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【小説】フラッシュバックデイズ 30話

この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

30話 シャキーン!

旅から戻って初めての週末。
テクノの友達のユウヤからパーティーの誘いの電話がなった。
場所は俺の部屋から徒歩圏内のお気に入りのレジャー施設の1Fにある「T」。
俺が留守にしていた間に「T」ではいつのまにかテクノのイベントも行うようになっていた。
断る理由もなく、勿論二つ返事でOKした。
テクノのパーティーは久しぶりだった。
手ぶらのシラフだったが、テクノなら知り合いだらけなのでなんとかなるだろう。
とりあえず酒でもと、カウンターに向かうと、さっそくユウヤにチルスペースで声を掛けられた。ユウヤはチュッパチャップスのミクちゃん、初めて会うミクちゃんの友達の可愛い女の子といた。
女の子との会話に飢えていた俺はフロアには行かずに旅の土産話をしていると、スキンヘッドの玉ちゃんがフロアに行こうと通りがかかった。サングラスの上からでもキまっているのがわかる引き攣った笑顔だ。
玉を譲ってもらおうと、呼び止めると、今は手元に無いという。
聞けばオランダ旅行を共にしたリノさんと中井姉さんがこのレジャー施設の上に宿をとっているらしく、そこにネタは置いてあるからそこに行ってくれとのことだった。

フロアに一歩も行くことなく「T」を後にし、駐車場入り口挟んだ螺旋階段へ、地下では今日もトランスのパーティーが行われているのだろう、ギャル男とギャルが数人突っ立っていた。2階のスナック街を横目に3Fのホテルへ。教わったホテルの部屋のドアをノックすると、リノさんが「お帰り」とハグで迎えてくれた。和室の部屋は数分前までクラブにいたとは思えないほど普通の部屋で、改めてこのレジャー施設の面白さを実感する。
レイブで知り合いのテントに来たような感覚だ。
部屋の中には中井姉さんと、見知らぬ男がいた。
座っていても長身だとわかる男はフミ君と呼ばれ、短髪で爽やかなな容姿で流暢な関西弁が大阪人とわかる。
初対面にもかかわらず、「聞いてるで、オランダ一緒にいったんやって?」
とフランクに接してくれた。
しばらく話しているとフミ君がリノさんと、中井姉さんに
「勧めてええかな?」と聞いていた。
俺が不思議そうな顔をしていると、中井姉さんが「嫌やったら構わんけど、興味あるなら”はやいの”吸ってみるか?」
”はやいの”=シャブ=覚せい剤。俺の頭の中ですぐに変換された。
少し躊躇した。
「興味はあるが、少しはまりそうで怖い」
正直に答えると、3人とも
「数回やったくらいではハマらないから大丈夫だ」と。
リノさんと、中井姉さんは信用できる。本当にヤバいものなら俺には勧めないはずだ。フミ君も悪い人ではなさそうだ。
俺は試してみることにした。
フミ君から小さな結晶が入ったガラスパイプを手渡された。
注射ではなくてホっとした。

ガラスパイプの先端の球状の部分を下からライターで炙ると結晶から白い煙が立ち上る。ガラスパイプの先端の球状の穴から煙が出ないように吸い込むとやや苦みのある味の煙が喉に吸いこまれていく。
マリファナと同じようにしっかりと肺で溜めてから吐き出す。

スーッと視界の靄が晴れ、全身を覆っていた薄い膜が剥がれていくかのように清涼感を感じた。
「どうや?」
「なんか、シャキーンッ!って感じです。」
3人は笑った。
「もう一服いいですか?」
フミ君は笑いながら頷く。
遠慮なく結晶をすべて煙にして肺に吸い込んだ。
スーッ、サーッと音をたてるように、心身ともにクリアーに、新しい自分になるような感覚。おはようございます。と思わず言いたくなる。覚醒。
覚せい剤。確かに覚せい剤だ。
「気持ち良いですね~」フミ君、姉二人はは良かったと嬉しそうだ。
フミ君にお金を支払おうとすると、「弟からお金はとれない」と断られた。
弟?と少し意味が分からなかったが、ありがたく奢られることにした。
もう少し吸ってみたかったが、リノさんからフロアに誘われたのでフミ君、中井姉さんを部屋に残し、外に出た。
意味もなく2Fのスナック街をうろついている時に、リノさんから中井姉さんとフミ君が付き合っている事を聞いた。
なるほど、弟か。 

フロアは人で溢れていた。
心身ともにクリアーに覚醒された俺には、無機質で単調なクリックテクノが心地良い。
何時間でも踊れそうだ。
フロアで再開する久しぶりのテクノ仲間立は揃いも揃って玉を食っている、幸せいっぱいの顔で皆にハグされた。
今は何時だろう?フロアを見渡すと人は減るどころか、熱気を増している。
にわかでは辿り着けないこのアンダーグラウンドな遊び場を楽しむように皆踊っていた。

つづく

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