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愚痴と不満を吸い込む

 愚痴や不満であふれる会話が苦手だ。会社の昼休みや飲み会などで、絶えず愚痴を言い合う場に遭遇してしまうと、とてもつらく感じる。そして、疲れてしまう。だから、僕発信での愚痴や不満を漏らすことは極力ないようにしている。それでも、たまに、その場の雰囲気に乗っかって愚痴や不満を垂らしてしまうこともある。そうすると、その後、少しして、どっと疲れがくる。
 僕も、昔は愚痴や不満をずっと吐き出す人だった。口を開けば部活や学校生活の愚痴を言うような人だった。でも、高校生のとき、友人から「気分が下がるからやめて」と言われてから、最初は我慢だったけど、いつしか愚痴や不満を言わないようになった。
 “なにか嫌なことや後ろ向きにさせるような出来事が起こっても、どうせやるなら前向きに取り組もう”とポジティブに捉えられるようになった。前段で書いているように、極力愚痴や不満を漏らさないように、との考えは、この心構えも関係している。

 近頃の会社の昼休みがまさにこんな状況である。
 同期と2人で昼ご飯を食べることがほとんどだが、その同期は愚痴や不満をひたすら言うような性格だ。少し前までは、その他にも1~2人いたから、それほど気にせずに、“聞かなくていいや”とバリアを張ってご飯を食べていた。しかし、2人っきりとなると、そうもいかない。
 数か月間、昼休みをその同期と一緒に過ごして、愚痴や不満を聞き続けた僕は、ある日、その昼ご飯の場に行かなくなった。
 疲れてしまった。一人で食べるほうがいい。昼休みまで気を遣いたくない。そう思い始めてから、一気に力が抜けてしまった。
 それでも、行かなくなってから数週間経ったとき、“行かないのもったいないな”と思った。愚痴や不満を聞き続けるのが嫌であることを理由に行かずに、自分の好きなように過ごすのはいつでもできる。それよりは、愚痴や不満であふれる場にも慣れてみたらどうか、との考えに変わった。
 それから、その同期との2人での昼休みを再開した。
 でも、やっぱりつらかった。
 “たしかに、愚痴や不満はたくさんあるかもしれないけど、それをポジティブに変換しようよ”と思いながら話を聞いていた。

 そんな日々が続いたある日、本人に、ずっと愚痴とか不満をこぼす印象があることを伝えた。そんな僕の発言で、彼の生態を知ることができた。
 彼は、愚痴や不満を吐くことで、残りの仕事をがんばるための燃料が蓄えられるようだ。聞けば、誰かと一緒にいて、これまで愚痴を吐かなかった日の記憶がないとのこと。
 これは、僕が物事をどうにかしてポジティブに変換して活力にすることと同じことだ。そして、僕は、愚痴や不満を僕にとって都合の良いように扱ってしまっていたことを反省した。

 人によって、活力となる物やこと、考え方が異なる。僕はそう気付いてから、愚痴や不満を聞くことがつらくなくなった気がする。
 むしろ、彼が仕事をがんばることのできる一端を担えていると思い、嬉しくなってしまった僕は変態だろうか。
 同期よ、これからもたくさん愚痴や不満を吐くのだ。

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