見出し画像

#99 外的動機と内的動機

#98 子ども×経済学のつづきです。

このような子は、マシュマロテストのときにマシュマロを食べずに待っていられる子です。

つまり自己管理能力が高い子どもで、のちの人生を上手に設計できるわけです。そのような子は、親の過度な管理・干渉がなくとも優秀に育つ可能性が極めて高いのです。

お金の与え方


まず、お金の与え方には大まかに二通りあります。

ひとつは、結果にご褒美を与える方法と、過程にご褒美を与える方法です。

どちらも「ご褒美を与える」という意味では同じです。同じ投資額なわけですから一見同じ効果があるようにみえます。

多くの家庭では、「次の期末テストで良い点をとったらご褒美をあげる」や「この大会で表彰台に登れたらご褒美をあげよう」などと、結果にたいしてご褒美を与えることが多いと思います。

それを聞いた子どもは「よし、頑張るぞ!」といって、よい成績や結果を出すともあるでしょう。

それに対して後者の過程にご褒美を与える方法は、今日頑張って1時間本を読んだらご褒美をあげるや、休日に素振りを300回やったらご褒美をあげるといった感じです。

行なった行為自体に褒美を与える方法ですね。

前者も後者も同じ投資額と前提した上で、どちらが効果が高くなるでしょうか。

ハーバード大学のフライヤー教授は、ご褒美の因果効果を明らかにする研究を行いました。9.4億円を使い、約250校、小学2年生から中学3年生までの約3万6千人もの人が参加しました。

実験の内容は大きく2種類あり、ひとつはニューヨークやシカゴで行われ学力テストや通知表の成績などをよくすることにご褒美を与えるというものです。

もう1つは、ダラス・ワシントンDC・ヒューストンで行われ、こちらは本を読む、宿題を終える、学校にちゃんと出席するなどの行為にご褒美を与えます。

はたして2種類の実験のうちどちらがより効果があったのでしょうか。

 本を読んだり宿題を終えるだけでは必ずしも直接的に効果があるものではありません。それに対して結果にご褒美を与えることは直接的なので、より良い効果が期待されます。

しかし、学力テストの結果が良くなったのは、本を読んだり宿題を終えることにご褒美を与えた実験の方でした。

とくに、本を読むことにご褒美を与えられた子どもたちの学力の上昇は顕著でした(本を読む効果は『#75 個別社会と本の役割』を参照して下さい)。

では、なぜこのような結果になったのでしょうか。

 アウトプットにご褒美を与えるアプローチでは、良い結果を出さなくてはなりません。たとえ本人が限界まで努力しても結果が出なければ望みは叶いません。

それに対してインプットにご褒美を与えるアプローチでは、結果はどうあれ努力(過程)にご褒美が与えられます。

初めは学力テストの結果が出なくても、継続的にご褒美を与えられ少しづつ着実に学力は上昇していきます。

つまり、アウトプットにご褒美を与えるアプローチでは、高い壁にぶつかるとインセンティブが働かなくなり学力の上昇が望めなくなる可能性が高くなります(努力と結果の乖離が起きてくるとご褒美をもらえないわけですから当たり前ですね)。

また、アウトプットにご褒美を与えるアプローチでは、子ども自身が結果を出すための方法を構築または見つけださなくてはなりません。

これでは、子どものやる気がなくなるのも無理ありません。

例えば、アウトプットアプローチでは、木にリンゴがなっており、「あれを取れたら君にあげるよ」と言われるような感じです。

インプットアプローチでは、「頑張って木に30分間、登る努力をしたら、リンゴをあげるよ」という感じになります。

腕を伸ばせば届く程度の高さなら良いですが、木の上の方になっていたら誰もが諦めてしまうのではないでしょうか。

このように、ご褒美を与えるやり方にも、『やり方』があるのが理解できます。

親は子を想い、あの手この手で学力向上の手助けを行おうとしますが誤ったアプローチでは効果なく損失も大きいわけです。

そのため、子どもよりも先に親のほうが、子どもを教育するための努力をすることが必要だと思われます。

教育者の藤原和博氏は、自身が初の民間人校長をしたときに、教育すべきは子どもではなく親の方だと感じたそうです。

誤った価値観や先入観によって子どもの成長の妨げになっていることを発見し、子どもを育てるための親の教育を行ったそうです。

その結果、藤原氏が就任した学校の学力が著しく上昇してそうです。

願わくは、子を大切に想う両親には、子を育てるための知識の取得や努力をして欲しいものです。

では、良いお年を!         (^^)/

おわり


参考文献「学力の経済学 中室牧子著」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ももろ illustrator 絵本さん画像を使用させていただきました。

毎週金曜日に1話ずつ記事を書き続けていきますのでよろしくお願いします。
no.99 2021.12.31


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?