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わたしの最高裁判決につきまして


支援者ならびに関係者の皆様


本日、わたしの女性器アート事件の最高裁の判決がおりました。結果は、わたしの上告棄却という、残念なものとなりました。控訴審の東京高等裁判所にて、作品展示に関しては無罪判決が確定していたものの、残りの罪状についても、当然、無罪であると信じておりましたので、納得がいきません。



わたしは、「女性器はなぜ、卑猥なものとされ、タブーとされるのか?」と疑問を持ち、そんな女性器のイメージを覆すべく、かわいく、面白く、笑えるような作品作りをして参りました。そして、裁判では「わたしの体の一部である女性器は、当然にわいせつであると判定されるべきではない」と主張し、わたしの体をモチーフにした物をわたし自身が表現する自由を奪う警察や司法に対し、異議を申し立てて来ました。しかし、最高裁は、結局「女性器だからわいせつ」という、従来の古臭い価値基準から全く抜け出せなかった様です。
わたしは、単に「女性器の3Dデータをやみくもに頒布したい」のではなく、プロジェクトアートの一環として頒布したのであり、全体を通してわいせつ性があるかどうかを判断して欲しいと願いましたが、それすらも叶いませんでした。
わたしの体を元にして作ったアート(デコまん)は無罪でありながら、わたしのこの体(3Dデータ)がわいせつとされるのは、なんとも奇妙な話ですし、先進欧米諸国では、男女問わず、性器をモチーフにしたアート表現で逮捕勾留されることなど殆どないのに、2020年にもなって、非常に時代錯誤な判決だと思います。ここまで支えて下さった弁護団の先生方や支援者の皆様のご協力や努力が、完全には実らなかった事に、申し訳なさで一杯です。



しかしながら、わたしは、敢えてこの判決を「歴史的判決」であると申します。
刑法175条について最高裁で判決が出る事例は非常に珍しい事で、そんな中、全てについて、無罪は勝ち取れなかったものの、控訴審では、デコまん作品展示について無罪が確定しましたので、わたしの事件は日本のわいせつ裁判の歴史に必ず残る事でしょう。
また、普通なら、逮捕された人はその後の活動も萎縮してしまうものかもしれませんが、わたしは今、初心に返った様な清々しさと創作意欲でみなぎっております。2014年の二度の逮捕以前はどこか中途半端に生きて来たわたしでしたが、塀の中での厳しい警察の尋問によって精神や忍耐力が大いに鍛えられ、表現の自由の大切さも身をもって実感することができました。逮捕の報道が海外に及んだ事で、良き伴侶や子宝にも恵まれました。
この体験を「ワイセツって何ですか?」という漫画にしたところ、英語訳、フランス語訳、スペイン語訳本が出版され、世界に作品を発表する事ができました。さらに、「世界の闘う5人の女性」の一人として、わたしの活動を取り上げた、スイス人監督によるドキュメンタリー映画「Female Pleasure」は、ロカルノ映画祭でThe Premio Zonta Club Locarno 2018 を受賞しました。
3Dデータで女性器のボートを作った際は、わたし自身にはその技術がなかったものの、せっかくだからマスターしたいと思って勉強を初め、50歳を前にして、3D技術のスキルを身につけることも出来ました。その新作は、新宿眼科画廊というギャラリーで開催中の「バーストジェネレーション:死とSEX展」にて7月22日まで展示予定ですので、よろしければ遊びにいらしてください。
警察には、本来なら罰金刑で済むはずの軽罪なのに、不当に身柄を長期勾留された為、当初は恨む気持ちもありましたが、普通に生きていたら滅多にできない経験をわたしに与えてくれたという意味で、今は感謝しております。わたしがこのアートを真剣に始めたきっかけも、誹謗中傷やバッシングを某インターネット掲示板で大量に受けたからなのですが、仮に無罪になれば、嬉しい反面、わたしが闘うものが全くなくなってしまいます。わたしは、個人を押さえつける権力や組織や集団の圧力の理不尽さに、作品を通して抗う事が、本当に好きなのだと思います。もはやライフワークなのです。



そんな訳で、わたしは活動を自粛することなく、今後も新作発表など創作活動にますます勤しむ所存ですし、今回の判決に至る過程において、幸せな事が沢山舞い込みました為、そういう意味でも、わたしにとって今回の判決は「歴史的判決」であると自負いたします。



つきましては、支援者の皆様へのささやかなお礼として、3Dまんこちゃんデータを制作しました。下記URLからダウンロードしてお楽しみいただく事ができます。どうぞご笑納ください。
https://bit.ly/2W9AD2Khttps://bit.ly/2W9AD2K(*8月15日まで有効)



2020年7月16日    ろくでなし子こと五十嵐恵





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