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気候変動との向き合い方



はじめまして。

2019年の9月の国連気候温暖化サミットで、16歳の女の子が「あなたたちが話しているのは、お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!」と語ったのを知っていますか?ものすごい形相で各国首脳をにらみつけ、今地球は火事であること、自分達子供の未来はこのままではなくなってしまうと訴えていました。スウェーデンの高校生グレタ・トゥーベリさんです。

これには正直面食らいました。あまりにもグレタさんの主張は的を得ていて、大人の都合で出来ている社会を真っ向から否定したからです。

じつはかなり昔、セヴァン鈴木さんという12歳の少女が1992年に同じように国連の地球環境サミットの壇上で、地球温暖化の問題を訴えていました。



(セヴァンスズキ伝説のスピーチ”)

当時、私はよほどショックを受けたのかその記事を大切にしまっていました。そしてグレタさんを見た時、ハッと思い出してその記事を探し出しました。ありました!ありました!訴えている想いはほぼ変わらず、28年前と現在とでは少しもいい方向に向かっていません。

いえ、それどころか悪化の一途を辿っています。

あの時自分は確かに胸に痛みを感じて、そしてこの記事を大切にしまっていたのに、多分当時思ったことは、「私一人何かしたって仕方ない。自分のもっと先の世代の話だからまあいいや。」だったと思います。

気候変動の問題は本当に深刻です。私みたいな考えでこの数十年をみんながやり過ごせば、間違いなく今の子供が大人になる頃には、今以上にもっともっと暑い夏を過ごさなくてはならなくなります。台風の影響を世界で最も受ける日本は、相当な覚悟で子供達の未来を自然災害から守らないといけません。

そんなこんなでかなり反省した私は、2019年から生活を改め、なるべくCO2を排出しない生活をし、環境を守る活動をして行こうと決めました。


〈知ること〉

グレタトゥーンベリさんとこのセヴァン鈴木さんの話が重なって、ようやく自分ごととして気候変動に取り組むことを決意したはいいのですが、では一体に何をすればいいのだろう?
あまりに大きすぎるこの問題に、PTA活動すらろくにしない私に一体何が出来るのか。そもそも温暖化ってどういう事?なんで地球の平均気温が1.5度超えると問題なの?

そうだ、とにかく勉強しよう!もっとこの気候変動について知ろう!
‥と始めの一歩はまず「知ること」でした。そして一昨年の年末から、その類の講演会、勉強会にせっせと足を運びました。

最初に出会ったのがドイツ在住の谷口たかひささん。32歳の環境活動家で、たったの1ヶ月で47都道府県全てを回る勢いで講演してきた谷口さんのお話は本当に衝撃的でした。

ドイツの新聞では毎日のように気候変動の問題が取り上げられていて、コロナ前は子どもたちのデモ活動が盛んに行われていました。その一人、デモの主催者の14歳の女の子タラちゃんに、谷口さんがなぜこの活動をしたのか質問すると「大人たちは将来のために学校へ行って勉強をしなさいと言うけど、このまま行ったら私たちに将来は存在しない、選挙権もない私たちに出来ることはこれだけ」そう言って、国が真剣に気候変動対策に取り組む事を求めて学校ストライキをする様子がスライドに映し出されていました。他にもカナダの18歳前後の少女たちが子供を生まない宣言をしたり、250万人というとてつもない数のストライキデモが各地で行われている事実をそこで初めて知りました。


日本ではあまりピンと来ませんが、そういった国では学校で気候変動についてしっかり学びます。そのため、子供たちが当たり前に自分の将来に危機意識を持つんですね。
日本の親の心配ごとといえば未だ学校の成績や将来の就職?大人も子供も、何十年か先の地球を想像する力は、どうやらこの国にはなさそうです。私も気候変動が深刻になるのは何百年も先だと思って我知らずでしたし。

