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ゆっくりしゃべる人間だと気付かされたときのこと。

「くりたお前、すこしはしゃべるの速くなったなあ」と、社会人になったわたしにその人は笑った。「お前、すんごいゆっくりしゃべってたからなあ」とも。そうだったのか!

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こんにちは、こんばんは。くりたまきです。

自分では、ゆっくりしゃべっていたつもりはない。普通にしゃべっていたら、なんとまあ、ゆっくりだったのだ! そのときはショックだった。

その人とは、バイト関係で出会った。直接一緒に仕事をしたことはないくらい歳上の偉い人だった。なのになぜか、「あなたのまっすぐで純粋な目が気に入った」と言ってくれて、お酒を飲みに連れて行ってくれたりした。

そんなふうに大学生のころからわたしのことを見ていてくれて、たまに連絡したら「おお、元気だったか」と言ってくれて、いまも見守ってくれている。器のでかい人だ。多分、わたし以外にもたくさん、その人にお世話になってる人がいるんだろうなあ。

わたしが大学卒業後、仕事で数年大阪に住んでたころ、その人もたまたま会社で西日本全体をまとめる偉い人になっていて、社会人になってあたふたするわたしのことを大阪食いだおれツアーに連れ出してくれた。

そのとき言われたのが「くりたお前、すこしはしゃべるの速くなったなあ」だった。

「えっ? わたしそんなにゆっくりでした?」
「いまもゆっくりだけどなあ(笑)」

そのときは自覚が無かったからまず驚いた。その次に、うれしくなった。この人から見たら、そんなゆっくりしゃべるわたしはきっと頼りなかっただろう。ただでさえ幼く見えるわたしは危うくさえ思われていたかもしれない。それなのに、なぜかかわいがってくれる。一緒にビールを飲んで、わたしのキャリア相談にも付き合ってくれる。その信頼のような気持ちがうれしかったのだ。

ありがたいことだなあ、としみじみ思ってビールを飲んだ。

いまも自分の声やしゃべり方は好きではない。でも接客モードでテキパキとしゃべっているとき、なんだか殻をかぶっているような気がしてしまう。ニセ者感がある。だから、もうちょっと研究や改善が必要なんだろうと思いながら、ゆっくりそのまましゃべっている。

取材をするようになってからは、インタビューしている自分の声を文字起こしで聴かなきゃいけないのが、嫌だ。落ち込む。「もっとかしこまって、しゃべるか?」となんども思うけど、なんだか嘘が混じりそうで、躊躇ってしまう。

嘘がなくて、もうすこし聴き心地のよいしゃべり方がしたいなあ。

そうしたらまた、「くりたお前、ちゃんとしゃべるの速くなったなあ」とあの人に言ってもらいたい。もうずいぶん大人になったから、そのほかのことだって「よくなったなあ」と褒めてもらいたい。

また飲みに連れて行ってもらおう。

30minutes note No.961

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