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天空橋が降りる夜

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児童文学風の創作小説「天空橋が降りる夜」をまとめております。
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記事一覧

小説⑨「天空橋が降りる夜」全9話

小説⑨「天空橋が降りる夜」全9話

 横たわる身体に感じる痛みと共に、デイビーは身に起こった事の全てを思い出した。ぴくりと手が動くと、覚醒を促すように閉じていた瞼がぴくりと震える。

 ああ、そうか。僕はベッドに横になっているんだ。

 身体を包んでいる温もり、背中に感じるベッドの感触。母が作った枕は、相変わらず頭の部分が沈み過ぎていて、耳まで汗をかいているかのように感じた。全身が鉛のように重く、ようやく毛布の中で動いた指先は、何か

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小説⑧「天空橋が降りる夜」全9話

小説⑧「天空橋が降りる夜」全9話

 誰かのためにあれるような、父さんみたいな優しい人になりたい。

 デイビーがそう思ったのは、山羊の話を終え、父が家の中へと入っていったあとの事だった。

 ずいぶんと落ちつきを取り戻していた彼は、すぐに腹を立てる事からやめようと決心し、父と母が家の中にいる事を確認してそのまま家を出た。

 成人の儀の準備で村は活気付き、通りには荷物を持って行き交う人々や、何かを作っている男達で溢れ返っていた

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小説⑦「天空橋が降りる夜」全9話

小説⑦「天空橋が降りる夜」全9話

「この声、本当にあのおじいさんなの?」

 そう尋ねてみると、青年は下を見つめた、どこか考えるようなぼんやりとした表情で「あのご老人だね」と独り言のように呟いて、黙り込む。

 その時、雲の下で鈍く硬い音が響いてくるのをデイビーは聞いた。二人の真下というわけではないその音が、雲全体に響き渡って、少しずつ音を強めて反響していく。

 歯を食いしばるような短いうめき声が、時々聞こえた。同じ頻度で、雷の

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小説⑥「天空橋が降りる夜」全9話

小説⑥「天空橋が降りる夜」全9話

 静まり返った雲の上には、白銀の椅子が五つ並んでいた。

 頭上には、深い青のような星空がある。宝石のように輝く大小様々な星が、無限に広がっていて、どこまでも続く雲の層の上にはデイビーと青年だけが立っていた。

 おや。僕はいつの間に、ここに立っているのだろう。

 デイビーは、ぼんやりとそんな事を思った。自分で登って来た事を思い出しながら星を眺め「星に一番近いところだ」と見惚れた声を上げれば、隣

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小説⑤「天空橋が降りる夜」全9話

小説⑤「天空橋が降りる夜」全9話

 デイビーは、とても楽しくて仕方がなかった。身体がとても軽く、まるで浮いた身体を梯子に掛けた手でそっと上へ押し上げているように、するすると白銀の梯子を登っていく。

 青年と同じようにずっと手足を動かしていたが、ちっとも疲れは感じなかった。相変わらず青年の足音はしなかったが、デイビーもまた、するするとした響きを発するだけで、初めの頃のような堅苦しい音を上げる事はもうなかった。

「見てご覧、デイビ

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小説④「天空橋が降りる夜」全9話

小説④「天空橋が降りる夜」全9話

 不意に、ごーん、と頭を強く打たれるような轟音がした。

 ハッ、としてデイビーは飛び起きた。まるで「起きろ!」と一喝されたような目覚めに、彼は弾かれるように上体を起こして思わず「はい!」と答えた自分の声で、我に返った。

 そこには、秋の肌寒い風が吹いていた。

 そよそよと流れを作る草原の真ん中で、デイビーは辺りを見回した。

 辺りには民家の一つも見えず、立ち上がってぐるりと見回しても、草原

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小説③「天空橋が降りる夜」全9話

小説③「天空橋が降りる夜」全9話

 成人の儀を翌日に控えると、小さな村は活気に満ちた。

 この時ばかりと着飾り、家を出て少女達が華やかな声で会話をするのを、年頃の少年達が熱い視線で見つめている。成人の儀を終えると結婚も出来るので、そわそわし出す少年達もいるのだ。

 逆に、少年達を見て話をする少女達もいた。特に、今年の成人の儀で一番男前のオーティスには、ずっと少女達の熱い視線が向けられ続けていた。彼の場合、少年達からは憧れるよう

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小説②「天空橋が降りる夜」全9話

小説②「天空橋が降りる夜」全9話

「もう少しで成人の儀だ。お前さん達には、きっと沢山の仕事が見つかるだろう」

 成人の儀まで数日に迫ったある日、十六歳になったデイビー達は広場に集められた。村長は一人一人に言葉を送りながら、大人になっていく少年達のために、今日で最後となる教えを説いた。

 中でも村長は、デイビーには立ち向かう勇気と優しさが、オーティスは勇気と力強さがあると褒めた。特にオーティスは「先頭に立ち、皆を引っ張っていくリ

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小説①「天空橋が降りる夜」全9話

小説①「天空橋が降りる夜」全9話

 十六歳を迎えるデイビーは、村一番の登り名人だった。

 たった一つの山と、幹がしっかりとした太い木々が、少しあるばかりの小さな村の端。そこにぽつりとある小屋に、小さな牛飼い業を営む両親と共に彼は暮らしていた。

 彼は、成人の儀を迎える十六歳にしては細く華奢だった。数少ない同じ年頃の少年達からは「へろへろとして、今にも風に倒れんばかりの木だ」と馬鹿にされていた。

 それでも、村の大切な仕事の一

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