谷口さん曰く、欧米で教育で権利を学ぶが、日本は教育で義務を学ぶ。だから私たちは声を挙げることを知らない。

でもそれではダメなんです。それではこれからの時代を生き抜くことは出来ないと私は思っています。


〈気候変動は人為?〉

 気候変動とは、地球温暖化とその影響も含めた包括的な言葉。例えば大型台風、ハリケーン、洪水、干バツ、氷河融解、海水上昇など地球の平均気温上昇に伴って起きる異常な自然現象を指しています。

でもこれって今までも多かれ少なかれあったのではないでしょうか。地球そのものがごく自然に熱を帯びていく現象なのでは? いえいえ、これらすべて人間の活動が引き起こしているとはっきり言えるデータがあるのです。 もと南極観測隊の大岩根先生の講演でよく分かったのは、気候変動はとても複雑なシステムであるけれども自然は絶妙なバランスで平均気温を保ってきたこと。海流一つをとっても気温を低くする流れと高くする流れがあって、自然の営みが上手くバランスを取りながら、生物が生存可能な気温保ってきました。でも産業革命以降から明らかに異常な気温上昇を続けているのです。

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私の好きな絵本「地球はえらい」で書かれた地球の歴史カレンダーの喩えだと、1月1日に誕生した地球に生命が生まれたのが4月、生き物が増え出したのが11月半ば、ヒトの祖先が生まれたのが12月31日の午後8時、ヒトが文明をもったのが最後の1分、およそ1万年前のこと。そこから現在に至る最後の数秒間でいきなり異常な勢いで気温が上昇しているのです。




〈1.5度目標って?〉 

4/22のアースデーでは、日本でも若者が2030年までの削減目標62%を求めて抗議活動を行っています。 そんな事もあまりニュースにならない日本ですが、これ、やっぱり若者が声を上げるだけの根拠があるんです。2019年のグレタさんのスピーチ、私も正直後から調べてはっとしたのですが、本当によく理解している人って、じつはあまり多くないのではないでしょうか。 グレタさんはかなりきつい言葉を各国首脳に発して、怒った顔ばかりクローズアップされていましたが、大事なところは「今後10年間でCO2を半分にしようという一般的な考え方があります。しかし、それによって世界の気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は50%しかありません。」というところなのです。 えっ?って思いませんか?今回、菅さんが得意げに発表した日本の2030年までの排出量は2013年度比46%です。つまりグレタさんの言う一般的な考え方50%にも満たっておらず、さらに1.5度というグレタさんの言う温度(?)の実現には50%の可能性しかないと怒っているのです。 1.5度というのは地球の平均気温の上昇の上限をここまでに抑えたい、その目標です。 前回のお話で、地球のはじまりから現在までのほんの短い期間に、それまでずっと保ってきた平均気温が1度超えました。たったの1度で何だと思う方、自分の体温の感覚で理解されるとわかりやすいです。36度平均の人が37度になるとあれっ?って感じ。2度上がって38度だとどうですか?寝込みますね。それくらいの影響が地球に起こるということなのです。 


〈2度を超えるとどうなる?その先は?〉

気候変動というのは、要するに、何十億年もの間ある一定の幅で保たれてきた地球平均気温が、温室効果ガスCO2の影響で産業革命以降約200年前から急激に上昇している、それにより引き起こされる気候異常や自然災害のことを指しています。
さて、地球の平均気温の上昇を何とか1.5度までに抑える事が、全世界共通の目標である事をお伝えしました。
では、2度を超えるとどうなるか?今日はそのお話です。

まず、2度を超えるとこうなる事が予測されています。
①干ばつ 水不足で悩まされる人が今の2倍以上になる。食料不足、貧困になる人が数億人増える。農作物の受粉に必要な虫や植物の住処が半分以下になる。
②火災 熱波、森林火災による死亡者が増える。
③氷が溶ける 北極の氷が溶けて無くなる状態になる。海面上昇によりさらに1000万人の人々が移住を余儀なくされる。海水温度が上がり、珊瑚(CO2を吸収する)が壊滅。気候危機が更に加速。
④台風 気温の上昇で、大気に含まれる水蒸気の量が増えるため、豪雨、台風が頻繁に局所的に起こる。Global Risk Index という指標で日本は自然災害に対して危険な国第2位。

さらにその先は?

