〜断片の連なり⑦〜
「短編画廊 絵から生まれた17の物語」
編集 ローレンス・ブロック
訳 田口俊樹
アメリカの画家エドワード・ホッパーの絵画に惹きつけられた作家ローレンス・ブロック。
「短編画廊」は、ホッパーの絵から着想して小説を生むというアイデアをローレンス・ブロックが生み出し、作家に依頼して編集したもの。
彼の短編も含めて17人の作家で構成されている。
その中には、名だたるスティーブン・キングも。
エドワードホッパー
(1882年〜1967年)
エドワード・ホッパーの絵画は、アメリカの何気ない日常を描いているが、ざわつきを感じる。
…心奥に眠る孤独。
孤独を埋める為に刺激を貪り空回りする空虚さ。
生き残る為の苦悩に煩わされた人や日々。
細やか楽しみから得る潤いを忘れ砂漠化した心を持つ人々。
スティーブンキング は、絵画"Room In New York"から、短編「音楽室」という、一見穏やかそうな日常風景から、ゾッと鳥肌立つストーリーを紡ぎ出した。
他に、猟奇的な作品もあれば、ほろりとさせるものもある。
中でも好きだった小説は、クレイグ・ファーガソンによるsouth truro church"「アダムズ牧師とクジラ」老いて朽ちてゆく男の日常の中で生まれたささやかな友情を綴る。
ウォーレンムーアよる"Office At Night"「夜のオフィスで」は主人公の純粋さがふわりと優しい余韻を残す。
クリスネルスコットによる"Hotel Room"「1931年、静かなる光景」は、集団ヒステリーから起こる人種差別。…反発を抱きながらも、曖昧に生きる主人公のひそやかな切なる思いを綴った良作。
ニコラス・クリストファーによる"Room By The Sea"「海辺の部屋」は、幻想的でクリーンな風景に沿うようなストーリーで、白ワインにシーフードを食したくなるようなシーンが印象的。これからの海を感じる季節にぴったりだ。
きっと、気になる短編に出会えると思う。