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~まもなく、リンパ輸注~

戻りたくなくて仕方なかった大学病院に入院して、数日が経つ。

精神的にどうなのかと自分に聞いてみれば「早く帰りたい」ばかりが聞こえてくるのは、紛れもない真実であろう。

ただ、あくまでも入院して治療することを選んだのは過去の自分であり、治療による効果にももちろん期待している。

…自分勝手と言われればそれまでであるが、今の純粋な気持ちは「一刻も早く帰りたい」である。

▼ 自分との約束

想定で一ヶ月程度と言われた入院を少しでも有意義に過ごすために、自分なりにいくつかのルールを定めた。

・ とにかく歩く
・ 食事計画
・ スケジュール通りの行動
・ 思考を無駄にしない
・ 感情を表に出さない

少しでも万全な状態で治療を迎え、1日でも早く退院することを目的としている。

・とにかく歩く

歩くことの効果についてはいろいろと言われているが、自分としても体力の維持や時間潰しとして病院内を徘徊することにしている。

もちろん「出来る時」にという限定がつくのであるが、運動も兼ねてなるべくこれは継続していこうと思う。

人が「どれくらい歩くと健康にいいのかどうか」については様々な説があるが、とりあえず自分の体力と相談して1日に5,000歩程度をひとつの目安としている。

朝6時に起床して6時30分から30分、夕食を摂り終わって7時30分から30分。人の少ない病院を徘徊すれば、おそらく5,000歩は達成出来るのではないかと思われる。

