本の部屋とはだしのゲン

実家に、本が雑多に置かれていた部屋(小屋?)があった。日本文学全集に混じってエロトピアというエロ本もあったり!本当に時代も分類も全くの無法地帯。段ボールに無造作に入っていたものもあった。婆ちゃんが小さい食堂をしていたから、お客さんが置いていったり、両親のだったり親戚のお姉ちゃんが置いていった昭和のすっごい古い少女マンガも沢山あった。

私はそこが大好きだった。スラムダンク全巻あったので、水戸洋平くんに恋したり宮本輝の流転の海シリーズが大好きで熊五さんに恋したり、村上龍のコインロッカーベイビーズのキクとハシ、アネモネ、の仲間になりたいかっこいいなんて思ったりしていた。村上春樹のノモンハンの描写には言葉を失ったし、太宰治のセッカチピンチャンていう全てがカタカナ、語感具合にツボったり、吉行淳之介さんの手品にでてくる可哀想な青年のこと、山田詠美の蝶々の纏足の纏足が読めなかった。これはどういう意味?と何か大人に聞いちゃダメ系と肌で感じ取っていたのか、こっそり、漢字などを勉強した。早熟なガキだった。(山田さん風)

おーい龍馬もそこでよんだし手塚治虫の火の鳥は今でもバイブル!犬木加奈子さんの目玉でかい絵のホラー系ホラーMもグロイのも沢山あってカオスだった!

本当にあの部屋は、誰にもなににも制限されていなかった。親は何も言わなかったし本が好きな私を喜んでいたかと思う、貧乏でも本は買ってやると言われていたし(実際にそうしてもらったと思う、ありがたい)あの部屋は、今でもわたしの大事なものの何かになっている気がする。

「はだしのゲン」の漫画は小学校の図書館に全巻あった。「オバケがでてくるんだよ怖ぇの!」と男子たちが言っていた。夢中で全巻よんだ。途中、存在を忘れていたりしながらも長い時間と年数をかけながら読んだ。小学校卒業式までに全巻読んだ。ゲンのその後まで。戦争の悲惨さ、厳しい現実、後遺症の全ても描かれていた。ゲンは苦しみながら、悲しみながら笑いながら現実を乗り越えていく。お父さんの言葉を胸に。わたしは上記のような玉石混交の本の部屋で慣れていたので、怖くはなかった。それより、「真実」を知りたい、怖くても「現実」を知りたいのほうが強い。子供でもそういうガキはいます。(わたし)

そういう現実が、目をそらさないで、きちんと描かれていた。

子供でも戦争の事を色々考えた。家族が突然明日いなくなったら?好きな人が戦争にとられたら?黒い雨にうたれたらどうなる?

戦争は悲しくて苦しくて、なにもいいことを生み出さないということを早くに知れたのはラッキーだったと思っている。

ゲンをきっかけに、戦争時代を生き抜いた方の手記も興味を持ち、読んだ。特攻隊のお手紙も読んだ。死んだ爺様は戦争経験者だったという。婆ちゃんから又聞きで聞いた。クーニャンにもらったという布の袋をもっていたとの事。

沖縄に行った時もおばあやおじいからお話を聞いた。居酒屋で酔ったおじさんにナイチャーのせいで!と言われたこともある。

書いてくれて、伝えつづけてくれて本当にありがとうございます。

私も私が取り入れて消化したものを甥っ子達や姪っ子達に伝えたい。もし、子供を産んだら子供にも伝えていきたいと思った。

なににも制限されていない玉石混交の本の部屋を作るのも夢だ。



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