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#届け 映画「ハケンアニメ」

今日はハケンアニメについて書くよ。(途中まではネタバレ無しだよ。)
Twitterとかでよく流れて来てて、気になって滑り込みで観に行きました。観に行ったのは6月下旬と数日前。1回目に観たときは、そろそろ終わるかもと言われていたタイミングで、上映している映画館も少なくて、といった感じ。
結局、この映画は自分の中で三本の指に入る映画になりました。きっと、(どんな形であれ)モノづくりに携わる方は、観て共感しない人はいないんじゃないかなぁと思ったりしています。

お話の描き方がとってもリアルで。私はアニメ業界には正直あまり詳しくないのですが、それも上手く描かれていて、アニメ制作にはどのような役割の方がいるのかすぐに理解できました。多分、バックに流れている音楽もそんなに多くなくて、テンポの良いドキュメンタリーをずっと観ているような、そんな感覚。
監督は吉野公平監督。お恥ずかしながら存じ上げませんでしたが、映画「君の名は」でCGアーティストとして参加されていたり、映像制作側でも色々と活躍されていたようで、この映画が出来た理由がとても分かりました。吉野監督の経験がきっとギュッと詰まっているから、こんなに胸に突き刺さるんだろうなと。

そして、Twitterで何気に感想を書いたら共感していただいた方も多かったようで、ハケンアニメの反響の大きさを目の当たりにもしました。

さて。
ここからは少しネタバレを含んでいきたいと思います。うまく書けるか分からないけど書かせてください。笑


ストーリーとしては複雑なところはあまり無く、常に対比で描かれています。やり手のアニメ監督 王子 千晴(中村 倫也)と彼を支える有科 香夜子(尾野 真千子)。新人アニメ監督 斎藤 瞳(吉岡 里帆)と彼女を支えているのが行城 理(柄本 佑)。常にこのコンビの対比の構図がある。
(下記のセリフは記憶から抜粋で、正確でないところも多いと思います。ニュアンスで汲み取っていただけると嬉しいです。)
自分自身は、エンジニアとしても、役者としても、その他の様々なクリエイティブな活動にしても、すべて、どこかにお客様のいる「モノづくり」をずっとやってきているなぁと思っているので、随所随所で言葉が刺さりました。


1.異なる役割の人とのコミュニケーションの難しさ


初っ端のシーンで、新人の斎藤監督が他のエンジニアやデザイナーに要望を伝えるシーンが描かれます。

(監督)「ここもう少しこんな感じで」
(エンジニア)「数値で言って」
(監督)「もうちょっと黄色っぽく」
(デザイナー)「黄色は黄色でもどの黄色?」
映画「ハケンアニメ」

こんな感じで全然噛み合わない。だけど、監督も行城さんや色んな人に支えられて、成長してく。終盤に同じようなシーンが来るんですけど、そのときはエンジニアはエンジニア、デザイナーはデザイナーに合わせた形で、奮闘しながらもリスペクトしてきちんと伝えていく姿が描かれるんですよね。個人的にここがすごく響く。
大学の頃から、自身はエンジニアとしてデザイナーの方とやらせていただく機会が多かったし、最近もクラシックの方とご一緒させていただいたりしていて、伝え方ってとても大事だなと思う。結局一人では大したことができないわけで(かくいう自分も、若い頃は一人で色々できると思っていた頃もありましたw)、いろいろな立場の人といろんな役割の人と協力して、大きいものを作っていくわけで。1はたった1でも、1+1は2じゃないというか。そういうことを改めて感じたシーンでありました。


2.必要としている人に届けることの大事さ

「ちゃんと見る人に届かないと意味がない。それがたとえ100打って1しか届かなくても、全力でやるしか無い。普通では届かない。観てもらないと始まらない。良い作品かどうかを判断してもらえるのは、その後からです。」
映画「ハケンアニメ」


一見、お金儲けにしか興味がないように描かれている行城さんが、途中で言うんですよね。
そうなんだよなと。いくら良いものを作っても、お客様に知ってもらわないと何も始まらないんだよなと。それはすごく泥臭いことなんだけど、それがはじめの一歩なんだよなと改めて気付かされるシーンです。
劇中だと、カップラーメンの販促グッズにアニメが使われているのを見て、自分の作ったアニメを軽んじられたと感じた斎藤監督は激怒する。だけど終盤で、自分が(アニメを)一番見てほしかった人に、そのカップラーメンの宣伝を通じて作品が届いたことに気づくんです。「ちゃんと届いてんじゃん。」と。
作り手は、100%の状態で世に出すことを常に考える。それはもちろんのことなんだけど、加えて、作り手は自分の作ったモノには愛着が湧く。愛着が湧くので、すごく良いものだから観てくれるだろうとか、使ってくれるだろうと思ってしまうところがある気がします。自身もそう。それは自体は仕方のないことで、だからこそ、チームの中なのか自身の中なのか、常に客観視できる視点が必要なんだと思う。そして、必要としている人にちゃんと届ける。届ける努力をするということが大事。かな。


3.エンタメの必要性

「なにかでふっと思い出してくれる結末であれば。誰かに刺さればいいと思う。」
映画「ハケンアニメ」


最終回の公開ギリギリになって、結末を変更したいと斎藤監督が言い出す。「もし失敗したら、アニメも作れなくなるぞ」と言われながらも「変えます」と彼女は言い切る。そんなタイミングで出てきた言葉だったと思います。(多分)
2020年、コロナで世の中が不安定になったとき、エンタメは不要不急なものだという見方もありました。エンタメって、冷蔵庫のような(家電の)三種の神器のようなものでもないし、見なくてもきっと困らないものかもしれないんです。だけど、やっぱり心に残ってそれがトリガーになることもあるし、それに影響を受けて、ちょっとの角度でも人生が変わる人だっている。その一人がここにいますよ。笑
三谷幸喜さんの舞台を見て、そこで演じた大泉さんを生で見て、お芝居がやっぱりやりたいと思って、お芝居をはじめて、いろんなご縁が繋がって、お芝居だけじゃなく、色んな方向で、面白いことやろうよとお声がけ頂けるようになった気がします。今までも大概楽しかったけど、今までよりも、多様な方向で人生が豊かです。間違いなく。
そういう意味で、誰かの心に刺さるエンタメって、やっぱり必要なんだなと思った次第でございます。万人受けすればそれはきっと大成功と言われるんだろうけど、必ずしもそうでなくても意味がある。それだけでも十分価値があるものだと思いました。


まだ上映しているところもあるようです。ご興味あれば是非ご覧くださいませ。最後まで、届けハケンアニメ!

おしまい。

ハケンアニメ本予告


ジェニーハイの主題歌も良いよ。


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