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誰かの働く姿が、わたしの一部になる。おろすんジャーのこと。

昨日、久しぶりに「ベビーカー おろすんジャー」からLINEが来た。お正月って、そういうところがある。

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↑ふつう、親御さんはこんなあやしい覆面に子どもを撫でさせない。町で親しまれている、ほんとうに。

東京都の杉並区、メトロの丸ノ内線の最果て、方南町。この町に住んでるときに知り合った、覆面ヒーロー。ちょっと仲良くなって、インタビューしてこんな記事も書いた。

まだ方南町駅が、地上からホームまでに階段しかなかったころ。彼は「シャイだから」という理由で全身タイツに身を包み、「困っている人がいるから」というシンプルな理由でベビーカーの上げ下ろしのボランティアをはじめた。

それを8年以上(いまだともう10年以上かな)やっている。いまも階段だけの出口に、立ち続けている。そうした活動を続けて、町に溶け込んだ。いまではお祭りも主催して、子どもたちのためになることを日々楽しんで実行している。

わたしには、なにひとつ真似できない。それに絶対に全身タイツは着ない。一生、絶対に。

おろすんさん(って呼んでる)から「波佐見町行ってみたいなー」と年始の挨拶にあわせて気軽なLINEが来たので、「私服だったら!!!」と返事をしたら「私服というか皮膚だけど、全身緑で行くね!」とのこと。

ヒーローの全身タイツが皮膚だったら、つまり全裸だからすぐ通報したい。

とにかく全身タイツで波佐見には来ないでほしい。わたしが波佐見町の人たちにどれだけ心配されるか考えてみてください。「あの緑の人、くりたさんの知り合いね?」と言われてなんて説明したらいいの? おろすんジャーの説明をするのがいかに大変か、Twitterの140文字なんかじゃおさまらないことも理解してほしい。

でも。わたしはほんとうに、おろすんさんを尊敬している。

自分が楽しんで、それでいて周りの人にも楽しんでもらえることを、ずっと続けている。そういう働き方、住んでいる場所への根のおろし方は、なかなかできない。自分の損得じゃないところで、ひたむきに行動する人柄で、いろんな人が周りに集まる。

おろすんさんは全身緑じゃないときだって、雨の日の配達には率先して行く。力仕事も進んでやる。いつも明るく笑顔で大きな声を出す。みんなのためにちょっとふざけている。サービス精神おばけみたいな人だ。

なんだか、これまで会ったことのない人だった。あらゆる意味で。

出会ったのは、ちょうどわたしがコピーライターをやめて、これからどう働いていくか考えている時期だった。

書く仕事を続けるのか、まったく別の仕事もありなのか。都心なのか、地方なのか。心の揺れを見定めながら、いろんなことを一旦リセットして考えているときに出会ったうちのひとりが、おろすんさんだった。

こういう生き方も、あるんだなあ。しみじみ世界の広さを感じた。おろすんさんはじめ、方南町の人たちは、ユニークでどこかクレイジーで、おもしろい。

わたしは長崎県波佐見町に住みはじめて、波佐見が大好きになったわけだけど、東京の方南町だってすごく好きだ。たまに商店街のいろんな人たちの顔を思い浮かべて「元気かなあ」と思う。できればちょくちょく帰りたい。

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働くってことを、若いときはものすごく狭い範囲で考えていた。それが、いろんな人と出会ってだんだん広がってきた。

おろすんさんをはじめ、方南町で自由に必死に、スマートじゃないかもしれないけど楽しく働いてる人たちが、わたしの「働く」にも影響している気がする。

今年はゆっくり行きたいなあ、方南町へ!

なんか杵募集してるみたいなので、もし我こそはという方がいたら連絡してあげてください。

30minutes note No.934

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