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『風櫃(フンクイ)の少年』ホウ・シャオシェンの自伝的映画~悪ガキたちの青春~

画像(C)Central Motion Picture Corp.

ホウ・シャオシェンの自伝的作品で彼の名を世界に知らしめた出世作。台湾の離島ポンフー島にある風櫃に住むアーチン、アーロン、グォズの3人の悪ガキたちは、いつも田舎町でケンカばかりしていた。対立グループとのケンカは警察沙汰になり、村にいられなくなった彼らは、仲間の姉を頼って都会の高雄へ出てくる。海辺の田舎とは別世界のような大都会。彼らは工場で働きながら、2階建てのアパートで暮らす。その向かいのアパートに夜間部の学生ジンフーとその彼女シャオシンが同棲している。「同棲いいなぁ」とか言いながら、次第に彼らと親しくなっていき、アーチンはシャオシンに淡い恋心を抱くようになる。あるとき、ジンフーは会社の物を盗んで売り捌いた罪で捕まり、進学せずに船に乗って金を稼ぐとアパートを出て行く。残ったシャオシンと距離が縮まっていくアーチンだったが・・・。そんな田舎から都会に出てきた少年たちが大人へと成長していく青春映画である。

フレームを意識した絵作りが頻繁に行われる。建物の開け放たれた四角い空間で海をバックに女の子の前でふざけて踊る悪ガキたち(写真)、あるいは高雄で騙された空きビルで柱で区切られた街の風景は「カラーでワイドなスクリーン」だと話す場面もある。海辺の田舎町では、ひたすら少年たちを走り回らせている。その躍動感は見ていて心地よい。しかし前半部は少年たちのキャラクターは浮き彫りにならない。都会に出てきた後半、シャオシンに恋心を寄せるアーチンが主役となり、仲間は次第にバラバラとなり、アーチンの田舎の父が亡くなるなど、それぞれの変化が訪れる。アーチンの父は、昔野球をやっていて、顔にボールがぶつかり顔面が陥没してしまい、障害を持っていた。いつも同じ場所で椅子に座っていた。父が亡くなって帰省した時の不在の椅子が映し出される。また、アパートの階段の昇りをクレーンアップすると、廊下があって部屋があるアパートの同じ映像を何度も重ねながら、少年たちやシャオシンの変化を描いていく。みんなで泥酔してアパートに戻ってくる夜の場面も印象的だ。そして仲間の一人に兵役の招集が来て、彼らの青春が一つの区切りをつける。市場でカセットテープを「兵役記念セールだよ!」と声を張り上げて売るアーチンの声が街頭に響く。大きな出来事は起きないが、悪ガキたちの躍動と変化を田舎と都会を舞台に丁寧に描いている。


1983年製作/101分/台湾
原題:風櫃來的人 All the Youthful Days
配給:エンボディメント・フィルムズ

監督:ホウ・シャオシェン
製作:チェン・クンホウ
原作:チュー・ティエンウェン
撮影:チェン・クンホウ
音楽:ジョナサン・リー
美術:チャイ・チェンピン
キャスト:ヤン・チャンクオ、ニウ・チェンザー、チャン・スー、チャオ・バンジュ、チャン・ボージョン、ツォ・チョンファ

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