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不純情小説

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決して純情ではない男女の悲しい物語
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#カレー

【短編連載・不純情小説】リバーサイドマルシェ⑥

【短編連載・不純情小説】リバーサイドマルシェ⑥

 コーヒーカップに指をかけたまま、多香美は川の対岸の景色を眺めていた。対岸には平野を埋めるようにして耕作地が広がり、その向こうに山がかすんで見えた。

 川面に乱反射した朝の陽光が屋外撮影のレフ版のように多香美を照らした。多香美は眼をやや細め、心地よさを満喫しているように微笑んでいた。俺はこのとき、はじめて多香美の顔をしっかりと見たような気がした。
 多香美の色白の肌は、俺が苦手とするか弱そうな透

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