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あなたがそっと、もたれてくれた日のこと。

わたしはずっと泣いてしまうので近づけないで、そっと見守るだけだった。それが、近づいてもたれてくれたときの幸福感と言ったら。

こんにちは、こんばんは。くりたまきです。

わたしは動物アレルギーを2歳くらいで発症した。我が家は愛犬を手放した。

犬が好きという気持ちはあったけれど、意思に反してからだは言うことを聞かない。

ふれると、粘膜がやられる。目が痒くて涙が止まらなくなるし、鼻水も止まらなくなる。呼吸するたびにヒューヒューしてしまう。

大人になって、ちょこっとさわるくらいなら平気になったけど、すぐに手を洗わないといけない。そんなこんなで、犬とお近づきになる機会がすくなかった。

都内に住んでたころ、たまに、犬のいるおうちに遊びに行くことがあった。そこのわんちゃんはかわいくって、まるでしゃべるみたいに瞳が雄弁な子だった。

まず玄関を開けると吠えられる。毎回すごく吠えられる。なので、わたしは急いでその方のおうちに上がって、とにかく座る。そうすると、わんちゃんは吠えるのをやめて近づいてきて、ちょっとだけわたしの手のひらを舐めると去っていく。そしてまた帰りも盛大に吠えられて終わる。

そんな付き合いをずっとしていた。かわいくて大好きで、できるなら撫でたいし抱きしめたい。膝の上に乗ってほしい。でも、あまりに近づくとわたしは粘膜をやられて泣いてしまう。近くをトテトテ歩いているわんちゃんを見守ってるのがせいぜいだった。

そんなおっかなびっくりで近づいてもこない人間を、犬側もべつに好きにはならない。

なのに。

あるとき、わんちゃんは気まぐれを起こしてくれた。

ソファに座るわたしの横にやってきて、自分の背中と脇腹をわたしの太ももにくっつけるように、もたれてきてくれたのだ。

このときの衝撃ったらない。トクトクと鼓動が伝わってきて、あたたかい。ぐでんと横になって、わたしのそばでリラックスして目を細めている、キュートなわんちゃん。

生きてる、ちいさな生きものが、わたしにすべてをあずけて、あたたかくて、寝転んでいる、という混乱するほどの幸福。

そんなことをきっかけにワンちゃんとの距離が縮まる、なんてことはなく、行くたびに律儀に吠えられている。あれから、たまに相手をしてくれることはあるけど、もたれてくれることはない。そして長崎県へ引っ越したいまは、都内のわんちゃんのいるおうちに遊びに行くことも難しい。

たぶんわたしは一生、犬を飼うことはできないだろう。泣いちゃうし。体質が拒否しちゃうから。

でも、あなたがそっと、もたれてくれた日のことを忘れない。

犬をはじめペットを飼う人みんながうらやましいし、ずっとペットとしあわせでいてほしい。YouTubeで犬の動画を眺めながら、そんなことを思った。



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