われません。ヒトの本性は悪です。だから、法の力で人の行動を制限することが不可欠なのです。韓非子が登場し、秦の始皇帝の時代が幕を開け、中国に初めての統一王朝が登場するわけだが、目標を達成しないと冷酷なまでの厳しい統治体制が始まってしまうのだ。

そんなことを防ぐために、「人を見下したような態度・発言をしなかったらどうなるだろうか?」と仮説の形にすると途端に広がりを見せる。

もし、人への敬意に満ちた態度や発言が増えれば、ともだちがふえて充実した生活を送れる。という風に仮説から新たな仮説を導くことができる。仮説の条件を満たしたとき、どれだけ人生が楽しくなるだろうか?という問いかけにすることでポジティブに目標を決めることができる。言い換えるならば、目標を達成できたとする前提と、目標を叶えたことから得られる成果に分割して、できるだけ楽しくなる妄想をすることで、年賀状を書くみたいな気怠い作業になりがちな目標設定を楽しいものにできる。

逆に仮説を達成できなくて、人を見下した態度を変わらず取り続けていたら、それはかなりイタいヤツである。そうなると、ともだちは変わらず少ないままなので、2023年の人生の楽しさが大きく減ってしまう。なにせ留学してたので、多くの同級生より1年長く大学に行って、周り就職してかまってもらえない悲しい人間の誕生である。

けれども、目標を仮説にすることで、芋づる式にフローチャートを作って、様々な結果を楽しく予想することができる。YESとNO分岐を繰り返すことで、目標の家族のトーナメント表を作れば、意外と頑張んなくてもいい帰着が見つかるかもしれない。

と、いう感じでYES/NOで答えられる仮説は、ja oder nein Hypothese である。一番オーソドックスな仮説だが、もう少しバリエーションを持たせると、Je Desto Hypothese も意地らしくてかわいい。イェー・デスト・ヒポテーゼちゃん。いわゆる、〇〇すればするほど、△△になる。という形の比例関係を用いやすい、仮説の立て方である。

例えば、来年は「TOEIC900点以上とる」という目標を例に取ってみる。TOEICを一度も受けたことがないので、900点がどれくらいの難易度か分からず突撃し、爆死するという未来が大見えして、勉強のモチベーションも無くなってしまう。この目標も、「TOEICで点取れば取るほど、厚木もまたモテる」というイェー・デスト・ヒポテーゼに置き換えると、未来は明るく見えてくる。

600点以上取れば、異性からモテる。700点以上取れば、同性からもモテる。800点以上なら、自分と性格の合う異性からもモテる、900点以上なら、両性からモテまくりである。ここで、英語のテストと性的な魅力に相関関係が無いとヤジを飛ばしたくなったみなさんへ。英語が出来れば、英語でもマッチングアプリできるようになるから、倍モテるなんて当然の計算ですよね。ちなみに、ヨーロッパでのマッチングアプリ修行は現在、絶賛停滞中です。

さて、冒頭の木下龍也の詩に戻ろう。
別れから逆算すればぼくたちにいくつの冬が必要だろうか

必要な冬の数それぞれ場合分けして、考えればいいから、

n=0のとき、、、、、、。n=1のとき、、、、、、。n=2のとき、、、、、、

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