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2023年映画ベスト10~日常を大切に生きる尊さ~

遅ればせながら私が観た2023年公開映画ベスト10を記しておく。昨年末に書かねばいけないところだが、札幌公開が今年1月にズレこんだアキ・カウリスマキの『枯れ葉』を2023年公開映画に入れたくて、これを観てから決めることにしていた。贔屓の監督でもあるし、一般の日本公開作品と札幌の公開はズレてしまうので仕方がない。日本映画と外国映画と毎年分けていたが、今年は日本映画をあまり選べなくて一緒にした。

 1, 『PARFECT DAYS』ヴィム・ヴェンダース
 2, 『EOイーオー』 イエジー・スコリモフスキ
 3, 『after sun アフターサン』 シャーロット・ウェルズ
 4, 『枯れ葉』 アキ・カウリスマキ
 5, 『はだかのゆめ』 甫木元空
 6, 『ファースト・カウ』 ケリー・ライカート
 7, 『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』 アルノー・デプレシャン
 8, 『君は行き先を知らない』 パナー・パナピ
 9, 『レッド・ロケット』 ショーン・ベイカー
10, 『怪物』 是枝裕和
※番外 2022年の映画『彼女のいない部屋』 マチュー・アマルリック

『PARFECT DAYS』、シンプルな作りのヴェンダースの日本映画が一番心に響いた。日常を大切に生きることの尊さを改めて思い知らされた。それは同じように小津安二郎の影響を受けているアキ・カウリスマキの『枯れ葉』にも感じられたことだ。世界では戦争が終わらない。ひどい殺戮は続いている。だからこそ、日常の意味があらためて問われている。イエジー・スコリモフスキの『EOイーオー』のロバの瞳にも魅せられた。ロバはこの愚かな人間たちをどう見ているのか?そんな想像をしたくなる映画だ。『after sun アフターサン』は、父から娘へのメッセージがせつなく悲しく映像に映し出されていた。個人的にグッとくる映画だった。『はだかのゆめ』の甫木元空の若い才能には今後への期待を込めて5位に入れた。生と死の境界が曖昧になっていく映画が個人的に好きなのだ。話題の女性監督ケリー・ライカート作品をやっと観られた。繊細な感性が映像に映し込まれていて好感を持った。他の作品ももっと観たい。デプレシャンの新作の姉と弟の確執も見応えがあったし、イランの新星パナー・パナピも今後が楽しみ。父親の作品を観そびれたのが残念。ショーン・ベイカーの『レッド・ロケット』は、元ポルノ男優の軽いノリと地方都市でのろくでもない感じが良かった。『怪物』は、子役たちの透明感と脚本的なあざとさ、長所と短所がそれぞれあったが、日本映画の中では印象深い。


2022年の映画で見逃したマチュー・アマルリックの『彼女のいない部屋』が特筆すべき素晴らしさだった。公開年で観ていたら間違いなくベストワンだ。生と死の世界、家族をテーマにした映画で、構成の見事さも含めて何度でも見直したい、美しくせつない映画だった。

2023年映画では、『アステロイド・シティ』ウェス・アンダーソン、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』サラ・ポリー、『サントメール ある被告』アリス・ディオップ、『それでも私は生きていく』ミア・ハンセン=ラブ、『午前4時にパリの夜は明ける』ミカエル・アース、『イニシェリン島の精霊』マーティン・マクドナーなども印象に残った。

日本映画では、『市子』戸田彬宏、『月』石井裕也、『春画先生』塩田明彦、『福田村事件』森達也、『658km、陽子の旅』熊切和嘉などが印象深い。

そのほか見逃した作品も多くあるので、順次観ていきたい。とりあえずの観れた中から選んだベストテンである。

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