もし2度を超えると、温暖化の暴走、「ホットハウス・アース(温室地球)」が危惧されています。これは温暖化がドミノ倒し的に加速して後戻りできない現象です。その時点ではもう私たちが何をしても止める事はできません。南極の永久凍土が大量に溶けて、広範囲に渡って森林が死滅し、温暖化の歯止めは効かなくなります。つまりそれは人間が地球上の場所にも居住不可能になることを意味しています。そうなる前に、私たちは脱炭素化に向けてでできる限りのことをしなければならないのです。






「すること」

〈私たちにできること〉

IPCC(気候変動似関する政府間パネル)から2021年8月9日に「人間の活動の影響によって大気、海洋、陸地が温暖化していることは疑う余地がない」との発表がありました。今回の報告書で初めて、人間の活動が温暖化の要因であると言い切ったことで注目が集まりました。

気候温暖化が人為であることは疑うまでもなく、それはつまり私たちの力で阻止することもできるのです。それはとてもとても難しく、気が遠くなるほどの大きな変革が必要ですが、

それでも不可能ではないのです。

気候変動を危惧する世界中の活動家、科学者、専門家や企業が様々な試みをしています。気候変動対策はざっと挙げても100以上はあり、私たちは何から始めるべきなのか、何ができるのか知ることは容易ではありません。

では何をするべきか?

気候変動対策と聞いてまず浮かぶものを挙げてみましょう。
ゼロカーボン、再生可能エネルギー、エコバック、脱プラスチック、コンポスト、ゴミを減らす、フードロス‥などなどあちらこちらで聞きますね。でも一体何が一番効果的か、よく分からないと思います。

そこでまずは、地球温暖化阻止に必要な方策が何かを、客観的にざっくりと、NPOのClimate Interactiveとマサチューセッツ工科大が共同開発したen-roadsの最新版(2021年8月5日リリース)シミュレーターで見てみます。「en-roads」で検索すると誰でも試すことができます。言語も選択できます。

このシミュレーターは、COP26でも採用され、エネルギー及び気候変動政策の実施・強度を調整することで、2100年の段階で、温室効果ガスの排出量や大気濃度、気温上昇、海面上昇、経済などにどのような影響が出るかをシミュレーションできます。

世界のエネルギーミックス、カーボンプライシング、森林政策、炭素除去の技術開発などそれぞれの政策及び組み合わせのインパクトはどれくらいか?
気温上昇をパリ協定で合意した2度あるいは1.5度目標以内に抑えるにはどのような政策の組み合わせが有効か?
そんなことが分かります。
何の対策も行わない場合、2100年には3.6度の上昇を免れません。

例えば、今全世界で使われている化石燃料由来のエネルギーを自然エネルギーにした場合、何とか3.1度まで抑えられます。でもまだまだ足りません。

次に技術革新です。エネルギー対策として、ゼロカーボンに向けたさまざまな取り組みをすべてプラスしても0.1度マイナスです。全然足りません。
昨年12月、日本も国をあげてカーボンプライシング導入への検討を始めると発表がありましたが、それを世界中が本格導入した場合にやっと2.4度。

つまり現状では1.5度目標にたどり着くには、あらゆる施策を可能な限り全て実行していかなくては到底無理だという事になります。それだけシビアな現状をどれだけ日本の政治家が理解し、政治に反映しようとしているのか、疑問です。


https://en-roads.climateinteractive.org/scenario.html?v=21.8.0&lang=

何の対策も行わない場合、2100年には3.6度の上昇は免れません。

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例えば、今各国で行われている化石燃料由来のエネルギーから自然エネルギーへの変換をした場合。それを、↓このようにシュミレーションします

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何とか3.0度まで抑えられました。でもまだまだ足りません。次に技術革新です。エネルギー対策として、ゼロカーボンに向けたその他の取り組みをプラスすると


0.1度マイナスです。それでもまだまだ足りません。

昨年12月に、日本も国をあげてカーボンプライシング導入への検討を始めると発表がありましたが、それを世界中が本格導入した場合。

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さらに可能な限りのエネルギー政策をプラスすると、

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これで何とか2.2度まで下がりました。残りのすべての事をやってみて‥

