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たーちゃんとアメリカと夢 10 ある意味で奇跡の巻

たーちゃん仕事を辞めてしまいました。プー太郎です。一人暮らしもやめて、兵庫県川西市の実家に帰って来ました。

母はせっかく就職できたのに、と少し残念そうに、

「これからどうするの?」

と言いました。

たーちゃんはすぐに、とらばーゆを買いに行きました。

買ってきた とらばーゆをパラパラめくっていくと、写真付きで

「英会話学校で外国人講師と一緒に働きませんか? 英会話学校受付募集。」

の広告が目に飛び込んで来ました。

これやろ。まさに運命的な出会いです。探していた仕事がそこにあったのです。面接の予約の連絡をすると、

「明日、面接をしますので学校までお越しください。」

と、とても感じ良く言って下さいました。

英会話学校なので、リクルートスーツではなく、かわいいひらひらしたブラウスとスカートを着て、心の中でスキップしながら面接に行きました。

淀屋橋駅で地下鉄を降りて、御堂筋を5分程歩いた所にあるはずでした。都会的なオフィスビルが並ぶ通りに、一軒古ぼけたビルがありました。一階が薬問屋さんで、そのビルの空間だけレトロな、まるでタイムスリップしてこの隙間に落ちて来てしまった様なそのビルの前に、

「HOEインターナショナル」

と書かれた看板が置かれていました。

「こ、これが英会話学校…」

当時、駅前留学のNOVAやECCなどが、ガラス張りのオシャレビルでレッスンしているコマーシャルをよく見ていたので、てっきりそういう職場だと思い込んでいたのです。

その次にたーちゃんが目にしたのは、その薬問屋さんの端にある細い階段に並んでいるリクルートスーツ姿のお姉さん達でした。すぐにたーちゃんはその方々が、たーちゃんと同じ面接の為に並ばれているのだと理解できました。たーちゃんも最後尾のお姉さんの後に並びました。たーちゃんの後ろにも続々と面接の方が続いていきました。

しばらく並んでいると、前後で話されている会話が聞こえてきました。

「私は〇〇帰りの帰国子女です。」
「私も〇〇に行ってました。」

よくよく見ていると、英語が話せて自信に満ち溢れたお姉さん達の行列です。

「こりゃ、たーちゃんが採用されたら奇跡だわ。」

と、クスッと笑ってしまいそうになりました。

かえって面接は開き直ってできました。英語はこのレベルですが、お仕事は真摯にさせて頂きますよ。というアピールをして面接を終え、帰宅しました。

帰宅途中でとらばーゆをもう一冊買いました。

その夜、電話がかかってきたんです。

「HOEインターナショナルです。明日2次面接をしますので、来てください。」

絶対何かの間違いでしょうと、浮かれて舞い上がってしまわない様に自分を地面に押さえつけて、2次面接に行きました。

そこに来ているのはたーちゃんだけで、受付の日本人の女性と、校長先生と、外国人講師の方の3人と対面で座り、簡単な質問を少しだけされて、

「明日から働けますか?」

「•••?  え?」

たーちゃんは晴れて英会話学校の受付に最就職が決まりました。

帰りの電車の中で、もしかしたらあのビルの階段に並んていた方々はさくらで、応募したのはたーちゃんだけたったのかも。なんて事も考えてしまう程不思議でした。

働き始めて暫くして聞いたところ、面接には60名の方々が来られたそうです。

なんでまた、たーちゃんが採用されてしまったのでしょうか? と校長先生にお聞きしましたら、

「たーちゃんは兵庫県川西市の出身でしょ。私もなんです。川西市の子はそんなに悪い子はいないからね。」

と言われ

「えーーー、そこーーー!!」

と心の中で叫んだたーちゃんでした。

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