いま働いている人に最長片道切符の旅は実現できるのか?

管理人よりご挨拶


ご無沙汰しております。
コロナ感染症が流行をはじめて2年が経ちました。今後予想される状況を考えると旅行の推進・促進みたいなことは憚られる側面もありまして更新を中断しておりました。

とはいえ、そうしている間にも鉄道を取り巻く状況はやはり変化するわけでそれは最長片道切符にも当てはまります。今年2022年は西九州新幹線の開業も控えておりまして、ゴールが2022年秋以降ながらく有名だった肥前山口駅から変わることでしょう。そのあたりの話題はまた後日ということにいたします。 

また最長片道切符の基本情報をまとめた投稿も2019年に初稿をアップして以来、それほど拡散してきませんでしたが累計で3万人近い方にお読みいただいております。お礼申し上げます。
これまでも資料提供などで数名の方のご旅行の準備に協力してきました。加えてこの1年でも投稿お読みいただき参考になさった結果、無事に旅ができたという方がいらしてます。お力になれたようでしたら幸いです。

1. 今回の話題~ 働いている人にできるのか?


基本情報の投稿を前提として、最長片道切符ってどういう人がチャレンジしてきたのか?

ぼくがチャレンジしたときは学生でした。

恐らくぼくが一番よく把握しているケースが「学生(高等教育機関に通学あるいは専門学校生)」であること。続いて仕事をリタイアされた方が新しい挑戦として取り組むケースが考えられます。あるいは仕事を休職・離職中の方。そして、スーツ氏(※最長往復)や西園寺氏などのYoutuberで旅行し動画をアップすることで収益を上げることのできる人ですね。あとは旅行作家(宮脇俊三氏)や俳優(NHKの帯番組×関口知宏氏)が挑んだ例が有名です。

それでは「働いていたら最長片道切符での旅行など不可能に決まっている」のでしょうか?それが今回のnoteでの本題になります。

2. 有効期限と横一線の争い

○考える上での条件

乗車券には有効期間があります。近距離でしたら1日で中距離だったら数日~1週間程度、乗車券を使って移動する距離が延びるとそれだけ乗車券が使える日数が長くなるというのが乗車券の大前提です。

ちなみに2022年現在のJR版最長片道切符ですと55日となりまして、7週間弱つまり1ヶ月半余りの有効期間が与えられます。IGR版であれば56日になりちょうど7週間です(※)。いずれの場合でも通しで旅行した場合、早めに移動して20日代後半、観光しながらのんびりまわって40-50日前後となります。大学生ならそれくらいの時間を捻出できる人は一定数いらっしゃるんだと思います。
※JR版とIGR版ということは現状、最長片道切符のルートが複数あり得ることになるのですが違いやその経緯については以下の投稿をご覧ください。

しかし、働いている人は通しで30日というのがなかなか難しいところです。そういえば、海外の某国々では「バカンス」という概念がありまして長期休暇を確保できるそうで、国内でもそういう概念が広がるとこんなこと議論しなくてよいのですが。
将来的に働いている人でも長期休暇を取得しやすくなることを期待しますが、数年内に実現するということはかなり難しいと思います。そのため、以下ではフルタイムで働いていることを前提に考えてみようと思うのです。

そうすると、以下の点を踏まえる必要があります。
①通しでぶち抜き30連休はできないため、仕事休み・連休・有給休暇を活用して分割実施する。
②働きながらになるため、7週間弱の有効期間のうち実際に活用できる時間は半分か半分以下になる。
③その残された時間が少ないとゴールできない。
④ゴールできたとしても観光する時間などが十分にとれるとは限らない。

補足すると、実際に旅行するなら例えばですがぼくが札幌在住なので札幌発前提で考えると・・・
最初の週末で北海道の稚内~札幌を旅する
→次の週末+有給休暇を活用して札幌~仙台までを走破し札幌へ帰宅
→さらにその次の週末で札幌から仙台に戻って続きの旅をする・・・
みたいな感じで途中まで進めるたびに一旦戻る。またその次の週末に前回まで進んだところに戻って旅を再開するといったことになりますね。

それでやっていて、有効期限内に肥前山口まで行ってゴールできるのかというのが大きな問題となります。

○モデルケースの想定
このnoteでは網羅的に検討することはしません。する必要がないからです。
現時点で先ほども述べた通り、早めにめぐった人が20日代後半つまり4週間くらいの時間が必要でした。もっとも、最速ペースということではなかったのですが、4週間28日程度で早めだったということになるのですから、これが半分の時間で行けるということには多分ならないだろうことは予測がつきます。
また過去にぼくもだいたいの計算で最速で何日かかるか調べてみたことがあるのですがやっぱり2週間では無理でした。途中離脱がない前提で計算してもです。

