第10回: ハラールエキスポジャパン2016

2016年11月29日掲載

先週22日と23日の2日間に渡りHALAL EXPO JAPAN 2016が開催されました。過去2回の幕張メッセから場所を移し、今年は「ムスリム(イスラム教徒)対応が最も進んでいる街」東京・浅草が舞台となりました。今回はこのイベントを通じて、日本のハラール市場にどういう変化が起こっているのかに注目してみましょう。

飲食店舗も攻勢に出始めた国内市場

まずご紹介するデータは「エキスポ出展者数と業種の推移」(*)です。これは過去3回に渡るエキスポ出展者の数と、その業種による内訳を示したもので、2014年から2015年にかけて5%と微増だった出展者数が2016年に67%増と大きく増加したことが確認できます。それではシェアが多い順に見てみましょう。

第10回_図_スクショ

最大シェアの食品関連では飲食店舗の出展が増えました。過去2回は最終製品の輸出を目指す企業が多かったのですが、今年はインバウンド対応として出展した企業が多く、中でも飲食店舗の増加が目立ちました。店舗としてはハラール認証は取得していないが、食材は全てハラールに対応、メニューも英語化しており、ムスリム客が重視するプレイヤー(お祈り)スペースも完備している、といった飲食店が精力的にセールスしていました。
 
「ハラール餃子」で一躍有名になった栃木県佐野市の「日光軒」や、「自分で作れるハラールたこ焼き」として人気上昇中の大阪市「祭」などが出展し、普段は現地に行かないと楽しめない味を会場で再現して人気を博していました。またハラールメニューのレシピ紹介やライブクッキングで来日した海外料理人との交流など、エキスポならではのネットワーキングが繰り広げられました。フランチャイズ展開のチャンスや提携先を探していた企業・店舗にとってもビジネスマッチングの機会になったようです。

ヒジャブを「羽織る・まとう」という発想

今年一番注目されたのは化粧品・美容・装飾品・ファッションです。日本初となるムスリムファッションショーを目玉に、英国人ブロガーによるヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭にかぶるスカーフ)のスタイリングセッション、カラーコーディネートセッション、肌に模様を描くヘナタトゥーの実演などはどれも女性客で埋まり、日本人には馴染みのない新しいスタイルに注目が集まりました。
 
実際、エキスポ会場は、ファッションショーの影響もあって例年以上に女性客の比率が高くなりました。日本人来場者の多くが初めて見るムスリムファッションはどれも華やかで、しかし日本人モデルを起用したことから予想以上に意外性はなく、日常的に取り入られるヒントも少なくなかったようです。例えばヒジャブは元来「覆う・隠す」目的で使用されるものですが、ショーやセッションを観た観客からは「羽織る・まとう」という使い方が日本人には合うのではないかとの声が聞かれました。従来、ヒジャブには比較的重いイメージがありましたが、一転して明るく軽く捉えられたようです。

さながら各地のハラール物産展に
 
3番目に出展が多かったのは行政・地域・その他サービスです。徳島県や千葉市といった自治体による出展のほかに、地域名を冠した団体が北海道、帯広、石巻、両毛(栃木県)、関西、鹿児島から共同ブースで出展していました。2〜3のブースの中に10 社以上が共同で出展している様子は、個々の店舗や企業といった「点」ではなく、インバウンドに必須といわれる複数による「面」での広域連携の実例を示したものでした。まだ「ハラールとは」という入門編のセミナーが行われている地方都市が多い中で、こうした先行組は着実にムスリム対応を進めていることを印象付けました。
 
共同ブース以外の特徴としては、地元の学生が応援に加わっていたことがあります。過去2回はムスリムの外国人留学生が売り子や通訳として活躍していましたが、今年は日本人学生とムスリム留学生が一緒になって地元のPRに努めていました。ある日本人学生によると、今回参加したのは、イスラム文化や宗教に関心があり、卒業研究でハラールをテーマにするための調査の一環だということでした。確かにハラールメディアジャパンにも「ハラールを卒業研究のテーマにするので話を聞かせて欲しい」といった問い合わせや、インターン志望者が増えています。学生の中でもハラールはちょっとしたブームになっているようです。
 
3年目の開催となったこのイベントは、日本国内でハラールのサプライチェーンが確実に拡大していることを内外に示したものとなりました。海外からの来場者は「日本を含む東アジアは今後、最も伸びるハラール市場だ」と感じ、日本の来場者は「ムスリムインバウンド」に注目しています。来年のHALAL EXPO JAPAN 2017は5月に大阪、11月に東京での開催が決定します。ハラール対応でどんな進展があるのか、東京五輪が開催され大勢のムスリムの来日が予想される20年までのファイナルカウントダウンを感じさせてくれることでしょう。

*14年と15年はJAPAN HALAL EXPO 2014, 2015、2016年はHALAL EXPO JAPAN 2016での実績

掲載紙面PDF版のダウンロードは以下から。https://fooddiversity.today/wp-content/uploads/2016/11/NNA_SG_161129.pdf

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