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【Review】2021年J1第33節 川崎フロンターレVS.清水エスパルス「1-0でも課題を感じ要求し合うチーム」

はじめに

 2021年J1第33節の川崎フロンターレは、1-0で清水エスパルスに勝利しました。2試合連続の1-0での勝利からはリーグ終盤の緊迫した雰囲気を感じるとともに、優勝に向けて勝ち切るチームには慢心は見えません。

 ちなみにこの日の等々力の入場者数は11,576人で、今年初の1万人超えを記録しました。徐々に戻りつつあるJリーグの光景を守るためにも、サポーター全員でもう少し辛抱しましょう。

ボールを収めさせない

 ボール支配率61.1%が示すように、川崎のボール保持を中心に試合は進みました。逆にいえば清水はボールを保持できない展開で試合を進めてしまったのですが、その理由の一つが前線のボールキープです。
 清水の前線でボールを収める手段がサンタナのポストプレーと、藤本のライン間でのパス受けです。彼らにボールを渡すことを起点として、チーム全体で押し上げて攻めることを狙っていたように見えます。ただ川崎の好対応もあり、サンタナと藤本でボールを収めることができません

 まず川崎のサンタナへの対応は、常套手段ではありますが、高い最終ライン設定によるプレーエリアの限定です。鬼木監督が触れたように、序盤はラインを低くしてしまう場面もありましたが、前半の飲水タイム以降は高く保つことに成功します。

鬼木監督「立ち上がりは、9番のサンタナ選手(チアゴ サンタナ選手)に引っ張られて少しラインが上がらなかった。飲水タイムに確認し、そこのリスク管理をしてからは、安定してハーフコートで進められるような形になったと思います。」
(引用元:川崎フロンターレ「ゲーム記録:2021 J1リーグ 第33節 vs.清水エスパルス」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2021/j_league1/33.html>)

 ラインを高く保つことにより中盤の選手と近い位置で対応できるため、サンタナのプレーからゆとりを奪うことが可能です。サンタナがミスでボールを失う場面が何度かありましたが、こうした川崎の守備の影響が大きいと思われます。

 他方で藤本は川崎の上下左右のライン間でボールを受けようと細かくポジションを動かします。ただ川崎としてはこのやり方はだいぶ慣れてきた感じがあり、基本的には①出し手へのプレスと②3センターの守備範囲の広さで対応可能です。
 前線からの守備によって相手最終ラインの選手に余裕を持ったビルドアップをさせません。こうすることで出し手と受け手の意思疎通を阻害します。また、たとえパスを出されたとしても、アンカー+IHの3センターの選手の守備範囲が広いため、ある程度誘導がかかっていれば対応が可能です。(逆に言うと、この広い守備エリアを守れないと川崎の守備は一気に崩れます。)

 前線の起点の作り方に幅がなかったのが清水に対して気になったことです。たとえば川崎のハイラインを逆手に取り、藤本を裏に走らせる場面を増やしてもよかったと思います。また同時にサンタナにライン間で受ける役割を任せるなども方法としてはあった中で、後半途中まで大きな変更はありませんでした。この辺りがロティーナ監督のこだわりか、それとも現時点での戦術の幅の狭さなのかは、読み取ることはできませんでした。

ゴール前でも細かく繋げるか

 1-0での勝利は評価が中々難しく、「手堅く守り切った」とも「最小得点でなんとか逃げ切った」とも表現されます。ただ今の川崎にとっては理想に掲げている勝ち方ではなく、追加点を取った3-0が最も望ましいスコアになるでしょう。そう考えると優勝争いに向けて勝ったとはいえ、手放しで喜んではいけないのも事実で、山根が試合後に述べている課題は的を射ています。

山根「飲水タイムもあるので流れのなかで立て直していかなければと思うが、結果的に1点しか入っていないので自分としてはその後の押し込んでボールを握っている時間の方が気になっている。1-0だと最後はああいう展開になるし、何が起こるかわからない。もう少しゴールへのエネルギーを見せなければいけないと思うし、追加点が今のチームの課題だと思っている。」
(引用元:同上)

 この日の清水のようにゴール前にブロックを敷いてくる相手は比較的苦手としています。優勝に向けて勝ち星を重ねる中、今季の鬼木監督はこうした相手への対策に苦心し続けているように思います。
 鬼木監督としてはゴール前で細かく繋いで崩すことを基本方針として持っていると思います。だからこそまだ絶好調ではなくとも大島を徐々に起用したり、ダミアンに対しても細かい収めるプレーを要求しているのでしょう。

 実際、この日の唯一の得点も後半開始早々、清水が少しバタついたことに乗じたところからでした。川崎が意図して作った場面ではなかったと思うので、ラッキーに助けられたと言えるでしょう。
 ただ一方でブロックを敷いてくる相手であっても急所があることを示していた場面でもありました。清水は中央のスペース管理が上手い一方で、サイドチェンジ後の回復に弱点を持っていることが得点の場面で露わになりました。守備が整っている相手に対しては、こうした弱点を流れの中で見抜くことが必要なのだと思います。

個人事業主とはいえ

 最後に少し試合からは離れます。10年以上前から川崎を応援していますが、風間元監督以降はより一層好きになりました。理由は色々ありますが、その一つが選手に成長を求めるためです。元々は風間さん個人の思想だと思うのですが、それがクラブに浸透し、今でも感じ取れます。
 他クラブの雰囲気はわかりませんが、川崎の場合は風間元監督以降、選手の成長に対して公の場で触れることが増えた気がします。実際、この日の試合後コメントで鬼木監督もダミアンへの成長について触れており、チームの勝利に選手個人の成長が必要なのだと感じさせます。

鬼木監督「彼の一番良いのは、ボックス内でゴール前にいる。ゴールの匂いがするところにいるのは良いこと。しっかりと得点を取るのが彼の持ち味。それを続けて欲しい。欲を言えば、守備のところや強度、あとは細かい納めるところ。要求するところはたくさんある。要求しながら、伸ばしていきたいし、まだまだ成長してもらいたい選手の1人です。」
(引用元:同上)

 プロスポーツ選手はよく「個人事業主」と表現され、結果への責任は全て自分自身が背負い、そのための努力、つまり自身の成長に対しても責任を負うことが求められます
 しかし個人的には、選手個人の成長はクラブと半々くらいが適切だと感じています。なぜなら選手の成長をクラブの成績に結びつけることが必要なためです。個々人の成長が集団の結果に直結するとは限らず、だからこそ監督を含めたマネジメント層がチームビルディングに頭を悩ませているのです。
 もちろん成長せず、結果を残せなければクビになるのがプロスポーツの世界です。とはいえ成長に対してクラブが無責任な態度になってしまうと、どれだけ成長したとしても結果として現れません。
 どこまで詳細に関与するかはバランスだとは思いますが、少なくとも相手に成長の方向性を要求するのがスタートラインだと思います。だからこそ互いに要求し合っている内はクラブとしてもまだ大丈夫だと思っており、この日の鬼木監督のコメントからは安心を感じました。

おわりに

 特に触れませんでしたが、車屋と山村投入による試合クローズは安定感抜群で当たり前になりつつあります。1点差だと追いつかれる緊張感があるはずですが、彼らによって全サポーターの心臓への負担が減っています。感謝しましょう。

 この勝利で2位のマリノスとの勝点差は12となりました。残りは5試合ですので、次節勝点1以上差を付けることができれば優勝が決まります。幸いにも11/3は川崎、マリノスともに同時キックオフ(13:05)なので、試合終了とともに優勝がわかります。次節、2画面視聴必須ですね。

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