なので週休2日で7週間の場合、14日間の休暇があるはずですがもしこの日数しか休暇が得られなかった場合は現状ゴールするのは不可能です。
したがって、有効期限内にゴールできるには14日間に加えてさらに日数が必要になるため
・有給休暇をほぼ希望通り取得できること
・土曜休日が休みになるか、出勤したら必ずその分の代休がもらえることあるいはシフト上で土日出勤の代わりに水木休みといった対応が取れること

以上の条件は確保できる場合を考えてみようと思います。
※一概にとまではいえないかもしれませんが、休日・休暇出勤が重なり実質6勤1休や7勤0休になるとか有給休暇を希望しても全く取れないとかいった状況でしたら働いている人・事業主双方あまり持続可能性のない状況に陥っている可能性があると考えます。そのあたりの社会的な条件については、今後改善が必要であると個人的には考えますが、そのあたりの議論についてはこれ以上立ち入りません。今後より専門知識を持った方も含めた議論の経過を見守りたいと思います。

3. モデルケース~札幌発で2022年10月スタートの場合


秋には西九州新幹線が開業しますので、最後のほうは変わってきますが一応ルートが変わらなかった前提で考えてみようと思います。
まずは札幌発(東京発よりアクセスが悪い)で大型連休を抱えていないという条件でやってみます。

1日目 10月8日(土)
※札幌→稚内(特急宗谷)でスタート地点へ移動
稚内17:44→新旭川(旭川まで乗り越し21:26/特急宗谷)
2日目 10月9日(日)
新旭川(旭川8:35特急オホーツク)→網走→釧路→帯広20:31
3日目 10月10日(月祝)
帯広(6:51)→新得→代行バス・根室線→富良野→旭川→岩見沢
→室蘭線経由沼ノ端16:23→札幌17:57

4日目 10月14日(金) ※有給1日目
札幌(10:13)→小樽→倶知安経由長万部→北斗12号→森
→16:20発渡島砂原経由→新函館北斗→はやぶさ44号→新青森→川部19:00
5日目 10月15日(土)
川部7:03発→五能線→東能代→秋田11:45→坂町15:59→米沢→山形20:13
6日目 10月16日(日)
山形7:01発→新庄→大曲9:38→秋田新幹線→盛岡10:49→快速はまゆり
→新花巻→東北新幹線→北上13:30→一ノ関16時ごろ
※一ノ関から仙台空港経由で札幌へ

7日目 10月22日(土)
※前日夜の最終便にて仙台へ戻る。一ノ関(新幹線で7:12着)から再開する。
一ノ関7:18発→気仙沼→BRT→柳津11:14→前谷地11:51→石巻12:23
→塩釜14:34→小牛田15:20→古川15:35→東北新幹線→福島→岩沼
→いわき21:43
8日目 10月23日(日)
いわき6:42→郡山→会津若松→新津12:26→信越線→長岡→上越新幹線
→新潟14:47→柏崎18:01→宮内19:03
9日目 10月24日(月) ※有給2日目
宮内7:32→越後川口経由飯山線→飯山10:01→北陸新幹線
→糸魚川10:58→松本16:20→長野17:50→北陸新幹線にて高崎19:10
※一旦新幹線で東京まで乗り越したうえで東京羽田より札幌へ引き上げ


10日目 10月29日(土)
※前日最終便にて東京へ戻り、前日終電または当日始発にて高崎へ戻る
高崎6:58→上越新幹線→越後湯沢→上越線→新前橋→小山11:23→黒磯13:13
→安積永盛→水戸19:06→新松戸・武蔵野線・南浦和・赤羽・池袋→山手線経由で秋葉原(都内に入れる)

11日目 10月30日(日)
秋葉原から総武線・佐倉→成田線経由→松岸→総武線経由で成東→大網→外房線・内房線→京葉線にて東京→神田→中央線にて西国分寺→武蔵野線・埼京線で大宮
※東京より札幌へ空路で戻る

12日目 11月2日(水)
※当日夜JAL526で東京経由で大宮へ
大宮23:25→東北新幹線→熊谷→倉賀野0:33

13日目 11月3日(木祝)
倉賀野6:35→八高線→高麗川→拝島8:47→立川9:02→武蔵小杉10:56
→乗り換え11分にて東海道線→品川11:17→川崎11:36→尻手11:48
→浜川崎12:00→鶴見12:27→根岸線経由で大船13:15(休憩約1時間)
→国府津14:41→沼津→富士(休憩1時間半)→甲府20:01(特急ふじかわ)
→かいじ56号(特急)→八王子21:05→22時頃新横浜着

14日目 11月4日(金) ※有給3日目
新横浜6:00→東海道新幹線→小田原→熱海→三島7:01
→東海道新幹線→静岡7:47→浜松→豊橋9:58→いなじ1号・普通列車
→岡谷15:55→特急あずさ29号→塩尻→特急しなの20号→名古屋19:07
→1時間休憩後関西本線へ→亀山→松阪22:44

