6年ぶりにドラムを録りました。
はじめに
久しぶりに製作の記事です。
私は地元新潟でThe WallClockS(ザ・ウォールクロックス)というバンドで活動しています。今年で16年目、細く長い活動を続けています。
そこでドラムコーラスとエンジニアリングをやっていまして、2016年頃からコロナ禍前までは全部の楽器の録音からマスタリングまでやっていました。
2020年から2023年の間はメンバー各々が個人で録音をして、私がミックスダウンとマスタリングをするという手段で楽曲制作をやっていました。リモート制作ってやつですね。
その間ドラムは打ち込みで私がやっていてました。デモ制作とyoutubeに上げるのが目的だったため、制作にスピード感の出るドラム音源を利用するほうが良いという私の判断でした。
去年の暮れ、仲の良いバンドがCDを作ったことがきっかけで、うちのメンバーも盤を刻みたいという話が出ました。
その中でリモート制作時の楽曲に関しては、ドラムを打ち込みから生ドラムに差し替えたいという意見が出まして、久々にいっちょやったるかといった感じで今回の録音に至っています。
さて本題に入りますが、この記事は覚え書きのようなものですので、本格的に学びたい場合は専門的な記事や動画にあたったほうが良いということは断っておきます。
スタジオ・準備した機材について
今回録音に使ったスタジオは、あぽろんイオン新潟西店に最近設置された「個人ドラムルーム」です。
本当は同じ店の「Lスタジオ」という部屋にdwのドラムセットが入っているので、それを利用したいと思っていましたが、個人予約するには当日予約しかなかったため、確実性を取って2日前から予約できる個人ドラムルームにしました。
こちらにはYAMAHAのステージカスタムとCanopusのR.F.M.の2つのドラムセットが入っています。おそらくレッスン利用を想定されているのだと思われます。私は音の良さそうな後者のセットを使うことに決めました。実際良かった。
次にスタジオに持ち込んだ機材です。
まずは楽器類。
シンバルは明確にこの音で録りたい、というイメージがありましたのですべて持ち込みです。また、練習スタジオのシンバルは(都会ならともかく地方では)運用上安価なものを置きがちですので、持ち込んだほうが良いかと思われます。
他にはスネアとペダル、当たり前ですけどスティックやチューニングキー。鍵ミュートは池袋編で詳細を書いています。スネアとペダルもシンバル同様、どういうコンディションになっているのかわからないことが多いので自分のものを手に入れたほうが良いですよ。
ハイハットクラッチも録音の際に買いました。これもよくいかれてたりします。ここまで読んでくれた方は薄々お気づきだと思われますが、ドラムは楽器の集合体なのでその分消耗部品も多いわけです。ちなみにシンバルも消耗品です(割れます)。
他にもドラムスローンもたまに壊れてたりします。意外と重要なものなので本当は自前が良いです。私は買うタイミングを延々と逃していますが……。
逆にこれぐらい用意しておけば現場でのトラブルは減らせると思います。というかきりがないですからね……シンバルスタンドもたまに(以下略)。
一応箇条書きしましょう。
必需品としては
・シンバル
・スネア
・ペダル
・スティック
・チューニングキー
トラブル対策に
・ハイハットクラッチ
・シンバルスタンド(シンバルホルダー)
・スローン
このあたりは色々と余裕と相談しましょう。
次に録音機材。
写真右手側から、当たり前と言われればそうですが、PC。MTRも一応持っていますが、利便性においてDAWに勝るものはないと思います。
上にあるHDDはプラグインの鍵が入ってるだけです。早くUSBメモリに移せよという話ではあります。
黒い袋にはマイクケーブルや電源コード、イヤモニやUSBケーブル等がまとめられています。写真ではのぺーっと広げられている電源コードや電源タップ等も袋に入れて運用してます。袋自体はただの百均のやつです。
マイクスタンドも持ち込みしています。無料で借りられるところもありますが、有料オプションや、本数が限られている所も多いので確認したほうが良いかと。
