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透明日記「空を師匠と呼び始める」 2023/09/11

最近、日本史と海洋学に関する本を読んでいる。

古代から中世への移行期、武士の登場する辺り。社会秩序と人間の意識の変容期。日本史の中世は外圧に依らない、内部からの変容と捉えられるらしく、特殊な現象だという。通史の冒頭で、ここら辺の発展過程の研究が、民族の運命を考える上で大変な意義があることが告げられていた。それを読んで、歴史学者の立場を感じるとともに、大きなことを言うもんだなあと思った。民族の運命という大きさは、星の生き死にぐらい壮大で、なんかスケール感が清々しい。

大きなものは清々しい。ファーっと心が広がる思いがする。海洋学なんていうのもそうだ。5千トンやら5万トンの観測船、高さ5メートル、重さ2トンの観測装置、日に数百万の運航費、数十メガパスカルの水圧。観測が始まれば、海と空だけの世界で数十日。数値で表されるあらゆるものが桁違いだ。地球を相手にするサイズ感をひしひしと感じられる。

そういうものを見ると、日頃のこせこせした思考の数々がアホらしく感じる。人と人とが醸し出す、回りくどい心の働きようもバカバカしい。空とか海がそうするように、ファーっと広い心で考えたり喋ったりをしていたいものだ。広さゆえにアホみたいで、広さゆえに聡明な、あの方々のように。

海と空とを、理想的な心の在り方と考えて、師匠と呼ぼう。身近に海はいらっしゃらないから、空を見上げて「ししょー」と言おう。たまには、そこにあることを知っていながら、「やっ、これはこれは、お師匠様ではありませんか」と戯けをこいたりしてみよう。

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