かずぺあ

創作の文章を書いています。

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【短編小説】日記ちゃん

  私は小学生の頃日記を書いていた。日記ちゃんと名前を付け、友達と会話をしているかのように文字を並べていた。友達がいなかった訳ではないのだけれど、お母さんを亡くしてしまった悲しさを話せるのは日記ちゃんにだけだった。   お父さんは毎日朝早くから遅くまで仕事だったけれど、朝ごはんと夕飯は必ず手作りで用意してあった。私はお姉ちゃんと二人で食べながら、お父さんに心配かけまいと幼いながら話したのを覚えている。   優しいお父さんとお姉ちゃんと一緒にいればいるほど、お母さんが恋しく

    • 【短編小説】泣き顔フレンズ【2000文字以下】

      友達が、泣いていた時にするべき行動。 その一、慰める。 その二、そっとしとく。 その三、一緒に泣く。 その四、そもそも友達がいない。 その四は勝手に僕が付け足した。なんとなく観ていたテレビの中でそんな話をしていた。 僕は目を閉じた。もしも友達が泣いていたら、僕はどうすれば良かったのだろう。逆に僕が泣いていたら、友達はどうしてくれたのだろう。僕が泣いているときに、僕自身はどうして欲しいのだろう。 友達がいない人が泣いているとき、誰がどうしてくれるのだろう。 テレビから綺

      • 【短編小説】チョコが空を飛んでる【2000文字以下】

         今でも思い出します。 きっかけはあの日だった。彼女は天井を指差しながら、ソファーで寝そべっている僕に話しかけてきた。 「見て、見てー」 「んっ?」 「チョコが空を飛んでる」 「チョコ?」  もちろんチョコなんて飛んでないし、真っ白な天井にはそれを連想させるものは何もない。彼女は両手を天にあげると、空中で何かを掴みそのまま口へと放り込む。 「ふふっ、いっぱい食べちゃった」  僕の顔を見ながら笑顔になる彼女を見ると、本当にチョコが飛んでいたのかと錯覚する。そんな

        • 【連載小説】金をする男と愛をはく女【第二十一話】

          第二十一話 本当のあたし 普通の日常を過ごしてはいるが、未だに華子と再会することはできていなかった。淳平さんとは再会し、華子と仲が良かったと言われていた妹の美来に出会うことになったのだが、あの事件以降は今のところ特に関わることはなかった。 そんなもやもやしている気持ちの中、美幸から連絡がきた。美幸が話したいことがあるというので、俺は待ち合わせした店へと向かっている。 店に着くとまだ美幸は来ていないようだ。先に着いたようなので、中で待つことにしようと店へと入ろうとしたときだ

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        【短編小説】日記ちゃん

          【短編小説】もうすぐ電池がなくなります 残量が15%です【後編】

             落ち着いた空気が漂う中、私は明日のことを考えていた。マスターの話が進めば進むほど、私の気持ちは明日へと進んでいった。 最初の印象とは違い、ときおり笑いながら話すマスターはどこにでもいるような女性で、話す内容もいわゆるガールズトークだ。良くいえば気さくであり、悪くいえば馴れ馴れしい。だが、私はマスターがそういう理由で私に話しているのでは無いことは解っていた。 「すいません、私ばかり話しちゃって」 「いえいえ」 「あの、失礼ですがお客様のお名前を伺ってもよろしいですか

          【短編小説】もうすぐ電池がなくなります 残量が15%です【後編】

          【短編小説】もうすぐ電池がなくなります 残量が15%です【前編】

           実にわかりやすい。私はそういう人が羨ましくも妬ましく、そんなことを思ってしまう自分が嫌いでしょうがなかった。 私は感情を表にだすのが苦手だと、周りにはそう思われている。 ひとつ訂正させて欲しい。感情を表に出すのが苦手なのではなく、私にとって感情を表に出すほどのことが起きていないだけなのだ。当然そんなことを周りには言えるわけなく、皆がいう落ち着いているだとか物静か、クールな性格や生活感が見えない等言われ、時には気を遣われる。そういったキャラクターに位置づけられることに不満は

          【短編小説】もうすぐ電池がなくなります 残量が15%です【前編】

          今日も暑い。熱中症は恐い。気を付けよう。

          今日も暑い。熱中症は恐い。気を付けよう。

          【短編小説】全身を強く打ち意識不明の十代【2000文字以下】

          朝、昼、夜、いや。 朝、昼、夕、夜、いやいや。 早朝、朝、昼、夕、夜、まてよ。 早朝、朝、昼、夕、夜、深夜。 一、二、三。 一、二、三、四。 一、二、三、四、五。 一、二、三、四、五、六。 一から六までの組み合わせ。どの組み合わせの世界で生きている? 普通とか、正常なとか、常識的にとかはどっかに投げ棄てて。 過去、現代、未来。 A、B、C。 Aに捕らわれ、Bから逃げ、Cを拒絶。 いや、Aは思い出、Bを楽しみ、Cはパッパラパー。 いやいや、それはあいつらでしょ?

