［19］台所から蓮田を想う

夕立が蓮田をチューニングしてる

　　　曲はピアノからフォルティシモへ

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ばんごはん何にする？

連日の暑さに少々疲れた様子の
母が物憂げに言う。

お盆は実家に帰省する。
田舎はお盆の行事が多い。
お墓の掃除から始まってお寺に供え物をし、
ゴザを編みナスの牛を準備する。
迎え火を焚き、
仏様に３食の食事を作り供える。
そして親戚周りやご近所周り。
いつもなら会社や学校に行っている家族は全員家にいて、
ご飯はまだかと催促する。

そんなこんなで、
主婦にとってお盆は繁忙期である。

そうめんでいい？

ナベを火にかけ湯を沸かす。
立ち昇る湯気で、
コンロ付近には熱気がこもる。
そばの小窓から流れ込む
ひんやりとした空気に人心地つく。
その意外な涼しさと湿気に窓を見やる。

生垣の上に見える空は、
いつの間にか暗く重い雲に覆われていた。
生垣の向こうには、
蓮田が広がっているはずだ。

ボッ、ボロボロッ、と
蓮の葉が打ち鳴らされる音が聞こえてくる。
遊び確かめるようなそれは、
やがて興が乗ってきたミュージシャンのように
徐々に手数を増し、スピードを増し、
観衆をも巻き込んで、
あたりを支配する大きなうねりになる。

夕立だ。

私はナベをかき混ぜながら
耳をすました。

生垣の向こう、
雨に打たれしずくを弾き揺れる、
蓮の葉の連なりが波のように広がっているはずだ。

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