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輝き


8/14〜8/17の日記
(「ときめき」のつづき)


8/14(水)の日記

6時起床。社会人になり、早寝早起きが私たちのリズムになった。夜通し散歩していた1年前とは違うけれど、うっすらと明るい部屋で各々がスマホを触りながらぽつぽつ話したりちょっかいをかけたりする時間も1年前と等しく好きだ。

「俺がもし〇〇(下品でここには書けないけれど最低なこと)してたらどうする?」と聞かれ、「嫌だし信頼もなくすけど簡単に離れることを決められないと思う」と答えると、以前の私からの「もし浮気したらどうする?」という問いに即答で「別れるよ」と答えていた彼が「俺も今はそうかも、簡単に別れられないよ」と言った。つまりそれくらい大切で大事で大好きということなのだけれど、彼の人生に影響を与えていることを実感した。これからも幸せばかりを与えたい。彼を幸せにしたいよ。


朝の支度を済ませて近所のベーグル屋さんで朝食を摂る。小さなお店には素朴ながらも美味しそうなベーグルやマフィンが並んでいた。あさのあつこの小説に、高貴な身分から転落した主人公の母親が下町でパン屋を始める場面があるけれど、そのパン屋が実際にあったならこういう雰囲気なのだろうなと思った。シナモンとレーズンのベーグルとポピーシードのマフィンを選んだ。当たり前みたいに彼と一口ずつ交換した。休日の朝にパン屋さんに行くことは幸福の実体に限りなく近く、歳を取っても続けられそうな習慣でありがたい。


この日は世田谷の等々力渓谷へ。乗り換えで降りた自由が丘で「この街は「自由」だからね、法とかないから気をつけてね」と彼がありえない嘘を真面目な顔をして話すので「駅員さんとか全裸なの?」と乗ってみたら、しばらく無法の街自由が丘の話が続いた。しょうもないけれど、しょうもなくて楽しい。等々力渓谷は倒木があったらしく、大半の部分が封鎖されていたため、甘味処にあんみつを食べに来た人みたいになってしまった。メインの予定がダメになっても少しも不機嫌にならないどころか一緒にそれを楽しんでくれる彼と恋人同士になれてほんとうに良かった。


メインの予定が巻いたため、勢いで横浜に行った。彼と横浜に行くことには何となく意味があるような気がして、どんな意味があるのかと言われたらわからないけれどそれでも一緒に横浜に行けるのが嬉しかった。電車からは多摩川が見えた。何をしに来たでもないけれど、横浜は風が強く、暑く、夏の街の匂いがした。都会だけれど道が広くて嬉しい。赤レンガ倉庫の前で浮かれた写真を撮ったり、中華街で暑さに死にそうになりながら小籠包を食べたりした。今度は冬に来て観覧車に乗りたい、いや、絶対に実現するぞとひとりで決めた。東京へ戻る電車からも同じように多摩川が見えた。彼がうとうとしていて、その首が私の右肩に乗ることを期待したけれど彼はすぐに目覚めてしまった。


夕方にはスタバのロースタリーへ。中目黒にあるロースタリーは日本で唯一スタバのコーヒー豆を焙煎している場所であり、簡単に言えばスペシャルなスタバなのだ。アルバイト時代から憧れ続けていたこの場所限定のコーヒー豆で淹れたコーヒーを何種類も飲ませてくれた先輩には今でも頭が上がらない。完全に私の趣味なのに付き合ってくれる彼にも頭が上がらない。


かなり悩んだけれど、すっきりしたものが飲みたかったので2階のティバーナでトロピカルティーを注文した。ハーブ系の紅茶にスイカの風味が加わっていて、コアメニューであるパッションティーの進化版のようでかなり美味しかった。浴びるように飲みたいくらいハマってしまい、口から感想が止まらず、途中で「我々は麦茶を飲んでいる場合ではない」「飲むという行為を雑に扱っていないか」など、彼に問題提起までしてしまったような気がする。何を言っても「そうだね」「なるほどね」と優しく全てを聞き、私の興奮を受け止めてくれた彼には感謝しかない。ここにも定期的に来たい。かなり混雑していて落ち着きは少ないけれど、誇りを持って働く人々に囲まれて質の高い飲み物を大切に飲む時間を持ちたいと思った。




夜は彼が武蔵野うどんを食べに連れて行ってくれた。コシがあるというよりもラーメンでいうところの粉落としという感じで今まで食べたうどんの中でいちばん固かった。つけ汁につけて食べるうどんは新鮮で美味しかったのだけれど、とにかく固くて食べ応えがあった。ストレスが溜まったときにそれを発散出来そうなくらい固かった。でもまた食べたいと思う自分もいる。筋トレに近い食事のあとは池袋のジュンク堂へ。オモコロチャンネルにも出ていた書店に来れて嬉しかった。都会の大型書店にちゃんと人がたくさんいるのが嬉しい。嘘みたいに綺麗な電光掲示板に映像の流れる街にも、モノクロの紙の世界を見たがっている人がいる。



帰宅し、変なダンスを踊ったりメロンソーダを飲んだりして就寝。今日も楽しかった。今日も楽しかったなと思って眠りにつけて嬉しい。


8/15(木)