          【短編小説】全身を強く打ち意識不明の十代【2000文字以下】

          【短編小説】ヒーロー家族【3000文字以下】

          「お父さんは世界を救ったのよ」 母さんの口癖には、正直もううんざりだった。 「そうだね、また来週くるからさ」 俺は病室から出ると、職場へと戻る。仕事をしているか、病院にいるか。この二択がここ数年の俺の行動範囲だ。 「お母さんの具合はどうだった?」 職場に戻ると上司が聞いてくる。 「あぁ、相変わらずです…」 「そうか…、今日はもう帰っていいぞ、というか明日からリフレッシュ休暇だ」 「えっ?いいんですか?」 「いいもなにもお前この一年まともに休んで無いだろ!それ

          【短編小説】ヒーロー家族【3000文字以下】

          【短編小説】初恋は未来へ【3000文字以下】

           人生で初めて異性から告白されたのは中学二年の時だった。まだまだ恋愛に疎かった俺は、返事を曖昧にし彼女と付き合うことはなかった。 正直かなり嬉しかったのだが、精神年齢の低かった俺は男友達とバカやったりするのが楽しいと思っていて、女なんか興味無いと強がっていた。しかも告白してくれた彼女はなかなか可愛いこで、そんな彼女を振ったことで俺はモテると勘違いしていた。 そんな彼女との再会は、久しぶりに地元の仲間が集まる成人式のはずだった。成人式に彼女の姿は無かったと聞いた。その一年後

          【短編小説】初恋は未来へ【3000文字以下】

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第二十話】

          第二十話 明日くる未来へ、前を進めば、夢は叶う 。  一息遅れで飛び出した俺の目に飛び込んできたのは、電柱に隠れていた見知らぬ男が淳平さんに押し倒されている場面だった。 俺も淳平さんに加勢する。 「これはどういうことですか?」 男を押さえながらも、疑問は拭われない。 「放してください!僕が何をしたっていうんですか?!」 男は抵抗するが、淳平さんは鬼気迫る顔で力を緩めることはない。俺はさっきのこともあり、何がなんだかわからなかったが、淳平さんが促す目線の先に見えたナイ

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第二十話】

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十九話】

          第十九話 推し問答  俺は刺された悟へと近づき傷口を確認する。苦しむ悟の姿に一瞬目を反らしそうになったが、俺が感じた違和感は確信に変わった。 「おい!悟!しっかりしろ!」 「お、俺はもう…あとは…」 弱々しくしゃべる悟を俺は一喝した。 「よくみろ!お前は刺されてない!」 「へッ?」 悟が刺されたと思われた下腹部から手を放すと、溢れでているであろう血は一滴も出ておらず、狂気を纏っていた彼女の包丁にも血は付いていなかった。 「淳平さん!あんたもグルなのか?!」

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十九話】

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十八話】

          第十八話 突撃!アイドルのご御飯  淳平さんの話によると今日はメンバーの二人と食事会をするということで、メンバーの寮に行っているらしい。到着した寮を見るとお世辞にも綺麗だとは言えないボロアパートだった。 「ここですか?」 「ああ、無名の事務所の地下アイドルの家ってのは所詮こんなものだよ」 「いえ…下積みの大変さを感じます」 俺はよくわからないフォローをいれつつ、現実を感じた。 「ああ、とりあえず電話を掛けているんだが出る気配はない」 「そうですか…」 「ああ、

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十八話】

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十七話】

          第十七話 突然の迷探偵  俺と悟は車の中で気まずい空気に包まれていた。俺達がストーカーだと思っていた男の車内の後部座席で俺と悟はうなだれていた。 「本当にすいませんでした」 俺は彼にもう一度謝った。彼を吹っ飛ばした悟も一緒に謝罪の言葉を口にする。 「いえ、こっちも恥ずかしいところをみられちゃいましたからね」 彼は冷たい目で俺達を見た。俺はその目を知っているが悟はその目にひどく怯えていた。 「淳平がいけないんでしょ!」 助手席の美来ちゃん、俺達が助けようとしていた

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十七話】

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十六話】

          第十六話 互い違いのストーカー  「オペレーション・スクルド」 俺の耳に装着したブルートゥースイヤフォンから悟から謎の横文字が聞こえる。 「オペレータ、スクライド?どういう意味だ?」 「まぁお前にはわからないか。幸運を祈るってことで」 俺は今、悟とは距離を置き行動している。とりあえずイヤフォンから送られる悟の指示に従うことが俺の任務になっていた。 時刻は午後二時過ぎ。午前のライブが終わり二時間ぐらい経った頃だ 「なぁ、ほんとにこんなところに彼女は来るのか?」 「

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十六話】

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十五話】

          第十五話 悪魔的な世界へ 俺は自分の知らなかった世界。むしろ知ってはいけなかった世界に一歩足を踏み込んでしまったみたいだ。きっかけは一通のメッセージだった。あれは確か美幸と再会した日だった。 メッセージの送り主は川野辺 悟。一緒に夜露のライブに行った大学生の友達だ。 悟から遊びの誘いがあり、言われるがままに連れていかれた場所は独特の熱気に包まれていた。 薄暗い部屋の中で数十人の男達がこれから起こることに備え、まるで戦闘準備をしているかのようだった。 「イチローは初めて

          【連載小説】金をする男と愛をはく女【第十五話】