スキ:レモン

レモンが好き。

何が好きって、まず、酸っぱいところ。塩気のあるものになら、ほとんど何でも合うと思ってる。酸っぱさにもいろいろあるけど、レモンの酸っぱさはとても誠実だと思う。酢ってちょっと斜に構えてて、信用ならないじゃない。

すだちおろしうどんってやつがある。すだちはレモンじゃないけれど、味としては近い。あれは大きな発見だった。冷凍うどんはとても安くて美味しいので、必ず冷蔵庫の中にあるのだけれど、そのメニューを家に帰って再現してみると、すだちがない。すだちなんて家の冷蔵庫に置いてないよ普通。そうすると代わりになるのは、ポッカレモン。よく使うので大瓶を買ってある。これを、醤油と一緒に、うどんにかける。回しかけるのではなく、大根おろしの上からほぐすようにかけることが正しい作法だと思っている。これがすだちおろしうどんより、おいしい。

すだちはほんの少し甘味があるから、レモン果汁の方が鮮烈。僕はレモンの味が最も好きなのであって、絞るプロセスにさほど美味しさを感じていない。手がベタベタするし、飛び散るので、瓶のレモン汁がいいのだ。このレモン汁をかけた冷たいうどんがさっぱりしていて、かつ力強い塩気があって、とても美味しい。

今、僕の語彙の少なさを責めたな? 本当に好きなものの前では、言葉なんて意味を失うんだ。

レモンは味、見た目、利便性、どれをとっても素晴らしい。そりゃ梶井基次郎が、本屋に置いて爆破したくなるよね。匂いもいいし、色も美しいし、形も信じられないほど洗練されているから。

すだちおろしのせいで、僕は普通のかけうどんにもレモンを加えるようになってしまった。これは少々キモチワルがられる。新年に食べるやつ、餅の入ったダシ汁こと雑煮にもレモンは欠かせない。つまり、ダシとレモンが合うってことに気付いてしまったのだ。

パエリアにもレモンをかけるじゃない。魚のダシが効いている香ばしいお米に、レモンをたらすじゃない。最高の料理だよね。

シチリア産レモン使用とか書いてあると、シチリアの景色がみじんも浮かばないにもかかわらず、無意味に美味しそうと思ってしまう。もう呪文だな。

お酒に使うレモンはね、ちょっとグレたレモンだね。本当は彼も唐揚げやうどんにかけてもらいたかったはず。きっとそうだよ。きっとね。


それじゃあ、みんなの声を聞かせてよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?