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『ノーボーイズ、ノークライ』日韓合作映画~妻夫木聡とハ・ジョンウの友情(渡辺あや脚本)

(C)「The Boat」フィルム・コミッティ

渡辺あやの脚本作品ということで見た。脚本家の渡辺あやは、岩井俊二のウェブサイトで応募した脚本で認められ、映画『ジョゼと虎と魚たち』(03年)で脚本家デビュー。『メゾン・デ・ヒミコ』(05年)、『天然コケッコー』(07年)などの映画作品ほか、テレビドラマ『広島発 火の魚』(09年NHK広島)、『阪神・淡路大震災15年 その街の子ども』(10年NHK)、連続テレビ小説『カーネーション』(11年NHK大阪)、『京都発地域ドラマ ワンダーウォール』(18年NHK京都)、『ストレンジャー上海の芥川龍之介~』(19年NHK)、『今ここにある危機とぼくの好感度について』(21年NHK)、『エルピスー希望、あるいは災いー』(22年関西テレビ)など話題作を次々と作り続けている現在最も注目すべき脚本家の一人である。

先日、札幌で渡辺あやの新作映画についてのトークがあったので聞きに行ったのだが、今の時代のものづくりに対して志のある脚本家だとあらためて思った。

この作品は、日韓の若手俳優の妻夫木聡とハ・ジョンウが主演した日韓合作の青春ドラマである。韓国から日本にボロ船で密入国し、日本の裏社会で成功しているおじさん(イ・デヨン)に荷物とキムチを定期的に届けている韓国青年ハ・ジョンウ。日本での荷物の受取人に妻夫木聡。あるとき、受け取りの妻夫木聡が海岸に現れず、ハ・ジョンウは船酔いし、人魚(妻夫木聡の妹)に海に引っ張り込まれそうになる。届け物の手作りキムチをダメにしてしまったハ・ジョンウだったが、妻夫木が代わりの市販キムチを買ってきて、壺の底に白い粉を入れているのを見て、自分が麻薬を運ばされていたことを知る。
その後、ハ・ジョンウは布とロープで縛られた女を日本に運べと言われる。おじさんの会社の金を父親が持ち逃げしたため、その娘を誘拐したのだと説明される。日本で娘を別の組織に奪われ、娘(チャ・スヨン)が袋から脱出して話すには、自分を助け父親を探し出してくれれば、ハ・ジョンウと妻夫木に5000万円ずつあげると言うのだ。妻夫木はハ・ジョンウを脅し、目先の金に目がくらみ、二人はおじさんを裏切り女を匿うことにする。

金も仕事もない日本と韓国のチンピラ二人の友情物語である。妻夫木には認知症の祖母と妹と3人の子供たちがいて狭い部屋で養っていた。中盤以降は、誘拐された娘のチャ・スヨンとハ・ジョンウと妻夫木家族との共同生活が始まる。妻夫木聡とハ・ジョンウが街のカラオケ大会で「アジアの純真」を一緒に歌う場面が見せ場だ。二人はお互い反目しつつ、喧嘩して殴り合い、次第に惹かれ合っていく兄弟のような関係になる。青春ドラマにはありがちな展開だ。最後はハ・ジョンウは妻夫木のために犠牲になり、おじさんにボコボコに殴られて海に沈められてしまう。それを海に潜って人魚のように助ける妻夫木聡だったが、ハ・ジョンウの息は吹き返さないままだった。

若い二人は好演しているのだが、全体的にやや物足りない印象。寓話的な要素もあり、裏社会の恐怖やサスペンス度が足りない。だからヒリヒリした刹那的な友情物語にはなっていない。渡辺あやは水の中や海の底が好きなようだ。


2009年製作/114分/日本・韓国合作原題:The Boat
配給:ファントム・フィルム
監督:キム・ヨンナム
プロデューサー:イ・ジュンホ
脚本:渡辺あや
撮影:蔦井孝洋
音楽:砂原良徳
美術:磯田典宏
編集:キム・ヒョンジュ
キャスト:妻夫木聡、ハ・ジョンウ、チャ・スヨン、徳永えり、イ・デヨン、キム・ブソン、貫地谷しほり、柄本佑、あがた森魚

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