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漫画の続編制作のために、クラウドファンディングやりました。

こんばんは、清水しのと申します。2013年頃から色々流浪しながら描いている漫画家です。
昨年2018年夏に、連載デビュー作である『狼少年は嘘をつかない』の続きが描きたい!と突如思い立ち、クラウドファンディングという方法で制作資金を得て、昨年秋から続編制作をスタートさせました。

自費出版もクラウドファンディングも、やってみるとめちゃんこ大変ですが良いこともたくさんあったので、そもそもの経緯とともに、制作スタートまでのことをざっくり記録したいと思います。

漫画家を殺す無限ループ

2018年当時は2誌で連載をしていたのですが、作品の知名度は思うようには上がらず。SNSでバズる作品を横目に、今は目の前の作品をより良くすることに集中しよう、と黙々と原稿制作をしていました。

TwitterやPixivなど自作をアピールできる場所は増えましたが、連載中は如何せん時間が全然ないのです。(少なくとも私は)
毎日ガンガン漫画を上げている人や、毎回時事ネタを逃さず、それにちなんだイラストなどを上げている人を見ながら、何もできないのは本当に辛い…!本当に原稿作業だけで1日が過ぎていくのです。

私はそのうち、「時間ができたら絶対何かしたいけど、時間ができるのは連載が終わる時だからそんな時は来て欲しくない、でも何かしないと売れる気がしない!」という思考の無限ループに陥っていきました。
このループ、「焦りを煽るだけ&ダメだった時に自分を責める材料になる」ので本当に恐ろしいです。これは確実に現代の漫画家を殺すやつ…。

読者の存在確認がしたい

この時点で私は、自分の作品の読者がどこにいるのか(というかそもそもちゃんと一定数存在しているのかどうかも)全然わかっていなかったわけですが、もし自分の読者がどういう人たちでどこにいるのかわかっていれば、このループに陥らなくて済むのでは?とある時思ったのです。

宣伝活動といっても何をすればいいのかわからず、とにかくなんでもやったらいい気がして、でも当然全部はできなくて、結局何もできずに後悔してしまう。でも読者がどんな人か大まかにでもわかれば、宣伝活動も何をすればいいのかわかってくるはず…。最低限何をすればいいのかわかれば、こんなに焦ったり後悔したりしなくて済むんじゃないか?

そもそも、なぜ4年も前(2018年当時)に終わった作品の続きを描こうと思ったのか。それはこの、「読者の存在確認がしたい!」という気持ちからでした。

クラウドファンディングはぴったりだった

結局そうこうしているうちに2つの連載のうち1つが終了し、原稿作業以外のことをする時間ができたのでした。

どんな活動をしようか…となった時に、やっぱり自分の読者さんがどこにいるのか理解する、というのは必須に感じました。
連載中1番感じたのは、自分の作品を読みたいと思ってる読者に届いていない気がするということ。連載が終わってから「終わってたなんて知らなかった」という声をよく聞く、というのはTwitterなどで作家さんが呟いているのをよく見かけますが、私も何度かの連載でそういう経験をしていたのでした。

連載中、何もできないよ〜〜!と言っていた間、情報収集と人と知り合うことはしていたので(というかそれくらいしかできなかった…)そこで「自分の読者を探す」という目的を持って何人かの人にお話を聞き、出てきた選択肢の一つがクラウドファンディングでした。

クラウドファンディングは、自分の達成したいプロジェクトに支援を募るというもの。「この作品の続編が描きたい!」というプロジェクトなら、その作品を読んでくれていた人たち…つまり読者が支援してくれるということになります。これはつまり私が希望している「読者の存在確認」ができるのでは?しかも達成すれば「読みたい人に直接作品を届けられる」…。

クラウドファンディングは、読者を求めて彷徨っていた私にぴったりの方法だったのです。

▼『狼少年は嘘をつかない』最終話付近。だってこんないいところで終わってる………

当時応援してくれた読者さんにこの続きを届けたい…そしてあわよくば読者さんの存在を確認したい…!!!

クラウドファンディングでやるべきことが明確に

4年近くも前に終わった作品の続編を描くこと・その制作資金をクラウドファンディングで募ることの決めた私でしたが、やることはたくさんあります。その中で最重要なのが、当時の担当さんへ連絡すること。

権利関係などをクリアにするために当時の契約書を確認しながら担当さんに連絡しました。正直とても緊張した……。
でも担当さんは第一声が「おめでとう!」と言ってくれて、連載当時と変わらず応援してくれました。本当にめちゃくちゃ迅速にいろんなこと確認してくださいました。もう足を向けて寝れない…!

▼連載終了時の担当さんとの思い出。

クラウドファンディングを取り仕切ってくださったナンバーナインさんや当時所属していたマンガ新連載研究会(現在はマンガ技術研究会)の方々に助けていただきながら、毎日宣伝ツイートしていました。7月25日から8月29日まで毎日!

しかし、毎日何がしかの画像を作りTwitterにあげていくのは大変かと思いきや、労働的には思ったほど大変ではなかったのです。それはおそらく、この時の状態がまさに「最低限やることがわかっている状態」だったのかなと思うのです。
「クラウドファンディングの達成」という具体的なしかも期限付きの目的があったおかげで、今やるべきことがわかる…すると迷いは少なくなって気持ちは(比較的)晴れやかになるのです。

やっぱり人間、よくわからないゴールに向かって闇雲な努力を要求されると死ぬんだな…と実感しました。

結果、読者は本当にいたのか?

でも正直…クラウドファンディング期間中も、「本当に読者はいるのか?」という思いは消えませんでした。
4年も前の…拙いデビュー作で2巻で終わった作品をまだ覚えてくれている読者を探し当てるなんて、UMAとか都市伝説くらいの難易度なんじゃあ…??

いなかった時のこと考えると非常に怖かったので、その可能性は考えるのは極力やめました。そもそも、いるかいないかを確かめるためにやるのだし、いなかったらその時はその時でやれることがあるはず。

▼でも達成直前はやっぱりこういう感じ…。

残り3日でもまだ80%くらいで、達成できていなかったのですが、最終日1日前くらいで無事達成し、結果120%で達成できまして感無量でした。
読者はいました!!UMAでも都市伝説でもなかった…!!!

▼ダルマに目を入れました。

今後の予定と既刊のお知らせ

クラウドファンディング達成後は、支援者様向けのPDFデータを作成して各話送付しています。そちらは現時点で4話まで進んでいます。総ページ数120ページで1巻の電子書籍を出すので、そろそろSNSへの公開も解禁していこうと思います。
今後はnoteを中心にPixivやTwitterなどでも各話掲載していきます。

そして…クラウドファンディングはあくまで1巻の原稿料を募ったにすぎず、2巻以降も刊行していくには、1巻の売り上げを目標値超えなければいけません。つまり継続して宣伝活動なりしていく必要があるのですが、前ほど無限ループに悩まされることは減りました。

それはやっぱり、今まで曖昧だった「読者」さんのイメージが、クラウドファンディングを経たことで、多少なりとも具体化したというのが大きいと思います。
先に挙げた無限ループに陥っている作家様がもしいらっしゃったら、クラウドファンディングをお勧めします。UMAに…会えるから… 。

ちなみに『狼少年は嘘をつかない』は2巻まで出ていますが、紙の書籍は現在絶版しております。電子書籍のみ購入可能です。
続編『狼少年は嘘をつかないquestion』共々、どうぞよろしくお願いいたします〜!


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