『人類5000年史』をどう読もうか。

出口治明先生の著書である『人類5000年史(I〜Ⅲ)』を読んでいます。

内容としては、タイトルから分かるように文明の誕生から現代までの5000年に渡る人類の歩みをまとめた書籍です。

書籍の巻頭にも紹介されていますが、出口先生は人類の歴史をまとめることを自身のライフワークと位置付けています。出口先生が現代でも有数の読書家であり、博覧強記の人であることは広く人口に膾炙されていることかとは思いますが、5000年に渡る人類の歴史をまとめようとする気概には圧倒されます。

それ故にこの『人類5000年史』の内容も事細かに記載されており、体系的な世界史を学んだのは高校までだった自分にとっては、恥ずかしながら「そんな事があったんだ、、、」という連続で正直なところほとんどが初見の知識のようでした。

しかしある意味ではそれもそのはずで、歴史を学ぶというのは今日明日ではとてもなんとかなるようなものではありません。ましてや、社会人になるとどうしても自分の興味のある歴史事項や人物の知識に偏ってしましますし、体系的に学ぶことまで追いつかないというのが正直なところでした。

しかし、この書籍を読み進める中で(今は第Ⅲ巻の途中)体系的に歴史を学ぶこと、歴史の連なりを知っていることが非常に意義のあることだと感じるようになりました。

僕の中では、この書籍を一言で言えば、「資料集の内容を含んだ教科書」というイメージです。

学校で歴史を学ぶ際に、多くの方は教科書とそれに付随するいくつかの資料集を使って勉強したと思います。(僕だけだったらすみません)

教科書はあくまで歴史の流れを理解する事がメインで、何年に〇〇がありました、のような記述が連なっているイメージです。あくまで歴史の中で比較的重要な(と考えられている)事柄を扱っていると思います。

対して資料集とはいわば教科書への注釈やより詳細な説明を加えるための位置付けかと思います。あまりに細かな内容が記載されている場合もあったりして、「受験勉強」という観点から考えれば費用対効果の低い、というかほとんど0では?といった内容が多かった印象です。

でも僕個人としては教科書よりも資料集の方が興味関心を惹かれるものが多かったなと記憶しています。

少し話が逸れてしまいましたが、要するに出口先生のこの書籍は、教科書と資料集のような、歴史の流れはもちろんのこと、その各事柄について資料集を参照するような細かな内容までカバーされている印象です。

本格的に歴史を研究されている方や高等教育機関で歴史に携わっている方にとってはそうではないかと思いますが、少なくとも、一社会人として日常から歴史に精通している人間ではない僕にとってはそういった印象を持っています。

はっきり言って、一読で理解することはできませんでした。というよりも、ほとんどの事柄は頭に残っておりません。世界史特有のカタカナのオンパレードだけでなく、あくまで編集の軸が「年代」なので、同時代に世界各地で起こった出来事が述べられています。第Ⅲ巻の段階ではまだアメリカ大陸についての言及はないにしても、ユーラシア大陸とヨーロッパを縦横無尽に網羅しているので油断して読んでいるとなんの話かわからなくなってしまいます。笑

だからこそ、第Ⅰ巻の途中から(早い)僕はこの書籍をどう読むか考えました。

結論としては、第一に「覚えようとしないこと」。そして第二に「歴史の目次として使うこと」でした。

第一に関しては、覚えようとしないというよりも、覚えることを諦めたという方が正しいです。先ほどこの書籍が教科書と資料集が合わさったものという表現をしましたが、教科書や資料集は一読で全部覚えるものではありません。無理です。なので、この後も何度か再読することを前提に、精読は一旦脇に置きました。そうしていても、イスラームのあたりとかはもはや文字を追っているだけと感じる箇所もありますが。

そして第二の「歴史の目次として使うこと」ですが、僕としてはこの本はこの用途としての価値がとても高いのではないかと考えています。

先ほども触れたように、この書籍の内容は一般の人から見れば、なかなか難しいと思います。難しいというよりも情報量が多いという方がいいかもしれません。それ故に僕は第一に取り上げたようなスタンスになりました。

ですが、その情報量の豊富さというのは、それまで自分が知らなかった、もしくはあまり興味のなかった事柄への興味を刺激してくれる契機にもなりました。

『人類5000年史』の中で出てきた出来事や人物に興味を持って、それに関連する書籍を読むようになりました。

一つ例を挙げるとすれば、フリードリッヒ2世(フェデリーコ2世)です。

僕はそれまでフリードリッヒ2世についてはほとんど知りませんでしたが、『人類5000年史』の中で、フリードリッヒ2世が聡明な人物であったことやその英雄譚は現代でも多くのファンがいることを知って俄然興味が出てきました。

その関連で読み始めたのが、塩野七生さんの『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』です。この書籍はタイトルのように、フリードリッヒ2世の生涯を史実を基に詳細に紐解いた一冊です。彼がどのように考え、治世を行い、人を登用して、後世に影響を与えたのか。およそ800年前に生きた人間からでも多くのことを学べます。

この他にも『人類5000年史』をきっかけにして、より子細な歴史を学ぶようになった部分はいくつかあります。この書籍が詳しいといっても、歴史の世界はもっと深く、もっと広大な領域を持っています。

一つの書籍をきっかけにして無限の広がりを作っていけるのが読書の醍醐味であり、歴史というジャンルはその代表格ではないかと僕は考えています。

幸にして、現代は人類の5000年の歴史を振り返っても、局地的な紛争はあるにしても全体として見れば最も平和な時代であり、物質も豊かな時代です。そういった時代に生を受けたからこそ、こうして読書をして、自分の考えを公にできるのだということを感じます。

まだまだ勉強したい事がたくさんあるというのはとても幸せな事です。それができる環境はもちろん、そうした欲求を当たり前のように感じられる時代は過去の多くの人類が憧れた時代なのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?