私は標準ブームスタンドを3本、キックを狙うためのショートブームスタンドを1本持っています。今回の録音では標準ブームスタンドをもう1本借りました。
iPadは自慢したいわけではなく、録音時のコントローラーとして利用しています。Studio Oneのアプリにリモートアプリがあるので便利です。
ガムテープ、養生テープ、ティッシュ、EVANSの銀色の箱はミュートに利用します。それぞれミュート加減が違うので、チューニングしながら決めていきます。
巻尺は意外と大事で、これでマイクと楽器間の距離を測ります。物理的な考えで決めることも多いです。
PCと録音信号との間を取り持つオーディオIFはTASCAMのものを導入しました。アナログで8チャンネル以上録れるものがこれしかないので。
オーディオIFの上に乗っているのはYAMAHA EAD10というドラムモジュールです。これ単体でも録音できたり、エフェクトを掛けることができます。私は全体をまとめて録るために用意しました。
モニタヘッドホンも一応用意しました。これはミックスでも活躍してます。
箇条書きにすると
必需品は
・PC(MTR)
・オーディオIF(MTRには不要)
・イヤモニ・モニタヘッドホン
・マイクケーブル
・電源タップ
・マイクスタンド - 標準ブーム、ショートブーム
・各種ミュート類
・巻尺
箇条書きにしなかったものは不要といえば不要です。
録音機材とは違いますが、大事なのがスタジオでPC等を置くスペース。机がないと機材を全部床に置くことになり、作業性が最悪になってしまいます。
これも気が利くスタジオなら置いてありますが、ない場合が多いかと思います。私はアウトドアグッズの折り畳めるテーブルを買いました、可搬性が尋常じゃない。
最後にマイク類。
私はAKGのGroove Packを使っています。4万ぐらいのやっすいドラム用マイクセットですが、素直な音が録れるので、スタジオでセルフレコーディングする程度であればこれで十分です。これ自体はもう取り扱いがありませんが、今はAKGでもう一本スネア・タム用のダイナミックマイクが追加されたセットが売っています。
もちろんほかメーカーもドラム用のマイクセットを売っているので、気に入ったものをつかいましょう。
ハイハットは別で録ろうと思ったのでこれにAKG P170を追加しています。
まさか、今回にあたって買い足したこのマイクが功を奏すとは……。
んで、これらをバッグに詰めるとこんな感じ。
ガチでただのビジネスバッグにPC類とケーブル詰めてます。普通に重いのによく使えるな。車移動の前に使っていたこのビジネスバッグ、まだ役に立つとは。
ちなみに軽に詰め込むとこんな感じ。
多分N-BOXならもっと楽に入ると思います。
スタジオでのセッティング~録音まで
やっとスタジオに着きました。荷物を全部運び出すのに3往復、家から出て帰るまで12往復はシンプルにきつい。とはいえ背に腹は代えられません。
汗だくの状態でクーラーをつけて早速録音の準備に取り掛かります。
セッティングをしながらチューニングをやっていきます。ちなみにスタジオにあったのはキックが20インチ、フロアタムが14インチ、タムが12・10インチとスタジオによくあるサイズより一回り小さいセットでした。
私は三点セット、ワンタムのセッティングが好きなので必要な太鼓以外は隅に追いやっていきます。スタジオにスネアスタンドが置いてあったのでお借りしてタムを乗せることに。
チューニングですが、楽曲のキーを基準に、詰まった感じがするようであればシェル自体が持っている音程に合わせていきます。サスティンや倍音を裏のヘッドやミュートで調整していきます。
太鼓類のセッティングが終わったらシンバルを並べていきます。
あまり気をつけることはないですが、間違ってマイクを叩かない位置を選べるとベストだと思います。
できればスネアとハイハットは高低差があったほうが良いと思います。お互いのマイクの干渉がないようにしたいので。もちろん演奏に支障が出ない程度に(私は元々高低差があったほうが好きです)。
次に録音機材とマイクをセッティングしていきます。
