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【超短小説】君がいてくれてありがとう【1000文字以下】

「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」

大雑把で不器用な俺は、人の話を聞いているふりが大得意のようだ。小さい頃から細かいことが嫌いというか性に合わなかった。

絵を描く授業があれば色を付ける作業にめんどくささを感じ、グループ分けをする際の友情や疎外をくだらねぇと一蹴し、とにもかくにも俗にいう繊細な人間ではなかった。

そんな俺は自然にといって言いかはわからないが、一般的に不良と呼ばれるカテゴリーに分けられた。

先生の話、親の話、友達の話、色々な話を聞いてきた。

「この前注意したことをきいてなかったのか!」

「なんでいうこときかないんだ!」

「約束したのに、きいてなかったのかよ!」

あぁ、俺は聞いてないよ。

だから

体罰をしていた先生を殴った

母さんに暴力を振るっていたあいつも殴った

姑息ないじめをしていた友達だったやつも殴った

俺は何も聞いてないよ。全部俺自身が決めてやったことで、正義感だとか可哀想だとかそんな外野の声は聞いてない。

ただ、体罰を受けいじめられていた彼女に俺が勝手に惚れていただけであり、母さんに暴力を振るう再婚相手を死んだ親父の代わりにぶっとばしてやろうと思っただけ。

「ねぇ、ほんとに聞いてる?聞いてないでしょ?」

「あぁ、聞いてるよ」

「いつものふりでしょ?ふふっ」

そういいながら彼女はグーにした小さな手を俺の頬に押し当てる。

今の俺は毎日彼女に殴られている。

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