6時起床。仕事の彼を見送り二度寝。8時半起床。この日はひたすらに彼の家で寛いで過ごした。若干の家事だけをし、残りの時間はYouTubeを見ていたら終わった。東京にまで来てこれでいいのかと自問するときもあるけれど、どこにいたって私は私なので。


仕事終わりの彼と、写ルンですの現像を終えたものを受け取りに向かう。私の方はすでに広島で現像を終えてデータも写真も持っていた。何が撮れたかわからないワクワクとドキドキと写真を持って喫茶店でオムライスを食べた。彼がニヤニヤして「そのまま動かないで」と私の写真を撮った。何かついてたのかな、と思い見せてもらうと、私の後ろにあった観葉植物がちょうど重なって頭から生えているようになっていた。黄色のワンピースを着ていたのもあってまるでパイナップルのようであった。小さな奇跡がおもしろくて、笑ってくれている彼がありがたくて、到着したオムライスは素朴でありながら安心感のある美味しさで、全部幸せな空間だった。


明日は台風の予報になっていたため、巣篭もりするためのあれこれを買って帰宅。思いきってドンキでたこ焼き器を買った。スーパーでお酒やお菓子を調達し、重たいビニール袋を半分ずつ持って歩く。いちばん重たいものは彼が持ってくれていた。私が黄色のワンピースだからとうもろこしを持たされる時間などもあり幸福だった。明日台風が来るとは思えないほど穏やかな夜。家に着いて、お互いの撮ったフィルムを見せ合った。彼の撮った私は幸福そうで、撮られたときの小さな会話を思い出して頬がほころんだ。チャミスルの紅茶割りを飲んで真っ赤になった彼を愛でて就寝。


8/16(金)の日記

朝目覚めると静かな雨が降っていた。強い風雨は夜中のうちに済んだみたいで、彼の家が吹き飛ばされなかったことを喜んだ。買い忘れたものを近所のスーパーまで買いに行った。二人暮らしみたいで嬉しい。朝食にはホットケーキを焼き、昨日のうちに買っておいたチョコレート菓子やホイップクリームでデコレーションした。彼が私のホットケーキにホイップで何かを描こうとしていたので「うんち描くつもりでしょ」と言ったが彼が描いてくれたのはハートだった。自分の子どもっぽさを恥じ、お詫びに彼のホットケーキに「LOVE」と書いた。


今日のためにボードゲームやパズルを買うことも考えたけれどあまりピンとくるものがなく(彼は「仕事しながらSwitch買っちゃっても良いなと思ったんだよね」とまで言ってくれた)結局家で遊ぶようなものは何もなかった。それでもYouTubeを流し見しながらダラダラと話しているだけで時間が過ぎた。雨の日の過ごし方としてかなり正解だった気がする。結局は隣に座ってたくさん話せたらそれが幸福の形なのだろう。


昼食にはたこ焼きをした。昨日買ったばかりのたこ焼き器でどんどん焼く。かなり美味しく焼けたし、かなり楽しかった。焼肉やお鍋、たこ焼きをしているときにのみ生じる「育てる」という言葉がおもしろいなと思う。これから食べるもの(焼肉の場合は肉を、鍋の場合は食べようとしている食材のことを)が食べ頃になるまで見守ることを「育てる」と言う。これから食べるのに。育ったところを食べるのに...

リーゼントバイキンマンが私、赤ちゃんマンが彼


気づけば2時間ほどたこ焼きパーティーをしていたらしい。この日もお昼寝してしまったような、寝なかったような、もう既に記憶が薄れかけている。彼としか出来ないおふざけをしていたらあっという間に1日が終わった。夜は夏野菜の天ぷらを作ったけれど、とうもろこしが爆発して、それに驚いた私が生地をおおこぼしして2人とも戦意を喪失して途中で揚げるのを諦めたのも良い思い出だな。私たちは丸亀製麺では働けない。


終わりの匂いがする。明日帰らなくてはならない事実に蓋をするように瞼を閉じて眠った。今度目が覚めても、また今日が始まればいいのにな。



8/17(土)の日記


5時半起床。この日は彼は仕事で、私は実家へと帰る。新幹線の時間に余裕があったため、彼を職場の最寄り駅まで送ってから東京駅へ戻ることにした。


いつもいつも、私の重たいキャリーケースを持ってくれている。今日なんてこれから仕事だというのに、階段しかない駅のホームを上ったり下ったりしてくれている。愛を感じる。電車は空いていて、ゆっくりとした時間が流れていたけれど、最寄り駅にはあっという間に着いてしまった。何度経験しても別れ際は寂しい。一目につかない程度にぎゅっとして、彼が行ってくるね、ありがとうね、気をつけてね、と職場の方向へ向かう。見えなくなるまで彼を見ていたら、彼が小走りで戻ってきてもう一度私のことをぎゅっとした。彼が泣いているところを初めて見た。泣いちゃうくらいの思い出が出来た夏だった。夏は嫌いで、汗もいやで、日焼けも無理なのに、ずっと楽しかった。出会って一年、あの日声をかけて本当に良かったな。次の季節も一緒に過ごすんだから!絶対

彼が買ってくれた、彼とお揃いのmojojojo

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