どちらが先でもいいですが、PC等録音機材をテーブルに並べていきます。ケーブルはどこのスタジオにもあるCANAREの10mのものを買いましたが、7mでも良かったかもしれない。ケーブル同士が絡まないように扱っていきましょう。片付けが大変なので……。
ドラム用のマイクセットにはスネアやタムのリムに引っ掛けることができるアタッチメントが付いていることが多いので便利です。
立てるスタンドなんて少ないほうが良いですからね。最近ではPearlからシンバルホルダーのような形のマイク用ホルダーが売り出されてるのでいい時代になりました。
スネアに関しては、スネアとの位置関係を調整したいのでスタンドを使っています。なるべくアタックを録りたいのでリムの真上ぐらいの位置に置いています。
シンバルを狙うトップはだいたいスネアとシンバルの距離と同じぐらいにしています。
数字でいうと45~50cmあたり。
私はあまり部屋鳴りをあまり録りたくないので極力シンバルの近くに置きますが、近すぎても位相や他の楽器との絡みが出てきてしまうので難しいところです。
ハイハットやキックは単体の音を狙って、だいたい10cmあたりを基準に調整していきました。
ここまで来たらPCを立ち上げ、入力音量の調整をしていきます。
今回シンバルにコンデンサマイクを使用しているのでファンタム電源を忘れずに。流石にみなさんそれぐらいは知っているとは思いますが……。
TASCAMのオーディオIFは4chごとにファンタム電源のオンオフができるので便利ですね、ダイナミックマイクに突っ込んでも特段問題はありませんが、気持ち的にありがたいです。
入力音量はDAWのピークメーターでだいたい-12dbFSぐらい入っていれば十分です。-18dbFS=0VUという考えもありますが、デジタル録音ならピークさえ叩かなければ大丈夫です。
ただドラマーはテンションが上がると音量も上がりがちなので、注意しましょう。
そして私はここで気づいたのです、ハイハットに立てたマイクが死んどると……。
諦めてトップマイクから拾うことにしました。本当はこの時点でマイク位置の再調整をすべきでしたが、この日は忘れていました……。
ここまででだいたい1時間半かかりました。まあ焦る必要はないと思います。いちばん大事な場所なので、じっくり時間をかけましょう。
気を取り直して、あとはDAWを録音状態にしてドラムを叩くだけです。ここでiPadに立ち上げたリモートアプリが役に立ちます。
ちなみにクリックはDAWのものではなく、カウベル等聞きやすい音色を新たに打ち込んでいます。音量調整がしやすいので。
できれば、ドラム録音用のプロジェクトを作っておきましょう。私はミックスダウンのプロジェクトから楽器ごとにまとめたものを書き出しておいて、それをバスで調整できるようにしています。
一曲目の録音は楽器単体の音や、シンバルだけの演奏などをしましたが、ミックスのとき思ったより使い勝手が良くなかったので、後日行った二曲目の録音のときはすべて一曲丸々録りました。
パンチインでも良かったんですけど、緊張感的には変わらないなと思ったのでそうしました。これは人好き好きのやり方でいいと思います。
録音はだいたい1時間こえるぐらい。録ったものを確認しながらなので実際は30~45分ぐらいでしょうか。根気よくやっていくしかありません、録音に近道はありませんから。
録音をやれるだけやったら退散しましょう。片付けるだけでもかなり時間がかかります。ちゃんとオーディオIFの入力つまみは左に回しきりましょうね、故障の原因になりますから。大体45分ぐらい掛けてスタジオを元の状態に。4時間のスタジオ滞在でした。
録音する頃にはすっかり寒いぐらいになったスタジオから出て、またもや汗だくになりながら車に機材を戻して、腹が減ったなと思いつつもまっさきに家に帰ります。冬なら良いですが、夏の車内に機材(特にPCなど)を放置したくないですからね……。
音作りの話
ここからはミックスダウンの覚え書きです。
あとから聞き直すと、まあ完璧にクリックに合った録音じゃないことがほとんどです。アマチュアなんてそんなものです、プロは毎日演奏しているわけですから……。
