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〜断片の連なり⑤〜

「ルシアンの青春」ルイ・マル監督
音楽ジャンゴ・ラインハルト
1974年公開

青春映画ではなく戦争映画。
戦争というと被害者の話が多いが、これは加害者側の話である。

第二次世界大戦の末期、フランクの片田舎で育つルシアンは病院の用務員をしているが、若者にとっては退屈な毎日。
父が捕虜になり…母は生きていくために地主の愛人となり暮らしている。
地主は良心の呵責があるせいか、ルシアンが家に居るのを嫌がる。
そんな居場所のない道徳観念の低い環境下に置かれた無教養な素朴な青年は、自分の身の置き場をレジスタンスに向け、恩師を頼るが断られ、偶々出会したドイツ警察ゲシュタポの手下となる。  
善悪の判断も無しに結果として恩師を裏切り、大義名分もなく、行き当たりばったりの居場所探しの流れから、ドイツ警察ゲシュタポという真逆な道へと進む。
皮肉にもユダヤ人女性フランスに恋をする。
罪という意識もなく権力を手にし、力の行使で彼女を手に入れるが、ゲシュタポに嗅ぎ付かれて、逃亡する。

罪の重さを知らない反抗的な幼い顔がかえって、悲壮感を増す。
屠殺シーンが多い。
生きる事は一方では命の搾取ということを示唆しているのか。
場当たり的な生き方、そうせざるを得ない道へと追い込む戦争。

ルシアンの幸せは逃亡中のひとときだったかもしれない。

#エッセイ
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