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透明日記「猫と川を眺める」 2024/10/30

朝、生ゴミを捨てる。

蓋の付いたカップのような灰皿。入り口が狭い。タバコ一本分の太さの穴が空いている。その穴は短い筒のようになっていて、最近、よく詰まる。すとんと落ちない。タバコの熱で溶けたのか、筒の下の方がゆるく膨らんでいる。

蓋にヒビが入っているのも気になる。穴が微妙に斜めになって、落ちにくくなっているのではないかと。毎回、枝のようなお香の棒でつついて落とす。落ちないときもある。

生ゴミを捨てるときに、タバコが穴に挟まっているので、一悶着ある。いつか灰皿を探しに行こうと思う。

生ゴミを捨てに行くと、鳥が鳴いている。ギヨー、ギヨーという、大きな声が方々から聞こえる。楽しそうだ。

家で少し英語をして、一昨日のカレーとヨーグルト、グレープフルーツとバナナを食べる。バナナはまだ少し硬く、歯応えがあった。

昼から遊びに行こうと思って、店に電話をすると、繋がらない。個人ラインで電話をしても繋がらない。さては寝てるな。と思い、遊びをひとつ諦める。

マンションの踊り場でタバコを吸う。部屋で戻るとき、廊下から一羽のスズメがアンテナの上で鳴くのが見えた。遠くに向かって、おーい、おーいと一生懸命に鳴く。スズメの声を聞くことは多いけど、あんなふうに一生懸命に鳴いているときもあるのかと思うと、聞き方が変わる。

家で過ごしていると、店の人からラインが来ていた。明日行くと伝える。

昼、一昨日のカレーにかつお節をかけて食べる。和風。

それからまた英語を少しして、三時半ごろ、散歩に出かける。空が広くて気持ちがいい。

昨日の雨で、川の水が多い。重たく、のそのそと流れているように見える。変化の少ない川面が一様に流れているので、ベルトコンベアーを感じる。水が多いと、あまり鳥がいない。たまにゴミが流れゆく。

それでも、カモはいた。小さな群れがポツポツ見られる。土手にはセキレイがチッチと舌打ちしながら、飛んだり歩いたりする。

大きな空を吸いながら、しばらく歩く。土手の地面、背の低い草の生えたところに、黒猫が小さく伏せって休んでいる。

川中の石の段々で水が砕ける。その延長線上の対岸で、シラサギがじいっと川を眺めている。ベルトコンベアーで流れてくるものを検査しているようだった。こっち側の土手に階段がある。階段にしゃがんで、ベルトコンベアーを眺めることにした。

川はのっぺりとしているようで、石の段々の向こうに行くと、ざらざら小さく波打つ。柔らかい光に濡れて、静かに、ざらざらとしている。

近くでキジバトが地面をつついていた。首を上げ下げ、こっくんこっくん。見ていると首が痛くなりそうなほど、何度もやる。雑念がないのがこわい。

空が広くて気持ちがいい。南西で、太陽が分厚い雲に隠れていた。黄色い日の光が、雲の端から漏れる。淡い、小さな虹も見える。

分厚い雲は、大きな鳥が翼を広げているような形だった。その姿を印象付けるように、薄い雲が太い筋となって、放射状に伸びる。空全体が、いつもより大きく感じられる。

西の空を、薄い雲が水平に伸びている。すうっと、息を飲むような鋭さで、眺めていると、澄んだ心地が湧いてくる。

太い筋のいくつかは、ぽろぽろぽろぽろ、うろこ状。ぼうっと空を眺めていると、目がへんになり、空が平面のように見えた。うろこ雲は東に行くほど、輪郭が曖昧になり、端の方の一群は淡く、他の薄雲に溶けていた。

シラサギはじいっと川を眺める。飽きて腰を上げ、黒猫の元へ行く。猫は階段に移動していた。階段に近づくと、ニャーと言う。近くにしゃがむと寄ってくる。撫でてやる。枯れた草の茎や砂やら、体にいっぱいついて、きたない。少し前にあった顔の怪我が治って、顔がきれくなっていた。

撫でるのをやめると、猫も隣にしゃがむ。猫の背中に手を置く。猫と一緒に川を眺めると、時間がゆったりと流れる。一人でいるときよりも時間が貴重なものに思えるからか、ゆったりとして、落ち着く。

川を眺めていると、近くに三羽のカモが飛び降りた。飛び降りざまにグァーと鳴く。グァーと鳴いたなと猫に言うと、こっちを見上げてニャーと言う。言葉が分かるらしい。夕方にエサをやるおっちゃんが来ていたことがあったので、そろそろおっちゃん来るんちゃう?と言うと、こっちを見てニャアニャアと二度鳴く。やっぱり、分かっているらしい。

猫がごろんと横に伸びたので、その背中を撫でようとすると、前足を伸ばして払われた。寝転ぶと触ってはいけないらしい。しばらく猫と過ごし、土手を帰る。

カフェで昨日の作業の続きをする。大体仕上がったので、明日から絵を考えようと思う。

帰り道、折坂悠太の『たむけ』を頭から流していると、歩く速度がどんどん遅くなる。とぼとぼと歩いて帰る。家に近づくと、もう少し聴いていたいような気分になり、ローソンで一服する。一服して、いつもは道路を渡るところ、信号まで歩いて赤信号で止まる。信号で止まるのが嬉しい。一曲分ぐらい、赤で止まっていてもいい気分だった。

そういえば、今日、片手で振り回せるぐらいの、小さな机が届いた。持ち回りが良いので、使いやすい。軽い力でカーペットの上をすいすいと滑るところも良い。地べたの人間には心強い。

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