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「自分だけの武器を持て」って言われて帰ってきたお兄さんとの対話。

「くりちゃん、自分だけの武器ってあります?」と仲よしのお兄さんから急に問いかけられる。「えっ」と作業の手を止めるわたし。どうやら、出先で熱く『自分だけの武器』について語られたらしいのだ。

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こんにちは、こんばんは。くりたまきです。

『自分だけの武器』について語ってきた人は、一度は廃業したものの、新しくユニークな商品を開発して、それが現在軌道に乗っている。まさにオリジナリティのある、武器を持つ人だ。

ユニークな商品をつくれれば、価格競争も起きにくいし、話題性があるぶん広告費も少なく済み、問屋いらず。無理せずきちんと稼ぐこともできる。

紆余曲折、悔しい思いもして武器を手に入れたその人は、お兄さんに『自分だけの武器を持たねば』と熱く語ってきたのだという。それがもとで、note冒頭の質問が出てきたというわけ。

「くりちゃん、自分だけの武器ってあります?」

こちとら、丸腰である。でも考えてみる。わたしだけの武器。

「波佐見に住んでるってことじゃないですかね。焼きものって、ちょっと覗いただけじゃわからないことがたくさんあるから、何度でもとことん話を聞ける環境で記事を書けるのはうれしいです」

たとえば、焼きものを大量生産するために必要な「型」をつくる型屋さんを取材したときのこと。

最終的に、前後編の記事にしたのだけど、最初に取材にうかがったのは後編に出てくる型屋さんだった。そこで話を聞いて、しつこく質問しても、わたしにはさっぱり型のことがわからなかった。職人さんのすごさはわかるのに、根本的な仕組みが難しく感じたのだ。

もう波佐見に1年半住んで勉強してきたのに、全然、わからなかった!

インターネットで調べてみても、わからない。型屋さんを取材した記事でも、明らかに間違っているものもあったし、仕組みにはふれていないものもあった。わからないまま。

そこで、周りの人に質問しまくって、窯業技術センターへ学びに行くことで解決した。記事でも、まずは窯業技術センターの話を先に持ってきて構成した。こういうやり方は、波佐見に住んでいないと難しいと思う。

ただ、波佐見に住んでる。それがいまのわたしの武器なんじゃないだろうか。

というような話をした。

「なるほどですね〜」とお兄さん。
それから、ちょっと間をあけて、お兄さんが再び口を開いた。

「くりちゃんは、人との距離のとり方がすごくうまいですよね」
真面目なトーンでそう褒めてくれた。

「え? ほんとですか? やったー! いやあ、お兄さんに言ってもらえるとうれしいですねえ」
わたしは馬鹿みたいに素直によろこんだ。

もともと人見知りだし、合わない人とはめちゃくちゃ遠い距離を保つ自覚はあるので、しっかりうれしかった。お兄さんは実例も出して語ってくれて、そういう見方とあるんだなあと知る。

わたしもお兄さんだけの武器を伝えようと思った。思ったのだけど、なんだかいまは、ちゃんと伝わる気がしなかった。

いくら褒めても、「そんなことないですよ」と言われるような気がしたのだ。いまじゃないんだなと勝手にひとり納得して、ことばを胸に仕舞った。きっと「お礼としての褒めことば」じゃない未来のタイミングで、もっと受け取ってもらえるように、わたしは言える気がする。

武器を持つのにも、ふさわしいタイミングがあるのかもしれない。

お兄さん、ちゃんと武器、ありますよ。

彼が丁寧に仕事をしているときや、自身の子どもたちと一緒に過ごしているとき、わたしはいつも強くそう思ってる。もしかしたら商売として成功するための『武器』じゃないかもしれないけど、人間としていちばん大切な武器だ。

近いうちに、そんなことをまた話せたらいいな。

30minutes note No.978

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