でも、ドラムをグリッドに合わす必要は(音符レベルでずれていれば別ですが)ありません。というか、他の収音したマイクの位相との関係をあわせた上で、グリッドに合わせたとしても気持ちの悪いテイクが出来上がるだけです。他のメンバーには悪いですが、他の楽器のタイミングを合わせましょう。
関係ない話ですが、東京事変の群青日和はクリック無しで録音しているそうです。狂気か。
あと、YAMAHA EAD10ですが、これは単体で使ったほうが良いかもしれません。ちょっとミックスダウンでの扱いは難しかった。バンドセッションの録音も予定されているので、そこで使おうかと思っています。
そして、死んでいたハイハットのトラックも使えないのでミックスダウンは6chでやっていきます。
タムとフロアに関しては、鳴っているところ以外は切ってしまいます。響きはあとでリバーブで入れても不自然にはなりませんから大丈夫です。
それからパンニング。タムとフロアは好きなところにおいて大丈夫です。トップはフェーズメーターを入れて確認しましょう。意外と左右全振りじゃなかったりします。
キックですが、今回ヘッドに穴が空いていなかったのでやはり胴鳴りしか収音できず、ミックス作業のときに打ち込み音源を立ち上げてトリガーし、アタック音を作っています。よくある手法ではあります。胴鳴りの方の音も使いました。
私の場合は、生録のドラムには楽器ごとにハイパス・ローパスを入れてしまいます。
シンバル類はハイパスをかなり強めに入れます。ゴワゴワした成分があると抜けが悪いと感じたり、太鼓類との干渉が問題となるので切っちゃいます。
逆に太鼓類にローパスを入れることも多いです。真逆の考えですね。ただ、アタックの部分まで切っちゃうと、特にスネアは引っ込んでしまうのでさじ加減が大事です。
EQは、500HzあたりをゆるやかなQで下げることが多いです。ポコポコとした部分なのでちょっとドラムの音としてはへんてこかなって思います。ただ完全に殺すことはやめましょう。かえって不自然です(とはいえドラムの録音・ミックスなんてドラマーからしたら全て不自然なんですけどね)。
他の部分、音作りとしてのEQは好きにやりましょう。ルールはないです。私はAPIのカラッとした音が好きなので良くAPI550Bを使ったりします。500Hzのカット以外は楽器の良く鳴っているところを強調するような使い方をしています。
次にコンプ。生ドラムの音量差は打ち込みの比ではないので、コンプはかなり並べます。
とはいえアナログコンプは定番の1176ぐらいしか使わないですね。音作りとしてのアタック感を強調するために使います。使うといってもメーターで1db超えるか超えないかぐらいのゲインリダクションです。おまじないに近い。前段の入力は-12dbFSあたりで入れています。出音で確認すれば良いんじゃないでしょうか。
デジタルコンプをとにかく多用しています。MV2は小さい音量を持ち上げる、いわゆるデコンプがスライダー1つでできるので重宝しています。特に太鼓類に使うと、胴鳴りが立ち上がっていくので好きです。
他にはRVox、Rcompをよく使います。RVoxは一応ボーカル用として売り出されてはいますが、ゲートが扱いやすくて利用しています。Rcompは出音が自然なわりに、コンプの効きがとても良くて素晴らしいエフェクトだと思います。
逆に言うと音作りで使うエフェクトはそれぐらいしかないですかね。あとはメンバーからの要望があれば更に追い込んでいきますが、それは全体のミックスのときにやりますので今回は割愛します。
おわりに
ざっくばらんと誰が得するのかわからない記事を書いていきました。
一応言語化しておきたいと思ったのでほぼ私のための記事です。最初の方にも書きましたが素人覚えの記事ですのであら捜しはやめてね❤
とはいえ、この記事を参考の一つとしてもそれなりには録れるものにはなっています。みなさま楽しい生録ライフを。
BGM:
スーツ・旅行さんの佐渡ヶ島行く動画
刄田綴色さんのチャンネル
Love Flutter / パソコン音楽クラブ
教育 / 東京事変
追伸:暇だったらバンドの曲聞いてね
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