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ようやく、目標値にたどり着きました。でも例えば右下の技術的な炭素除去など削減効果は高いですが、実際の技術運用まで追いついていません。



〈私の考える気候対策〉

これまで、気候変動の全体像を見てみました。気が遠くなるほど大きな課題に目をそらしたくなりますね。つまり、1.5度目標とは単に自然エネルギーに変換するだけでなく、カーボンプライシングつまりCO2に税金をかけたり、排出量の上限を決めて起業間で調整をしていく方向にシフトしなければならず、他にもありとあらゆる解決策を実践していく必要があります。そうやってCO2排出に重しをかけていくことで、脱炭素生活へ移行していく他ありません。今まで通り無尽蔵な物の生産と廃棄を繰り返す社会はあり得ないのです。

私は炭素税の価格を少しずつ上げて、その税収を国民に還元する炭素還元、クライメートインカムを推し進めて欲しいと思っています。
カナダや、オーストリアではこの方法で国民の生活をしっかり守られ、高い炭素税を払わないために企業はどんどんエネルギーシフトし、CO2排出を減らす努力をしています。この話はまた別のコラムで詳しく説明するとして、

最後に普段私が考えている気候変動との向き合い方4箇条を挙げて締めくくります。

①あまり深刻に悩まない。

②自分にできることは小さい。でも大きい。

③効率よくやる

④趣味にする

まずはこの4点を大事にしています。これが長続きの秘訣です。

①あまり深刻に悩まないことが一番大切です。どう考えればいいかというと、気候変動はものすごく長いスパンで危機状態になってきたので、個人の生き方がどうのという問題ではなく、人類の問題であるということ。自分を責めるものでもなければ全く関わりのないものでもない。それをいかに腑に落としていくかだと思うんです。

海外では気候心理学という分野もあり、この事実を受け止めきれない人々のために安心して不安や怒りなど、各々の思いを吐き出せるClimate Cafeという場があるそうです。特にこの事実を知った子供に多く見られる不安や抑うつ症状、またこのような状況にも関わらず真剣な対応をしない大人や政治への裏切りの気持ちが強く、私たち大人は、そういった感情をごくノーマルな症状として受け入れるようにしていく必要があります。

②自分が地球にこれまでしてきた責任も小さいし、個人が頑張って出来ることも地球規模で考えたらとても小さいけど、でもその小さい試みが広がるとそれは本当に大きな力になるということ。これは活動家谷口さんも言っていた、一人の100歩より百人の1歩の方がものすごく大きいということなんです。だから小さい1歩を少しずつやっていく気持ちを大切にしたいと思っています。

③効率よくやるというのは、例えば、電力を換えずに毎日毎日エコ生活にしのぎを削っている人より、何も生活を変えず何も関心を持っていなくても電力を自然エネルギーに切り替えた人の方がじつはよっぽどエコだという事。まだ自然エネルギーの方が若干割高なので、家計が気になる方が無理する必要はなく他の方法を選択すればいいし、面倒くさいけどまあ何かするかという人は是非電力を切り替えてほしい。全てが効率ではないけれど、こういう考え方も大切に思います。
私はたまにロビーイングに行っていますが、メール一つでも可能でです。いくつかひな形を用意して、暇なとき政治家に送信。返事が来ればラッキーくらいの感覚でやっています。政治は市民がクレーマーになってなんぼです。ママさん達も学校で止まらないで、

その先の自治体にももっと要望してもいいんです。

④これはまさに私の場合ですが、こんな事ばかり考えているうちに、ほとんど趣味みたくなってしまいました。実は最近、気候変動を阻止するための解決法カードゲームを開発しています。それ以外にも地元では気候変動対策協議会協議委員になって区の政策にも声をあげています。いつもいつも気候変動が阻止できた先の未来を想像して楽しんでいます。モノがいい形で世界を循環し、緑があらゆるところに増える。オフィス街でさえ、こんなビルだらけになるような!