歩きながら色々なことを考えたり整理したりして、心のチューニングもしていこうと思う。…まあ繰り返しにはなるがあくまで「歩けたら」の話ではあるが。

・食事計画

食事は当然病院食が主体にはなるが、病院食が口に合わなくなる事も想定済みで厳しすぎず緩すぎずの食事管理を自分なりにしていくつもりである。

3食のうち朝食を完全に欠食として、コンビニ内である程度栄養素のバランスを考えた購入を予定している。

…厳密にやり過ぎるとストレスになるので、時折好きなものを少し食べたりということはやっていこうと思う。

・ナッツ
・バナナ
・ヨーグルト
・豆乳

…こんな感じの朝食を30日間毎日続けられるとは自分でも思ってはいない。自分には厳しすぎず甘すぎず、時々は好きなモノを摂取したい。

・スケジュール計画

今回の治療は、それほどスケジュール的に毎日やらなければいけないことが決まっているわけではなさそうである。

そのため、一日のスケジュールをある程度決めて守っていくことを予定している。

・人の少ない時間帯に歩くこと
・時間のある時に書き物をすること
・PC作業を早い時間に切り上げ、しっかりとした睡眠をとること

こういったところが治療にどれほどプラスの影響を与えるのか論理的には説明出来ないだろうが、自分との約束を守っていくことで治療に良い影響が出る…と信じている。

・思考を無駄にしない

孤独な時間は、良いことでも悪いことでもとにかく考える。

そうなることが過去の傾向からも非常に多いわけで、同じ考えをぐるぐるぐるぐる巡らせることも当然ある。

そのためそれをしっかりと整理してまとめていこうと思う。Noteやブログに記載する材料にもなりうるわけだし、自己の安定を保つためにも必要な行為であると考えている。

実際散歩をしながらでも色々なことを考えるので、思いついたことがあれば立ち止まりメモを残すようにしている。

「このメモがどこかで意味を成してくれれば…」と思うのであるが、今の時点ではどうなるかは何とも申し上げられない。

・感情を表に出さない

「感情」や「論理」を使って自分の意見を通したとしても『何も意味がない』とこの病院内で自分は強く悟っている。

そこに労力をかけるぐらいであるならば、感情を飲み込んでしまった方が自分にとっては精神衛生上良さそうなのでなるべくこのようにしていこうと思う。

論破してどんなに相手に考えを改めさせたとしてもそれは私のモヤモヤした感情が少し晴れるだけであり、それほど意味がないことを再入院で改めて悟った。

それでも自分を貫くことも考えたが、結局大事なことは『一日でも早く無事に帰ること』であり、それ以外のことはなるべく「どうでもいい」と解釈をした。

遠くから達観して相手を見つめようと思う。
※大学病院の全ての人が悪い人ではありません。いい人ももちろんいます(少数ですが)。

▼入院後の経過

大まかな検査は地元の病院でしてきてあるので、大学病院での検査はあくまでいくつかに限られた。

15日に入院をして19日の午前中に弟から細胞を採取、そして19日の午後から私の体に規定量の1/10の細胞を投与するという予定が組まれている。

そして体の反応を見て約1週間経過したのちに、規定量の細胞を投与し経過観察が行われる…というのが説明された流れである。

これを数回繰り返して、既定の効果や想定の結果が認められた時に退院となる予定である。

…かなり流動的で、どうなるのか分からないのではあるが。

・PICCを入れる

病院にもよると思うのだが、身体に細胞や治療薬を入れるときに処置が行われる。私の経験上では首からが最も多いのであるが、鎖骨や右腕、足の付け根などさまざまな箇所から管を装着することになる。

今回は二の腕の内側(二頭筋の下あたり)に管を指すPICCが選択された。

地元の病院で明確な理由もなく装着され、治療中数週間血が止まらなかったことから好きではない処置である。

※当時の記事はコチラ

だが今回はそれが最も適している点や、過去に血が止まらなかった可能性をいくつか示してくれてそこをしっかりと対処するという説明があった。

結果的に今時点ではPICCを入れて特に異常や不快感はないので、PICCが悪いのではなく地元の新任医師の処置のよるものだと勝手ながら思っている。

ここから弟の細胞が私の中に入ることになる。

・放射線の照射

私の現在の悪性リンパ腫の腫瘍が認められているのは、左足のふくらはぎのみである。抗がん剤の服用で一部に縮小の効果が出ているが、残存する箇所は当然残る。

そこに対して放射線を部分照射し、相応の効果を見込んでいるそうだ。さらにはアブスコパル効果というものに期待をしているという説明もあった。

私の解釈としてはメインというよりかはプラスアルファの効果ではあるが、可能性が広がることにとっては喜ばしいと考えている。

過度の期待はしないものの、私の病気が治る可能性が広がることを嬉しく思いたい。

・アブスコパル効果

放射線治療の際に、放射線を照射したがんだけでなく、放射線が直接当たっていないがん(他の場所に転移しているがんなど)にも同様の効果が得られるというもの。

・放射線をがんに照射すると、がんの組織の一部分が壊れて死滅する。その際に、死滅した細胞の中から出てきたたんぱく質や細胞の情報を特殊な細胞が察知する。

・この細胞が体内で発見した異物(がんなど)の特徴を覚え、リンパ節に移動したのちにT細胞に異物の特徴を伝え、T細胞にその異物を攻撃するよう命令する。

・細胞から得た情報を頼りにT細胞は異物除去に向かうため、離れた場所にあるがんにも治療効果が得られる。

…というのが私なりのまとめである。

良いことばかり書いているが、実際にはそこまで起きうることが少ない様に感じている。

確率的には後で振り返ってみれば、結果的に「アブスコパル効果だった」という程度の温度感でいいのではないかと思う。

病巣の疑いが既にあるのであれば、二次的なアブスコパル効果に期待するのではなく明確に病巣に働きかける治療の方が望ましいと言えるであろう。

▼ さいごに

治療に臨みたくないと何度も書いているが、根本にある気持ちは正直それほど変わらない。やっぱり治療はしたくない。早く帰りたい。

「じゃあ治療をやめればいい」

ともっともらしい意見もあるだろうが、過去の自分や支えてくれている多くの人たちに恩返しがしたい。

多分その気持ちの方が強いからこそ、この治療を受けるのだと考えている。

私は人に恵まれているし、選択をすることも出来る。このことがどれほど幸せなのか、病室で日々噛みしめている…。


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