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彼のイタリアン、私の焼きサンドイッチ

彼は料理好きだ。
もともと私は料理が出来なかったけれど、彼のおかげで少しづつではあるけど、上達してきた。

昨日は私の誕生日ということで、遠くに住んでいる彼が家に来て、手料理を振舞ってくれた。

彼は大企業の営業として働いてる。
そのくせに、私の好みの味のイタリアンを作っては喜ばせてくれる。彼のイタリアンを食べてから、私は職場の近くにお気に入りのイタリアンレストランを見つけた。

彼の味そっくりだったから。

私も彼を料理で喜ばせたい。
最近はその想いで、色々な料理雑誌や料理動画を見ている。頑張って凝った料理を作ったりもしたけど、彼は何を食べさせても、美味しいってニコニコ笑ってくれる。
嬉しいけど!!本当に美味しいと思ってるのか…

昨日、私を喜ばせてくれた彼は昼前まで起きなかった。
今日は土曜日。遠くまで来てくれた彼を起こすのは忍びない。

ブランチは私が作ろう。
食材は昨日、彼が使った具材の残り。レタス、チーズ、ベーコン、卵を使って、焼きサンドイッチにした。ちょっと不格好。
ランチョンマットに、サラダ、コーヒーもセットして、と。

「おはよう。美味しそうだね。」
むくりと彼が頭を上げた。なんとタイミングのいいことか。さては、起きてたな。

2人でテーブルを囲み、ラグの上にあぐらをかく。
じーっと、焼きサンドを食べる彼を見る。
「…美味しい。」
まだ寝ぼけてるのか、いつもの笑顔がないぞ。不安になって、私もかぶりつく。美味しい…のにな。

食後に、サーバーに残ったコーヒーを彼のコップに注ぐ。

「またこれ作ってよ。」

!!!これは思わぬ成功。これから彼は焼きサンドイッチを食べる度に私を思い出すのだろうか。

私にとって、イタリアンといえば、彼。
彼にとって、焼きサンドイッチといえば、私。

味わう度に、思いを募らせられる相手がいる日常がなんと幸せなことか。


絵:wakka 文:ぐっち

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