15日目 11月5日(土)
松阪9:16→特急南紀1号→紀伊勝浦→普通&くろしお24号→和歌山15:48
→橋本→高田→桜井線経由で奈良18:34→大和路快速にて関西線・環状線
→大阪19:39→京橋→片町線→木津21:23

16日目 11月6日(日)
木津5:52→加茂→柘植→山科8:53→(京都にて乗り換え)特急サンダーバード
→敦賀10:34(近江塩津乗り換えのところ特例乗車)→特急しらさぎ6号
→岐阜→特急ひだ11号→富山16:42
※富山よりANA東京行き最終便+乗り継ぎで札幌へ戻る

17日目 11月12日(土)
※午前中に札幌から富山までの直行便にて。バスに乗り継ぎ13:08富山着。
富山13:16→北陸新幹線→金沢→しらさぎorサンダーバード→敦賀
→東舞鶴17:41→綾部→京都19:13→ひかり521号→西明石→尼崎21:13
→特急こうのとり→福知山23:01

18日目 11月13日(日)
福知山6:08→豊岡→浜坂→鳥取10:34→1時間半休憩→智頭→東津山13:58
→佐用15:30
※スーパーはくとにて大阪へ&伊丹空港から札幌へ戻る

19日目 11月18日(金) ※有給4日目
※前日夜に東京へ移動しさらに当日朝に岡山空港へ。
→岡山11:05発特急スーパーいなばにて佐用へ
佐用13:04→播磨新宮→姫路14:05→山陽本線(スーパーはくと&いなば)
→岡山15:45→津山17:57→新見19:40→特急やくも→倉敷21:24
20日目 11月19日(土)
倉敷7:01→糸崎→呉線経由→広→広島10:53→三次12:59→備後落合
→備中神代15:51→米子→特急まつかぜ→益田21:24
21日目 11月20日(日)
益田6:28→新山口8:52→宇部→宇部新川10:01(乗り換え3時間待ち)
→小野田13:38→厚狭13:46

※宇部空港から東京経由で札幌へ戻る

22日目 11月26日(土)
※前日夜に空路で東京へ。当日朝宇部空港より宇部新川入り。
厚狭13:31→長門市→下関17:25→門司→小倉18:01→特急ソニック
→大分→特急にちりん→宮崎23:39
23日目 11月27日(日)
宮崎5:51→特急きりしま→都城→吉松→隼人10:02→鹿児島中央
→川内12:19→九州新幹線→新八代13:28→熊本→久留米15:40
→夜明→彦山→添田→田川後藤寺19:44→新飯塚→直方→折尾21:26
→特急にちりんシーガイア・快速→吉塚22:15
24日目 11月28日(月) ※有給5日目
吉塚6:39→桂川→原田8:02→博多8:50→新鳥栖9:20→特急みどり
→早岐11:10→シーサイドライナー→諫早→特急かもめ20号
→肥前山口13:26
※夕方便にて福岡→東京→札幌と乗り継いで終了

4. 結論

有給休暇を5日設けましたが(実は11月23日の勤労感謝の日をうまく活用できれば4日)、10月8日に稚内をスタートして11月28日にゴールすることになります。空の便に大きな欠航がでないことが前提とはなりますが、切符の有効期間が10月8日からだとすると、12月1日がタイムリミットとなります。よって有効期間内最後の週末を活用してギリギリでタイムリミットをクリアできるということになります。

地方都市である札幌発でクリアできるのであれば、東京発ならさらに余裕を持たせてクリアできることになります(あるいはさらに有給休暇取得日数を削減できる)。
名古屋・大阪発でもゴールできる可能性が期待できるでしょう。ただし名古屋以西では東北まで乗り換えなしで行けない場合がありますので、東北までの日程をどう設定するかが焦点になります。東京発は最初の北海道の旅程で躓かなければあとは新幹線・飛行機で進んだ箇所まで行き帰りは難しくないはずです。

もっとも途中下車して観光などに費やせるのが合計5回あるかどうかとなります。ほとんどの時間を移動に費やすことになります。「これで物足りない」と思うか、車窓で楽しめばいいと思うか、もう数日旅行できる日を調達してくるかあるいはタイムリミットとのゲーム感覚で楽しんでみるか・・・
以上の情報に基づいて「旅行として成立しうるか?/しえないか?」判断するのは読み手の皆様ご自身ということになります。

また、今回のモデルケースは途中でのアクシデント(天候不良・災害・体調の変動)を考慮しておりません。その点はくれぐれもご注意ください。

最後にもう一度まとめると、理論上タイムリミットまでに旅程を消化することは不可能とまでは言えません。チャンスはあります。しかしそうした旅行が旅行としてありなのかどうか、改良の余地があるかどうかというのがその先の問題として浮上してくるといえるでしょう。

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